束の間のひと時
第一部を読んでいただきありがとうございました。
ここからは弟二部がはじまります。読んでいない方は、1部から読んでね。
弟6章も元気いっぱいで、お送りさせていただきます。!
本編はぜひとも、私の脳内物語をお楽しみください!
〜〜〜〜とある王城の隠し地下牢〜〜〜〜
地下へ続く薄暗い廊下を降りると、いくつか牢屋が配置されている。
だが、地下牢はとても綺麗に整備されていた。
その中の一室に、金髪で肩ほどの髪をした少女が、足枷を付け壁に背中を密着させ、
丸くなるように脚を抱えて座っていた。
「私のせいで・・・皆・・・死んでしまう」
少女は泣いていたのか、目が真っ赤で、視点が定まっていないかのようだった。
細々とした声が誰もいない地下牢に響き渡った。
〜〜〜〜〜バルタシア王国、ラミレシアの一室〜〜〜〜〜
「ラミレシア様、祖国に帰れる日までもうじきですね」
ルルカは、私の洋服をたたみながら、笑顔で声をかける。
「うん。私がいなくて、母は寂しがってるかもしれない」
私は笑顔でルルカに応える反面、不安もあった。
(母はあの時、自分の寿命を告げていた。
それが事実ならば、その時私は・・・・)
笑顔をしていたはずだったが、不安が顔ににじみ出ていたらしく、
ミクリーは心配そうな表情で私の脚にしがみついてきた。
抱くように持ち上げると、笑顔で目の前のミクリーに、
小さな声で「心配かけてごめんね」と告げた。
「ねえ、ルルカ。今日の服どう?似合ってる?」
「ええ。とっても似合ってますよ。抱きしめたくなるくらいに」
ルルカが真面目な顔で言うので、少し照れてしまった。
「洋服も全部借り物だし、似合わないとおもうんだけどな」
「そんな事ありません!」
ルルカはいきなり大声で言うと、照れたように顔を背けた。
私は苦笑いするしかなかった。
「ねえ、ルルカ。そういえば赤い結晶見なかった?
私がベットで寝てる間にどっか行っちゃったみたいなの」
「見てないですね。あ!、もしかすると、この前の事件の時に、
レネリス様の部屋に落とした可能性はないですか?」
私も思い出したように、納得した。
「レネリス様いるかな?・・・無断で部屋にははいれないし」
「今は行かない方がいいと思いますよ?
確か今日はサーラン様が来てらっしゃったとおもいます」
「サーラン様?私初めて聞く名前だけど・・・誰なの?」
「レネリス様の奥様です。」
私はしばらく思考が停止した。
「え?あ・・・え!?」
今までレネリス様としてきたことを、思い出すと、動揺が隠せなかった。
せわしなく部屋を歩き出した私に、ルルカは、違う意味で動揺してしまった。
「ラミレシア様ど・・・どうされたんですか?!」
私は言おうか迷った挙句、事故でしてしまったキスの件を話した。
「え、キ・・・キスですか?!」
「声が大きいよ!私だってしたくてしたわけじゃないよ?」
身振り手振りで誤解をといた。
だが、ルルカはポツリ私に聞こえない声で「いいな」と言ったような気がした。
〜〜〜〜レネリス様の部屋〜〜〜〜〜
レネリスは、椅子でくつろぐ長髪で黒い髪の女性と向き合って話をしていた。
「サーラン、その話はもうわかっている。
だが、今はそんな場合ではない」
「お言葉ですがレネリス様、先日の件もあります。
もし万が一レネリス様がお亡くなりになった時に、子供がいなければ、
この国に不幸が巻き起こるのは必然。
私の心は既に準備をできています!」
レネリスは肘をテーブルにつき、悩んでいた。
サーランの言うことはもっともで、
強い意志はレネリスに強く伝わってくる。
二人の間で沈黙が続いた。
「わかった。子供は作る。だが、もう少しまってくれ。」
サーランは考え込んだ後、渋々了承した。
「わかりました。これも国民の為です。
それと、隣接する部屋に女性を連れ込んでるって噂になっていますが、
どなたなんですか?」
言葉は丁寧だが、怒気が含まれているのは明白だった。
「あれは・・・俺専属の治癒士だ。
だから、常に俺の側にいてもらわねばならん。
俺が死んだら、お前も困るだろ?」
サーランは疑いの目で、レネリスを見たが、
「まあいいわ」とばかりに、お茶をすすった。
「私はこれにて失礼いたします。何かあればいつでも呼んでくださいませ」
そう言って立ち上がると、お辞儀をして部屋をでていった。
レネリスは面倒事が立ち去ってほっとしたような表情をした。
ほっとしたのも束の間、ドアをノックする音が響く。
「レネリス様いらっしゃいますか?」
