入城編
いつも読んでいただいてありがとうございます。
今回は入城編ということでお城でのお話です。
お楽しみください
〜〜〜〜〜バルタシア王国の一室〜〜〜〜〜〜
「う〜〜ん・・・」
目を開けると知らない天井だった。
「ここは・・・」
私は周りをぐるりと見回したが、頭が覚醒していないせいか、
真っ白な背景に黒い線で描かれているだけのようにみえていた。
時間が経つと、徐々に周りに色がつき始めた。
「ここは天国・・・?」
豪華なベットに豪華な室内、そして高そうな調度品の数々・・・
私がゆっくり上半身を起こすと、何かが布団から落ちた。
「ぎゃああああああ」
「え・・・・」
私は目をぱちくりさせてると、落ちたものがゆっくりと布団に上がってきた。
「ラミレシア様お目覚めになりましたか!」
今落ちたときにできたのか、自分の頭をなでながら私を見つめていた。
(どこかで見たような・・・・)
「あ!あの時の妖精さん!」
「はいです。あの時は看病していた○×□・・・」
妖精は舌を噛んだのか口を押さえて悶絶していた。
(噛んだ・・・)
私が顔を覗き込むと、涙を浮かべていた。
でもなんだかかわいくて、頭をなでてあげた。
妖精は撫でられるのがスキなのか、さっきまでの涙目から笑顔に変わった。
「妖精さんも無事でよかったよ」
私は笑顔で妖精に言葉を返した。
改めて回りを見回した後、この現状が気になってしかたがなった。
(私死んではいない・・・よね・・)
「妖精さんここがどこかわかる?」
気持ちよさそうにしていた妖精はまたうとうとと眠りこけそうになっていた。
私はまあいっかという気持ちになって布団からゆっくり立ち上がろうと布団をめくると、
服がいつもの私の物じゃないことにきづいた。
「えええええええええええええ!な!!」
私は思わず声を上げてしまい、妖精がまた布団から転げ落ちた。
なぜか貴族が着るような黄色いドレスに変わっていた。
一人で驚いていると部屋に誰かがはいってきた。
「うっせーぞ。チビ。静かにねてろ。何時だとおもってんだ」
私はびくりとして部屋のドアに目線を移したら、王子様が私を睨んで立っていた。
(怖い!怖いよ!お母さん!)
私は恐くて言葉もでず涙がでてしまった。
私のベットの足元から、妖精が王子様から見えるか見えないかの角度で
小さな声をさらに小さくして張り上げていた。
「女の子を泣かせる人は悪い人だ!どっっ○×△!!!」
妖精はまた舌を噛んだのか一人悶え苦しんでいた。
そんな妖精を気にもとめずに、
王子様はゆっくりと私の方へやってくると、おでこに手を置いた。
私は母以外に触れられる経験が少なかったので、顔が真っ赤になってしまった。
「さっき熱は引いたはずなんだが・・・また上がってきたな。
もう少しゆっくり寝てろ」
私はもう何がなんだかわからないこの状況を整理すべく、王子様の言うとおり、
ベットに横になった。
妖精はやっと悶絶から立ち直ったのか、
王子様からすぐに離れるべく、走って移動したが、椅子にぶつかり
また悶絶していた。
王子様は私に布団をかけ直すと、悶絶中の妖精を掴み、
右肩に乗せ一緒にドアから出て行った。
「一体何!この展開!王子様がなんでここにいるの・・・まったくわからない」
私は布団に横になりながら頭をかかえていた。
だが、疲れが完全に取れていなかったのか、
知らず知らずのうちに意識が遠くなっていった。
〜〜〜〜バルタシア王国のある一室、ラミレシアが目覚める1日前〜〜〜〜〜
「ラミレシアは隣の部屋で眠っている。この部屋には俺とお前とスフォンだけだ。
今から何が起こるかわかるな?」
「えーっとわかりまっっ○×△!」
ミクリーは丸いテーブルの上で悶絶していた。
レネリスはその光景をもう何回もみていた為、
誰がみても怒ってると言える表情になっていた。
「わかった。もうしゃべらなくていい」
そういうとレネリスは立ち上がり右腰に常に備え付けている剣を抜き、
ミクリーを一刀した。
だが、無傷だった。
スフォンは驚愕の目でその光景を目の当たりにしていた。
ミクリーの周りに虹色の壁ができていたのだ。
レネリスの剣は逆に刃こぼれを起こしていた。
ミクリーはさっきとは打って変って無表情のような顔になってレネリスとスフォンを凝視していた。
「オートプログラムを発動します。敵影を確認。捕縛します」
口から言葉が発せられると同時に、黒い狼のような影が一瞬でスフォンを拘束し、
レネリスは1回目は回避できたものの、2回目で拘束された。
