動き出す思惑と迷走する思い
4章を無事にアップできましたのは、応援してくださった皆さんのおかげです。
私の脳内物語をとくとごらんください。では
少女の物語をお楽しみください
〜〜〜バルタシア王国廊下〜〜〜
「す・・・すごい・・・お城の廊下ってやっぱり長いのね」
私は初めて、部屋から出ることができ、改めてお城の大きさにびっくりした。
珍しいとばかりに周りを見回していると、向かいのドアが開き、
出てきた人をみてドキリとしてしまった。
ルルカはすぐにその方を確認するとお辞儀をした。
私も慌ててお辞儀をした。
レネリスは私達をちらりと見た後、すぐに立ち去った。
「この部屋ってレネリス様の部屋なの?」
「ええ。そうですよ」
「聞いた話では、レネリス様の向かいの部屋にラミレシア様の部屋を提案
なさったのはレネリス様と聞いております」
私はそれを聞いて、事故だったのだが、唇を重ねてしまったことを思い出して、
赤面してしまった。
「ラミレシア様こちらです」
ルルカの声で我に返った私は案内に素直について行った。
「着きました。ラミレシア様」
周りを見ながら歩いてた私は、ルルカの声で急に前をみたが、
ルルカの背中に顔をぶつけてしまった
「あうぅ・・・」
鼻を押さえながら涙目で大きなドアを見た。
「す・・すごい・・・」
そこには煌びやかで、五人でも同時にはいれそうな扉が目の前にあった。
ルルカが門兵と話をすると、門兵が私を見るとお辞儀をしてドアを開けてくれた。
ルルカの後ろについていくように中に入ると、
ゲニム陛下が椅子に座って待っていた。
私達の訪問に気づくと、椅子から立ち上がりこっちへくるように合図した。
ルルカは控えめに後ろへ下がり、ゲニム陛下にお辞儀をすると、
「扉の外でお待ちしております」と言うと私にお辞儀をし、歩いて出て行った。
いつもと違う洋服だったので、緊張とぎこちなさでたびたび転びそうになってしまった。
ゲニム陛下は私に歩み寄り手をとった。
「来てくれてありがとう。」
ゲニム陛下は笑顔で私を迎えてくれた。
「お招きありがとうございます。」
頭にミクリーが乗ってたこをを忘れてお辞儀をしてしまったので、
ミクリーは地面にコロコロと転がってしまった。
ミクリーをすぐに胸ポケットに入れると足早にゲニム陛下に案内された椅子へ腰掛けた。
「調子はどう?もう気分はよくなった?」
ゲニム陛下は優しく声をかけてくれた。
「お気遣いありがとうございます」
待っていたかのように、使用人が料理を運んできた。
ゲニム陛下は「どんどん食べて」と促すと、ゲニム陛下もワインに口をつけた。
私は御腹も空いていたので、どんどん料理が御腹にはいっていった。
「すごくおいしいです。こんなおいしいもの初めて食べました」
ミクリーも食べたそうにポケットから顔を出していたので、
料理を口に運ぶと、おいしさのあまり涙を流していた。
ふと気付くと、料理は私しか食べていなかった。
「ゲニム陛下は食べないんですか?」
「僕は毎日食べているからね。それに、今日は君の食べてる姿を見てるだけで
御腹が膨れてしまったよ。」
私は恥ずかしくなって食べるスピードを緩めた。
ゲニム陛下は私に、故郷の事をきいてきたので、母の事や、母は病気もちであること、、
フリノア村ではぐれてしまった母が心配である話をしていた。
ゲニム陛下は私の話を聞いてくれていたが、どこか無関心にうなずいているようにも見えた。
数刻ほど経って、胸元が妙に湿っている事にきづいて
胸元を見るとミクリーはヨダレを垂らしていつの間にか眠っていた。
私にも眠気が伝染してきたらしく、知らず知らずに欠伸をしてしまった。
「ご・・・ごめんなさい」
私はすぐにゲニム陛下に謝ると、「気にしてないよ」と
返してくれた。
だが、そこからさらに激しい眠気に襲われ、
私はテーブルに突っ伏して寝てしまった。
ゲニムはラミレシアがよく眠っていることを確かめると、
数名の人を呼び、自分の部屋へと運ぶように指示をした。
〜〜〜〜〜ゲニム陛下の寝室〜〜〜〜〜
ゲニムは、天蓋付きのベットで横たわるラミレシアを見て、
この日を待ち望んでいたかのような笑いをこぼした。
「この娘との子なら、もしかすると天使が産まれるかもしれん」
そういうとラミレシアの横に腰を降ろし手をかけようとした。
その時、寝室入り口から誰かが入ってくる気配がした。
「誰だ!誰も入れるなと指示をだしたはずだぞ!」
「まさか、俺の妹だけに限らず、ラミレシアにも手をかけようとはね。
落ちるとこまで落ちたって奴ですか?ゲニム陛下?」
そこから現れたのはゲニムを睨むレネリスだった。
「レネリス・・・なぜここに・・・」
ゲニムは驚きと苛立ちでレネリスから目を離すことができなかった。
「ゲニム陛下。この現場を見た俺に言わせたいのか?