「いるぞ。入れ。」
スフォンは入ってくると一礼し、レネリス様の机の前に立った。
「一体何があったんですか?サーラン様が毎回の事ですけど、
怒ってましたよ。」
「いつもの事だ。あいつは自分の家の為に必死になってるだけだ。
そんな事より、報告があるんだろ?」
スフォンは頭を切り替えるように、手帳を捲った。
「セリアヌダルク王国で不振な事柄が多数目撃されています。」
そういうと、書類を手渡した。
レネリスが書類に目を通すと険しい顔つきになった。
「この時期に会談は、非常に危険を伴うと思われます」
スフォンの必死さは目をみれば伝わってきた。
「この件については、少し時間を見る。次の報告を続けろ」
渋々次の報告に移るスフォン。
「アーザブルク王国侵攻の件ですが、サニーキア帝国とスーダレス帝国に、
侵攻の予兆が見られました。詳細はこの書類に。」
レネリスは書類に目を通すが、予定通りらしく微動だにしなかった。
「シーリアスの援軍に、12番隊と11番隊を向かわせろ。
グニスは今度の会談につれていく。それまで休暇でも与えとけ」
スフォンは返事をすると、真面目に手帳に書き込んでいる。
書き終わると、周りを気にしつつ、真剣な眼差しで一枚のメモをレネリスに手渡した。
それを受け取ると、レネリスは舌打ちした。
「ラミレシアの警護に、サクンをつけろ。ミクリーは強力だが、頭が弱い」
スフォンは小さく返事をした。
仕事が終わったかのように、スフォンが顔を緩ませると、入り口のドアを見た。
「なんかドアの向こう側に、ラミレシア様の気配がありますね。
私はこれにて退散させていただきます。」
「変な気を廻すなよ。あれはなんでもない」
レネリスの表情は窓の方を向いていてわからなかったが、
声が少し動揺していた。
「ではこれにして失礼させていただきます。」
そういうとスフォンは一礼してドアから出て行った。
〜〜〜〜ラミレシアの部屋〜〜〜〜〜
ルルカはメイド長に呼ばれ、部屋には私一人だった。
「う〜ん、レネリス様の部屋へ探しに行ってもいいのかな・・・」
一人悩んでいると、ミクリーは胸ポケットから、私が作ってあげた傘を、
レネリス様の部屋へいこうと言っているかのように、パタパタと振っていた。
ミクリーに背中を押されるがままに行くことに決めると、部屋をでた。
(王子様の部屋へ入るのって緊張するな・・・2回目なんだけど・・・
あの時は、周りなんか見てる暇なかったし。)
レネリス様の部屋の前に着くと、意を決したようにノックをした。
「ラミレシアです。探し物があって、少し探させていただけませんでしょうか?」
「はいれ」とだけ返事がきた。
ゆっくりとドアを開け、中に入ると、レネリス様は書類の山の向こうで、
座って仕事をしていた。
レネリス様の表情は書類で見えなかったが、丁寧にお辞儀をし、理由を話すと許可してくれた。
仕事の邪魔にならないように、家具などの下を探す。
「あれから体の具合はどうだ?」
レネリス様が急に話かけてきて驚いた。
「もう平気です。心配してくださってありがとうございます。」
私は姿勢を正し、お辞儀をした。
「先日は・・・でしゃばった真似をして・・す・・・すみませんでした。
なんか・・・その場の雰囲気で・・・」
「か・・・かまわない」
私は思いっきり頭を下げて謝ったのに対し、レネリス様は顔を背けた。
「先日言ったお前の言葉は・・・本心か?」
(先日??・・・あ!え?!なんかまずかったのかな・・・)
緊張と恐怖がまじった表情が私から滲み出ていた。
「ほ・・・・本心です」
その言葉を聞いた途端、レネリス様は筆を止め、私のほうにやってくると、
いきなり私を抱きしめた。
「え、え!?レネリス様!?」
「お前は本当に俺が恐くないんだな」
私は頭の中が混乱していた。
それとは反対に、レネリス様の表情は変わらなかったが、声は少しうれしそうだった。
「あの、う・・・動けません。レネリス様」
「あ・・ああ。すまん」
そういうと、少し残念そうに両腕を解いて離してくれた。
(よかった。ちょっとびっくりした・・・・)
私はレネリス様にちゃんと向き直ると口を開いた。
「私は田舎出の娘で、礼儀とか作法とかよくわからないです。
だから、こんな事を此処で言っていいのかわかりません。
ですが、ちゃんと言わせてください。
私は、レネリス様を恐がりません。むしろ心優しい人だって、
気付きました。話し相手になってあげたいとか、
そんな偽善の言葉を向けるつもりはありませんが、