それからは何もしてこなかったが、二人はミクリーから目を離すことはできなかった。
15分程たってミクリーはいつものミクリーに戻り、捕縛魔法は解除された。
「あれはリシア=ガーネットの魔法に似てるな」
「ええ。後わかった事とすれば、この妖精はガーネット家と何かある事。
まあ秘密はまだまだありそうですが、無理にほじくれば蛇がでるか虎がでるか・・・。
こわいこわい・・・」
ミクリーは何が起こっていたのかわかっていない様子で、こちらを見ていた。
〜〜〜〜〜時間はラミレシアの部屋をでた後に戻り、バルタシア王国のある一室〜〜〜〜〜
スフォンがレネリスと机を間に敬礼していた。
「グニス総大将からの報告が届きました。
万事順調。引き続き事を進める。との事です。
それと・・・・ミクリーは危険ですよ・・・
手に負えない代物だと・・・」
「その報告はいい。俺が考える。
それとセリアヌダルクとの会見はいつだ?」
スフォンは懐から手帳を取り出すと調べ始めた。
「一週間後の予定になっています」
「わかった」
レネリスは即答すると書類に目を向けはじめた。
「スフォン、メイド長を呼べ」
「はっ!」
スフォンはすぐにメイド長を呼びに出て、
しばらくすると、メイド長がやってきた。
「レネリス様のお呼びにより参りました」
レネリスは書類から顔を上げた。
「俺がつれて帰ってきた女の報告は受けているだろ?
その女のしばらくの世話を頼める奴をさがしている。
臨機応変に対処できる奴がいい。探してくれるな?」
「仰せのままに。」
メイド長はすぐに扉から出て行った。
〜〜〜バルタシア王国ラミレシアの眠る一室〜〜〜〜
ドアをノックする音が聞こえた。
「ラミレシア様いらっしゃいますでしょうか?」
ドア越しにキレイな声が聞こえた。
私はまだ眠気眼でドア方を向いて返事をした。
「はい。開いてます・・・」
ドアが開くと、精霊を手に抱えたメイド姿の女性がお辞儀をしていた。
「今日よりラミレシア様専属でお仕えすることになりましたルルカと申します」
私はバタバタと慌ててベットから起き上がろうとして転びそうになってしまった。
「えとえと・・・よ・・・よろしくおねがいします・・」
体勢をを整えると、ルルカと名乗る女性をまじまじと見てしまった。
(背が高くて・・・キレイな人・・・)
思わず直視していたことに気づいて、反射的に謝ってしまった。
「ご・・ごめんなさい・・」
「いえ・・・・」
お互いに緊張した雰囲気になってしまった。
(ど・・・どうしよう・・・っていうかこの状況は一体!?)
そんなこんなで、今の私の置かれている状況が理解できない私は、
ついつい難しい顔になってしまっていた事に気づいていなかった。
(一体私が寝てる間にまた何かあったの・・・!?)
この空気を知ってか知らずか、
妖精がルルカの手から降りると私の足をよじ登ってきたので、
手で掬い取った。
すると、すいすいと手を登って肩を登って、頭の上にちょこんと座り満足げな表情をした。
どうやらここがお気に入りらしい。
そんな表情がかわいくて私とルルカは笑ってしまった。
「妖精さん名前は?」
私が尋ねると小さな声でミクリーと答えた。
ミクリーの頭を撫でてみたら、また気持ちよさそうに目がとろけていた。
ルルカは二人を見て微笑んでいた。
そんなこんなで頭がすっきりしたのか頭の整理ができた。
「ルルカさん突然なんだけど聞きたいことがあるんですが・・」
私は、緊張した面持ちで尋ねた。
ルルカは「はい。なんでしょう?」と丁寧に私に応えた。
「ルルカさんここって一体どこなんですか?」
ルルカは目が点になったような顔をしていた。
「えっと・・ここはバルタシア城ですよ?」
今度は反対に私の目が点になったが、無理やり納得させた。
ルルカは椅子を引くと、私に座るようにそっとうながしてくれた。
「あ・・ありがとう」
「いえ。」
知らない人とあんまり接してこなかった私は、何をされても恥ずかしい気持ちになった。
それとは裏腹にルルカは当然の動作のように、今度はお茶を入れ始めていた。
私がルルカさんにも座ってもらおうと椅子を出したが断られた。
「私はラミレシア様のメイドです。私の位置はここです」
そういうと私の側に控えめに立っていた。
どう接していいのかわからなかったが、とりあえず私は状況の整理に専念した。
「あのー、なんで私バルタシア城にいるんですか?」
ルルカはその質問に対して返答する答えを持っていなかった。
「申し訳ございません。わかりません」