天使のかけらの為、己の立場の為なら、少女誘拐も厭わないってか?
ゲニムはチラチラと入り口をみていた。
「無駄だよ。誰も来やしない。」
レネリスは冷静に答えた。
「レネリス・・・私の子供が生まれ天使の血を引く者だった場合。
お前も救われる可能性があるんだぞ」
「なんで俺がこんな下卑た事をして生まれた子に救われなきゃいかん?
こっちから願い下げだ」
レネリスは言葉を吐き棄てた。
「それだけじゃない。世界を救うカギとなる子が産まれるかもしれんのだぞ!
バルタシア王国の為!」
「それもお断りだ。お前の子供に何も期待していないし、天使なんてものはいない」
ゲニムは声が震えて反論するが、レネリスは冷静に返していた。
「言っておくが、この現場を抑えられて、今後王政に支障をきたすのはわかるな?
今日の事は黙っておいてもいい。だが、今後彼女に手を出してみろ。殺すぞ?
それと、俺の妹も解放しろ。でなければ、お前の未来は無いかもしれんな」
レネリスの言葉が発せられる度に、この場は冷め切っていた。
ゲニスは怒りに狂った顔が段々青ざめていった。
それとは反対に、レネリスは淡々と、かつ冷酷な言葉をつむぎだしていた。
「返事がないのは了承したと受け取るぞ」
そういうと、レネリスはラミレシアをベットから抱きかかえ、
部屋から出るため歩き出した。
その背中にゲニスは震えながら最後の言葉をふりしぼった
「お前は近いうちに悪魔に食われる!知ってるぞ!」
ゲニスの弱弱しい言葉が、レネリスの背中にあたって砕けた。
部屋をでるとレネリスに抱きかかえられたラミレシアを見てルルカは涙目になっていた。
「ラミレシア様・・・ごめんなさい・・・」
ルルカは我慢していたのか、ラミレシアの無事の姿をみて涙が溢れた。
「お前が悪いわけじゃない。俺のせいだ。気にするな」
二人はラミレシアの部屋へ、ラミレシアを抱えたレネリスとルルカは歩きだした。
〜〜〜〜〜それから数刻後レネリスの部屋〜〜〜〜〜〜
レネリスはスフォンと向き合っていた。
「ミーナの健康状態はどうなってる?」
「いたって健康です。特に何かされた形跡はありません」
レネリスは「そうか」と小さく返事をした。
「ラミレシア様がいなければ、きっとミーナ様は間に合わなかったでしょうね」
レネリスは雨が降る外をじっと見つめていた。
「ジェニスとの会談までラミレシアは今まで通り、予定変更はなしだ。
ミーナの部屋は護衛もかねて、お前の部屋の隣にしろ。」
「わかりました。」
「ゲニスの言うとおり、俺の命は長くない。その時は・・・・
わかってるな?」
スフォンの返事は降りしきる雨のせいなのか酷く小さく聞こえた。
〜〜〜ラミレシアに与えられた部屋〜〜〜〜
私は日が昇る朝日で目が覚めた。
胸ポケットには未だに夢の中にいるミクリーがもぞもぞと動いていた。
頭をなでると気持ちよさそうにまたもぞもぞと動いた。
部屋の片隅には、床で座って眠っているルルカがいた。
私はゆっくり起き上がり、ルルカに毛布をかけた。
「あ・・・昨日御風呂はいってないような・・・それに記憶も曖昧・・、
いつの間に寝ちゃったんだろう。」