よかったら、いつでも話かけてください。」
レネリス様は私の言葉を真剣に聞いてくれた。
「じゃあ、俺の事はレネリスと呼んでくれ。
お前の事は、ラミレシアと呼んでるんだ。
それでいいだろ?」
「それは・・・だめですよ。立場が違います。」
「そんなの関係ないだろ。
「対等じゃなければ相談しにくいだろ?」
レネリス様は譲る気はないという顔で私を見る。
私も言葉に詰まってしまう。
確かに上下関係があると、相談はしにくくなるのも事実なのだ。
私は唸ってしまう。
「それなら、二人の時だけでいい。それでいいだろ?」
私は考えた末、それで合意した。
「ところで、探し物は見つかったのか?」
レネリス様は机に戻ると、椅子に座って話しかけてきた。
「うーん、見当たらないです」
私は再度周りを探してみたが見つからなかった。
「これか?」
レネリス様の手のひらには、私の求める物があった。
「それです。それ。」
私はすぐに駆け寄ると、手渡してもらった。
レネリス様は、私の手に戻した赤い結晶をじっとみていた。
「それが何なのかわかってるのか?」
「これは母から貰ったお守りです。」
「ちがう、その結晶の意味だ」
私は赤い結晶をじっとみたが、特に変わった所はなかった。
「その結晶はな、黒炎の灯火といわれ、最古の石のうちの1個だ。」
話を聞いてもよくわからなかったが、凄そうというのだけはわかった。
「そうなんだ・・・」
私は手の上にある石をじっと見た。
「まあいい。大事にもってることだ」
レネリス様は私の顔を見て、また少し笑った。
(よかった。笑ってくれるようになった)
「ところで・・・ある場所知ってるなら教えてくださいよ」
私は少し怒って見せると、レネリス様は、私の頭に手を置いて、
「少し話す時間がほしかった」と笑って答えた。
〜〜〜〜〜ラミレシアの部屋〜〜〜〜〜〜
私が部屋に戻ると、ミーナ様がルルカを慰めていた。
「え?え!?一体何があったの??」
ルルカは泣きながら私に抱きついてきた。
「ラミレシア様がどこに行ったかわからなくて・・・・心配で・・・」
「ちゃんと此処にいるよ。」
私はルルカの頭を撫でてあげた。
(普段は頼りになるメイドさんなのに、少し泣き虫なのかな)
ミーナ様が手にボロボロの人形を持ってこっちを見ていた。
「ミクリーいた!」
ミクリーは肩の上で眠っていたのだが、大きな声にびっくりして、
飛び上がり、周りを見回していた。
そしてミーナ様を見つけると、私の胸ポケットに潜り込んだ。
「ラミレシア、ミクリー貸して。一緒に遊ぶの。」
ミーナ様は私の顔をみて両手を差し出した。
「ミーナ様、ミクリーは少し具合悪いみたいなの。優しくしてあげてくれる?」
私はミクリーの気持ちを汲んで、最大限の努力をした。
ミーナ様がうなずくと、私はゆっくりとポケットで震えるミクリーを取り出した。
そして手のひらに乗せて、頭を撫でると気持ちよさそうに、横になり転がった。
「ミーナ様も撫でてみて。喜ぶよ」
笑顔で言うと、ミーナ様も笑顔で応えてくれた。
私とミーナ様でミクリーを挟む格好でベットに腰を落ち着かせると、
ルルカも一緒に笑った。
「そういえばミーナ様は私に何か用だった?それともミクリーを探してたのかな?」
私は改まって聞くと、ミーナ様はミクリーを撫でながら顔を上げた。
「今日の夜ね、城下でお祭りがあるの。そのお誘いにきたの。」
「お祭りですか。戦争中なのにですか?」
「なんかよくわからないけど、お祭りすると、皆元気になるみたいだよ。
私も楽しみなんだから!」
そういうと、ミーナ様は撫でていたミクリーを抱きしめ、喜びを露にした。
ミクリーは苦しそうに、顔を歪めている。
私が難しい顔をしていると、ルルカがミーナ様に続いた。
「セリアヌダルク王国との国境封鎖は解除され、お祭りの為に、
国民の皆さんが戻ってきたみたいなのです。
国は国民がいなくては始まりませんから。
それに、私の妹もお祭りに来るかもしれません。」
ルルカはそういうと、とっても楽しそうだ。
「じゃあ、皆でいこうか」
私が笑顔でそういうと、ルルカとミーナ様は一際輝いた表情をした。
(皆素直に行きたいって言えばいいのに・・・私も楽しみだけど)
話が盛り上がっていた中、ミクリーだけは青い顔をして、悶え苦しんでいた。
6章よんでいただき!ありがとうございます!
先はまだまだ続きます!私の手もまだまだ止まりません!
どんどん公開していきますよ!
今後も応援よろしくおねがいします^^ペコリ