はじまりの地
1話目修正版です。もしよろしければ
一人の少女の生き様を見守ってください
これはある一人の少女の物語です。
この世界には、悪魔契約なるものが存在した。
悪魔契約は、契約者を食い殺す。だが、その代償として、絶大なる力を与える。
この話は、悪魔契約の物語。
「お母さん大丈夫?」
ベットで横になっている母親に優しく声をかけた。
「うん。大丈夫よ。いつもラミが看病してくれるから、元気だよ」
「私は・・私のできることをしてるだけだよ・・・そんなたいした事してるわけじゃないし」
私は少し照れくさくなってしまったが、母はすぐに笑顔で私に応えてくれた。
「今日も元気に働かなきゃね」
母は笑いながら、私の頭を撫でた。
私は母のことが大好きだ。
いつも笑顔で、体が病に蝕まれていても、いつもニコニコしている。
たまに私の顔をみて、心配そうな顔をするけれど、私の唯一の家族なのだ。
私はいつも通り、朝食の支度をする。、
「お母さん、今日は何時から診療所を開けるの?
あんまり無理しちゃだめだよ?」
母は「はいはい」と流すような返事をし、うーんと、考えながら、
「10時に開けようか」
と私に言う。
「わかった。10時ね。支度は私しておくから、お母さんはギリギリまで休んでてよね?」
「うん。いつもありがとうね」
母はにっこり笑いながら返事をした。
私の国セリアヌダルク王国は平和な国。
ただ近年、隣の国パルタシアとその横の国アーザブルク王国が戦争をはじめてしまった為、
パルタシア王国と友好関係にあるセリアヌダルク王国に
パルタシアの避難民がなだれ込んで来ていた。
私の家は母と私の二人暮らしで、セリアヌダルク王国の北側のフリノアという、2千人程の小さな村で暮らしている。
9歳の頃に大病を患い、9歳以前の記憶がない。記憶がなくても今が幸せならそれでいいと自負している。
母は治癒能力者だ。どんな病気や怪我でも大抵治すことができる。
9歳に患った病も、母に治してもらって、今ではとっても元気になった。
だから、母のために、お手伝いできるように、私もがんばって母から治癒魔法を学んだ。
少しは治癒魔法が使えるようになったが、やっぱり母とは比べ物にならないほど、魔力が小さい。
診療所を開けてから、2時間程すぎてから、突然扉が勢いよく開いた。
「ここにすごい治癒能力者がいるときく!助けてくれ!」
私と母は突然のことにびっくりしていたが、すぐに応えた。
「一体何事ですか?!」
母と私はびっくりしながらも、訪問客を見つめた。
軍服をきていて、見るからに兵士であるその人は、息がとぎれとぎれだが、こちらをじっと見ていた。
それに応えるように、母は真剣に相手の目をみていた。
「瀕死の方がいる!頼む!助けてくれ!」
兵士は母に詰め寄るほどの勢いで懇願していた。
「病人、もしくは怪我人はどこ?」
それから1時間後、その怪我人は運ばれてきた。
見たところ、15,6歳程で私よりも少し年上にみえた。
その青年の症状をみて、母は顔色が歪んだ。
(臓器のほとんどが破損している、それに・・・)
母は、とにかく治癒魔法をかけ続けた。そして
私は、母が使うかもしれない道具を足早に準備をした。
この方の付き人は、ほとんどが軍服を着ていた。どこかの兵隊なのだろう。
リーダーのような方が、治療を開始した母の元にやってきて、苦痛の表情で立ち止まり頭を下げた。
「この方は我らにとって、絶対に死んではならない方なのです!どうか助けてください!」
男の人が頭を下げた瞬間に、周りの人たちも一斉に頭を下げた。
母はその光景をちらりと見たが、表情は険しいままで、小さくうなずいた。
治癒魔法は基本的に術者の体力、精神力を奪う。
基本的にリスクがないわけではない。
1時間ほど、母は治癒魔法をかけ続けたが、、
ほとんど効果が得ていないことは、母と私の精神力を異常なまでに削り、焦らせていた。
母の表情は更に険しさを増して、少し悩んだ後、私の顔をみた。
「ラミ。少しの間だけ、この方に治癒魔法ををかけていて。すぐに戻るわ」
「わかった。でもお母さんどうするの?」
「まだ手段はあるわ」」
そういうと、母は部屋の奥の、”母しかはいってはいけない”部屋へと入っていくのが見えた。
私は少し気になったが、目の前の事に集中した。
1時間ほどしたとき、母が戻ってきたが、
母の手には、光り輝く玉が3個ふわふわ浮いていた。