御風呂にしばらく入っていなくて、お風呂に入りたい気持ちに囚われ、
ルルカに案内してもらおうとおもったが、
あんまり気持ちよさそうに眠っていたので、起こすのをやめた。
「よーし!探検もかねて、御風呂探しにいこう!」
私は、テーブルの上にルルカが持ってきてくれたであろう着替えをもつと、
眠気眼のミクリーを胸ポケットに入れて部屋をでた。
部屋をでると、レネリス様の部屋の前に見知らぬ青年が立っていた。
私はすぐに挨拶すると相手もそれにきづいて、振り返ってくれた。
「おはようございます。ラミレシア様」
青年は目が緑色をしていて、元気溢れる青年という感じだった。
彼は恥ずかしそうに私を見ていたが、レネリス様の部屋の中から
レネリス様の声が聞こえると、ドアの方へ踵を返し、敬礼していた。
ドアからレネリス様が出てくると、その後ろに9歳頃のかわいい少女が
レネリス様の足に抱きついていた。
「サクン、この子が俺の妹ミーナ=バルタシアだ。よろしくたのむぞ。
俺の妹だ。かわいくても手を出すなよ。」
サクンは緊張した面持ちで敬礼すると、中々レネリス様から離れないミーナ様の手を取った。
レネリスは私に気付くなり、怖い顔をこちらに向けた。
私はすぐにお辞儀と挨拶をした。
「サクンついでにそこの汚いガキも連れて行ってやれ」
私は辺りを見回したが、誰もいなくて、私の事を言っているのだと理解するのに少しかかった。
(なんなのよ!ガキ、ガキ、って!なんか一々つっかかってくるな〜も〜。
しかも汚いってなによ!)
私は心のうちで悪態をつきつつも、苦笑いをつくっていた。
レネリス様はそういうと、すぐに部屋の中へ戻っていって、姿を消した。
サクンと呼ばれた青年は、ミーナ様の手を取ったまま、私のほうへ向き直り自己紹介をした。
「私はバルタシア王国3番隊隊員のサクン=コドワーと申します。よろしくお願いいたします」
そう言うと丁寧にお辞儀をした。
「私はラミレシア=ガーネットです。お世話になります」
私はサクン様に挨拶すると、目線を少女に移した。
「この子は・・・」
「このお方はレネリス様の妹でミーナ様です」
私は膝をつき、笑顔で挨拶をした。
「私はラミレシア=ガーネットと申します。お名前を拝借してもよろしいでしょうか?」
ミーナ様は恥ずかしそうに、もじもじしながら小さな声で応えた。
「ミーナです・・・」
(か・・・かわいすぎる・・・・)
私は素直にこんな妹がほしいと思ってしまった。
サクン様に視線を戻し、昨日お風呂に行けなかった事を説明すると、
私にお風呂の場所を案内しますと申し出てくれた。
「ありがとうございます。サクン様」
サクン様は恥ずかしそうに視線を逸らすと、ミーナ様の手をちゃんと握って歩き出し、
私はその後ろをついていった。
(それにしても、目が怖いレネリス様の妹とは思えない程かわいい・・・世の中間違ってる・・・)
私は世間の不条理に打ちのめされていた。
〜〜〜〜〜〜バルタシア城のとある風呂場〜〜〜〜〜〜
「ここが女性王族のお風呂場入り口です。ここで私は待っておりますので、
ラミレシア様、ミーナ様をよろしくおねがい致します。」
(え!?私王族じゃないんですけど!?)