「ですが、ラミレシア様は賓客としてもてなすようにと指示を受けております。」
謎が深まるばかりと頭で考えていると、扉をノックする音が聞こえた。
いきなり部屋に見知らぬ男性が入ってきた。
「おお。かわいい!やっぱり似合うね!」
青色の髪を後ろで一つに束ねたスラリと背の高く二十歳前くらいの
男性が私を見るなり近寄ってきた。
私は後ずさりしながら少しずつ距離をとってしまった。
ルルカは一歩下がった後、男性に平伏した。
それを見た私はこの人はそれなりの身分の人であることを察し、
お辞儀をした。
「はじめまして、ラミレシア=ガーネットと申します」
身分の高い人たちは、挨拶するときに裾を少し持ち上げてお辞儀を
することを思い出し、見よう見真似でやってみた。
それをみた青年は急に抱きついてきた。
私は頭の中が真っ白になってしまった。
ルルカは私が困っているのがわかったのか、口を挟んだ。
「陛下。ラミレシア様がお困りです」
陛下と呼ばれた男性は一歩離れ自己紹介をはじめた。
「私は現国王ゲニム=シャーロン。ドレス似合うよ」
「あ・・・・ありがとうございます・・・って国王様!?」
私はすぐに平伏した。
ゲニムは私に立つように促すと、さっきとは打って変って真剣な眼差しで
私を見ていた。
「ラミレシア君しばらくは窮屈だとおもうが、ここにいてはくれないか?」
私はその返答にはすぐに答えられなかった。
「私はフリノアへ行って母を捜さねばならないのです。
おねがいです。どうかここから出してくださいませんか?」
私はずっと思っていたことをはっきりと口にした。
ゲニムは困った顔をした。
「今はまだ国境封鎖が解除されていないんだ。
今度セリアヌダルク王国との会談がある。それに随時する形で
祖国へ戻るというのではだめかな?
今はどうやっても国へは戻れないんだ。」
少し目を落としたゲニム陛下に渋々返事をした。
「わかりました。その時に一緒に戻ります。
陛下のご配慮ありがとうございます。」
私は再度お辞儀をするとうつむいてしまった。
ゲニム陛下はゆっくりと私から離れ、ルルカに「後はまかせたよ」と言うと
ドアから出て行った。
「ラミレシア様・・・」
ルルカは俯いた私の肩を抱き、ベットに腰掛させてくれた。
「ルルカさんありがとう・・・」
すぐにでも母の元へ行きたいと思う心が
壁にぶつかって怪我をしてしまったような心境だった。
「お母さん・・・・・」
ゲニム陛下が出て行った後、私はベットに腰掛け、ルルカは立って向かい合い色々な話をした。
ルルカは元々このお城で働いていなくて、急遽召集された田舎出のメイドである事。
城の内情についてはあまりわからない事。
ルルカの出はバルタシアの首都デニムから北西にあるムルという小さな村である事。
そして、ルルカには私と同じ年くらいの妹がいること。
「ルルカさん・・・ごめんね。私のせいでお城に呼ばれる事になって・・・」
「いえ、いいんです。お給料は貰えますし、妹の事は、叔母がちゃんと見てくれています。
それにこんなにかわいい方に仕える事ができるのですから」
私はお世辞でも恥ずかしくなってしまった。
「ありがとう。ルルカさん」
「私のことはルルカとお呼びください。そう呼ばれる方がなれてますから」
ルルカは本気でそうおもってる言い方をしたので私はそれで納得することにした。
「私にお姉さんがいたら、ルルカみたいな人がいいかな・・・」
私は恥ずかしながらも言って見た。
ルルカは恥ずかしそうに微笑んでくれた。
二人は話がはずみ、時間がたつことを忘れて話てしまった。
「ラミレシア様、そろそろ晩御飯の時間になります。そちらへ参りましょう。
その後は御風呂に入れますよ」
ルルカは時計を確認しながら、この後の予定を話てくれた。
私は、晩御飯の話がでたとき、御腹が鳴った。
ルルカは小さく笑った。
「そういえば、寝てる間何も食べてなかった。何日経っていたんだろう」
私は御腹をさすりながら頭に疑問が一つ増えた。
「二日前にここに運ばれてきたと聞いておりますが・・・・」
ルルカは立ち上がった私のドレスのよれを直してくれた。
妖精のミクリーは頭の上でスヤスヤ眠っていた。
「ねえ、そういえば私の洋服ってどこにあるか知ってる?」
「洗濯をしておきましたので、後ほどお持ちいたしますね」
私はほっとして胸をなでおろした。
ルルカは、「では参りましょう」と促した。
ご愛読ありがとうございました。
第4章は近いうちに出せると思いますので、少々おまちください