「もちろんラミレシア様はこのお風呂場に入れる許可はでておりますので」
サクン様は笑顔で私に教えてくれた。
(よろしくっていわれても・・・・)
私は周りを改めて見回した後、入り口からして大きいお風呂場に身がすくんでしまっていた。
ミーナ様が私のほうをじっと不思議そうに見ていた。
「こっちだよ」
私は急にミーナ様に手を引かれ、その勢いでお風呂場にはいってしまった。
(わかってはいたけど・・・大きい、それにキレイすぎる・・・)
私はどこから上がっていいのかわからず、心臓はドキドキと打っていた。
「ラミレシアこっちこっち」
ミーナ様がいつの間にか脱衣所で洋服を脱ぎながら私を呼んでいた。
「は・・はい!」
私は恐る恐るミーナ様の側に行き急いで洋服を脱いだ。
洋服を脱いでいると、胸ポケットからミクリーが顔を出し、
身振り手振りで私の頭に乗りたい事をアピールしていた。
「ミクリーの場所はここでいいかな」
ミクリーは満足したように頭の上で腕を組んでいた。
ミーナ様は妖精が珍しいのかじっとミクリーをみていたが、
寒さにまけて、私の手を引くと、バタバタと私達は浴槽に向かっていった。
「ラミレシアはここ初めて?」
「はい。3日前にここに着たばかりで・・・色々あってお風呂も今日が初めてなのです」
「じゃあ私が案内してあげる」
ミーナ様は笑顔で私の手を取り、歩き出した。
(えーっとここは夢!?広すぎて・・周りがみえないのですが・・・)
私はもう言葉もでない有様だった。
ミーナ様はお風呂を色々説明してくれたが、場違いな気がして頭には何も入っていなかった。
ミーナ様と私は体を洗った後、二人で浴槽に浸かっていると、ミクリーをじっと見ていた。
「その子な〜に?」
「ん?この子?この子はミクリーっていうの。きづいたら、ずっと私にくっついているの」
ミーナ様はずーっとミクリーを見ていた。
私はミクリーを手の上に乗せて、ミーナ様の前に出してみた。
ミクリーもミーナ様をじっと見た。
「ラミレシア。この子ほしい」
私はその返答には言葉を詰まらせた。
困った顔をしていると、ミーナ様はいつの間にか
泣きそうな表情をしていたので、とりあえずミクリーをミーナ様の頭の上に置いた。
ミーナ様は頭にのったミクリーを撫でた。
そしてミクリーも気持ちよさそうな表情をした
(しばらくはこのままでいっか。)
私は楽しそうにミクリーと遊ぶミーナ様を横で眺めていた。
ふと気づくと、ミーナ様の背中に白い痣を見つけた。
気になって触ろうとすると、妙に自分の胸が熱くなり、
呼吸が苦しくなった。
(胸が焼けそう・・・・)
私はそのまま前かがみになり、お風呂場で意識を失った。
〜〜〜〜〜ラミレシアの一室〜〜〜〜〜
外の雨の音で、目を開けると、いつものベットで横になっていた。
胸元を見ると、母からもらった赤い水晶がベットの横脇に置いてあった。
それを見つけると、すぐに腰のポケットにしまった。
ルルカは私が起きたことに気づくと、私の顔を覗くなり、私の表情を確認していた。
「ラミレシア様・・・よかった・・・ご無事で・・・。
昨晩の件もあったので、心配で・・・」
「昨晩?」
私は何かあったかなーと思い返してみたが心当たりはなかった。
「赤い石誰が見つけてくれたんだろう・・・ルルカ?」
「はい。先日お洋服を洗ったときに見つけたんです。早くお渡ししないといけないと思っていたのですが、
渡す機会が遅くなって申し訳ありません」
「ううん。見つけてくれてありがとう。これお母さんから預かった物なの」
私は笑顔でお礼を言うと、ルルカも笑顔を返してくれた。
「ねえ、ルルカ。私最近変なの。記憶が飛び飛びで・・・何か知らない?」
ルルカは質問されると、笑顔が消え、真剣な眼差しで私を見て言葉を選ぶように語りだした。
「えっと・・・昨晩ラミレシア様は陛下とお食事をなさったことは覚えておいでですか?」
「うん。そこから先が覚えてないの」
「陛下は・・・お食事に睡眠薬か何かを盛られ、眠ったラミレシア様に害をなさろうとしたのです・・・」
ルルカは俯き、私は驚きと戸惑いで言葉がしばらくでなかった。
二人の間にしばらく沈黙がながれたが、その沈黙に言葉を投げた。
「どうして陛下は私を・・・」
「わかりません・・・・。
ですが、レネリス様が助けて下さいました。」
私は耳を疑うような言葉を聞いてしまって次の言葉が中々でなかった。
「私がなんで陛下に害されないといけないのかわからないけれど、
レネリス様が助けてくださった理由もまたわからない・・・・。
いつも私のこと避けてるようだけど・・・・」
「嫌ってはいないと思いますよ。私が知る限りではどなたにでもあのような態度ですよ」
ルルカは私の目に嫌われていない事を訴えていた。
「わかった。ルルカが言うならきっとそうね」
そういうと、ルルカの手を握って応えた。
私は辺りを見回すとミクリーがいない事に気付いた。
「そういえばルルカ、ミクリーは知らない?」
「ミクリー様ならミーナ様がお相手なさっておいでですよ」
「そっか。それならいいの。」
(少し寂しかったけど、ミーナ様が喜んでくれているなら、いいよね)
そう思った瞬間窓を叩く音がしたので、私とルルカが振り向くと
ミクリーが泣きそうな顔で窓を叩いていた。
ルルカと私は何事かと思い、すぐに窓を開けて、
びしょ濡れになったミクリーを中へ入れた。
ミクリーはびしょ濡れで涙なのかわからないが、瞳を潤ませて私達に小声で訴えていた。
「ミーナ・・・ミーナ」
私が抱き上げると私の胸に頭をこすりつけてきた。
ミクリーはしゃべるのが上手じゃないうえに、泣いていた為、
聞き取りずらかった。
「ミーナ様がどうしたの?」
泣いたまま動かなくなってしまったミクリーの頭を撫でた。
ルルカと私は顔を見合わせて、ミクリーが落ち着くのをまっていたが、
ミーナ様が扉を開けて入ってきた。
その途端、ミクリーが震えて、私の服の中に潜り込んできて驚いた。
ルルカはすぐにミーナ様の表情が何かを探している様子である事にきづき、
声をかけた。
「ミーナ様どうされたんですか?」
「ここにミクリー来なかった?」
ルルカは私のほうを見ると、それにきづき、ミーナ様も私の方を見た。
「あ!ラミレシア!元気になった?」
「はい。心配してくれてありがとうございます。ミーナ様」
ミーナ様は私に駆け寄ってきて、笑顔を見せてくれた。
私もそれに笑顔で応えた。
「心配したんだよ。いきなり倒れて、ミクリーは一人でお風呂で溺れるし。」
私はそれには苦笑いをするしかなかった。
「ねぇねぇミクリー知らない?こっちのほうに来たと思ったんだけど・・」
ミーナ様は周りをキョロキョロと見回しているが見つからない。
「ミーナ様一体なにがあったんですか?」
私は背中で怯えるミクリーを感じ取り聞いてみた。
「ミクリーとお散歩しようとしたんだけど、中々一緒に来てくれなくて、
ついには逃げ出したから、追いかけたら、色々な所にぶつかるから、
怪我見てあげないといけないととおもって、追いかけたら、また逃げるし。」
ミーナ様は一人ふてくされていた。
これには私とルルカは苦笑いするしかなかった。
背中でミクリーがあんまり怯えるので、助け舟を出してあげた。
「ミクリーは妖精だから、一回家に帰ったかもしれません。
最近家に帰ってないって言ってましたから」
私がそういうと、ミーナは残念な顔をした。
それを見ていたルルカは空気を読み、ミーナ様を宥めながらミーナ様の部屋まで
送って行ってくれた。
誰もいなくなった部屋でやっとミクリーは出てきた。
「ミクリー元気出して。ミーナ様も悪気があって追いかけまわしたわけじゃないよ?」
ミクリーは目元を赤くして立っていた。
私はどうしようか考えた時、ふと思った。
(そういえば、ミクリーとちゃんとお話したことなかったかも・・)
「ねえ、ミクリー少し私とお話しましょうか?」
ミクリーは鼻水を垂らしながら私をじっと見ていたので、鼻を拭いてあげた。。
「ミクリーはどうして私の所へやってきたの?」
「ラミレ○×△・・・・」
舌を噛んだらしくまた悶絶した。
(また噛んだ・・・・これじゃ話できないかな・・・・」
「そうだ。これ使って。」
そういうと、ペンで書ける事を教え、紙に字がかけることを教えた。
ミクリーはすぐさま紙に字を書き始めた。
「ラミレシア様とずっと一緒」
私は母と離れ離れになっていて心細かったのもあったせいか、
ミクリーの言葉はすごく嬉しかった。
「そうだ。良い物作ってあげる。字も書けて、傘にもなる小さな傘だよ。
今丁度雨降ってるから、役にきっと立つよ。」
私は小さい頃から小物を色々作るのが好きだった。
(まさかこんな所で活躍するとは・・・・)
一時間程して完成した小さな傘と紙の束をミクリーに渡そうとした時には、
既にミクリーは私の膝の上で眠っていた。
私はミクリーの頭をそっと撫でると、私もいつの間にか
深い眠りに落ちていた。
目を覚ますと泣きそうな顔のミクリーが私の頬を揺すっていた。
「ん?・・・どうしたの?」
外を見てもまだ暗い事から朝ではないことはわかった。
よく見ると私が先ほど作ってあげた小さな紙に「にげる、にげる」
と何度も書かれていた。
「にげる?ミクリーどうしちゃったの?」
ミクリーはドアの入り口の方を指差すと大きく息を吸い込んだ。
「アッチ危険。アッ○×△・・・・」
いつものようにベットを横転しながら悶絶を始めた。
私はもう慣れたのか、そんなミクリーを掬い上げると頭に乗せた。
ミクリーのいつもと違う行動に少し胸騒ぎを覚えドアの方へ歩いていき、
ゆっくりドアを開けた。
回廊を見回すが誰もいないし、何かあるわけでもない。
そして部屋に戻ろうとしたとき、向かいのレネリス様の部屋から
黒い煙のようなものが漏れ出していることに気がつき、
ゆっくり部屋の前に立ってみた。
よく見るとドアノブすらも真っ黒な煙で覆われていた。
(この部屋はレネリス様のお部屋。何かあったのかもしれない・・・)
決心を決め唾を飲み込むと恐る恐るドアノブを握った。
黒い煙が私の腕に絡み付いてきたが、それでもなんとかドアノブを廻し開ききった。
右手にまとわりついた黒い煙を振り払おうとしたが、中々取れない。
頭の上に乗っていたミクリーが黒い煙に飛び掛りかかり、引き剥がしてくれた。
「ありがとう。ミクリー」
そういうとミクリーは偉そうに胸を張ると
また私の頭の上に戻った。
「それにしても・・・この黒い煙なんだろう・・」
ゆっくり私は部屋に踏み入ると、辺り一面真っ黒な煙で覆われていた。
(火事!?・・でもこの黒い煙前にどこかで・・・)
広く開けた場所まで来ると、レネリス様が片膝をついていた。
「レネリス様!どうされたんですか!?」
私はすぐに駆け寄ろうとしたが、また黒い煙に行く手を阻まれ動けなくなってしまった。
レネリス様は私に気付くとこちらに振り向き私と目が合った。
体の半分を黒い煙が覆い、左目が黒い結晶玉のようにギラギラと輝いていた。
「どうして・・・・・」
小さな声ではあったが私の耳には、レネリス様の苦痛の声が聞こえた。
この事態が尋常ではないことはもう明らかだった。
でも、黒い煙に足を掴まれた私は助けを呼びに行くこともできない状態に陥った。
そんな私を、黒い煙に半分以上包まれたレネリス様が私に襲い掛かってきた。
「敵影を確認、ラミレシア様へのミラー確認、捕縛を開始します」
その声とともに、いつの間にか私の前でレネリス様とミクリーは対峙していた。
ミクリーの魔法に阻まれ狂ったように暴れ始め、周りの物を破壊していた。
部屋の中は、台風のような嵐になっていた。
私は頭が混乱していた。右目はレネリス様本人であることはすぐに見て確認取れた。
「ミクリー。一体何が起きてるの?!」
「逃げてください。ラミレシア様逃げてください」
ミクリーは私の質問に同じ応えを繰り返した。
黒い煙は私から離れ、私は自由になったが、二人の対峙している光景から
目を離せなくなっていた。
4章楽しんでいただけましたでしょうか?5話もがんばって書いていますので、
ぜひとも応援お願いいたします。
ミクシー等もやっておりますので、よかったらマイミクになってね
ラミレシアより