「ラミ。ゆっくりこの玉をこの方の腹部に流し込むわ。
治癒魔法を弱く、全体の呼吸がゆっくりになるほどに、包み込むようにおねがい」
私は目の前に浮かぶ光の玉を凝視していた。
(これは一体・・・・初めてみる・・・・)
「はい」
私はすぐに母の指示にもとづき行動した。だが、
母の体からいつもとは違う、魔力が漏れていたことにも気がついた。
普段が、やさしい光ならば・・・・今漏れているのは、母の命の光のような・・・・
(いや、今はそんなことはどうでもいいのだ、目の前のことに集中しなくちゃ)
私はすぐに、腹部を中心に治癒魔法を開始した。。
母はゆっくりと、彼の腹部の位置へ光の玉をゆっくり入れていく。
光の玉がすべて彼の体の中に消えると、母はすぐに包帯で彼の腹部全体を巻き込んだ。
次第に、彼の顔からは、苦痛の表情が消え、すやすやと息をしていた。
「これで、やれることはやったわ。後はこの方次第だわ。」
母の顔から、疲労がにじみ出ているのがよくわかったが、私に顔を見られまいとするそぶりをするように、きびすを返した。
「少し休むわね、彼はこのまま、今は寝かせておきましょう。ラミも少し休みなさい」
淡々と言うと、奥へ行ってしまった。
その背中を少し見つめていたが、私も疲れていたのか、母はただ疲れていただけだと、その時はそう思うしかなかった。
母が自室に戻ると、
私も椅子に座り、休みながら目の前の青年を見ていたが、いつの間にか眠りに落ちていた。
扉のノックの音で眼を覚ました。いつの間にか寝てしまっていた。
「はいはい。今あけますよー」
扉を開けた瞬間に、先ほどの男性が飛び込んできた。
「王子はご無事なのでしょうか!?」
あまりに彼の声が大きかった為、私はたじろいだが、すぐに姿勢を直した。
「彼は無事ですよ。命を取り留めて安静中です」
「よかった・・・・」
彼の瞳から涙がこぼれたように見えたが、すぐに彼は、私に丁寧にお辞儀をした。
「大声は出さないでくださいね。もう中へ入って結構ですので、そちらの椅子でお待ちください。・・・ん?王子?」
彼は向き直ると、制服の着崩れを直し、私をまっすぐ見た。。
「自己紹介を忘れていました。私はパルタシア王国、第3番隊隊長、スフォン=ラムシードと申します!」
挨拶を改めてされた後、すぐに行ってしまった。
(お偉い様だ・・・)
私はドギマギしながらうろたえていた。
ベットに横たわっている青年にかけより私を見た。
「このお方は、パルタシア王国第一王子です。」
私はもう目を見開く事しかできなかった。
(まさか私たちが助けた人が、隣国の王子様だったとは・・・・)
「ご・・・ご丁寧に・・・どうも・・」
「私はラミレシア=ガーネットと申します。先ほどいた女性は、私の母で、ムリタシア=ガーネットです。」
私は腰がひけてしまった。
彼は、私に礼をすると、王子様の側にかけより、顔を見つめている。
ふと、時計をみると、母があの部屋にはいってから3時間が経つ。
私は母の様子が気になり、あの部屋へ向かった。
扉をノックしようとしたその時、部屋の中から、母が誰かと話をしているような気配があった。
私は気になって、耳を扉越しにあてた。
「チッ!誰かきたな。話・・・・・。一週間・・・・」
話し声を聞こうと集中していたせいか、急に扉が開いて、私は固まった。
私はゆっくり扉からでてきた母に視線をあわせた。
(私絶対変・・・今の私変だよ・・)
母は何もなかったように話かけてきた。
「ラミどうしたの?」
私は母から目をふいにそらしてしまった。
「いえ、お母さん魔力大分使ったから、少し心配で・・・えと・・・その・・・」
母はポンと私の頭に手を置き、やさしくなでた。
「ありがとう。ラミ」
母はそう言いながら、部屋の扉を閉めた。その時私はちらりと中を垣間見たが、人も、気配もなかった。
一緒に治療室に戻ると、王子様とスフォン様が険しい顔をして話しをしていた。
「奴らはどうなった?」
「はっ!報告によりますと、シーリアスの援軍により、アーザブルク兵はすぐに自国へ撤退した模様です」
王子様は、報告を受け考え込んでいたが、私たちが目に入ったのかすぐに顔をあげてこっちをじっと見ていた。
「あんたたちか?俺を助けてくれたのは?助かった。礼を言う」
私達と目線をずらし、係わり合いになることを避けるような素振りをした。
(なんでこの人こんなに警戒心バリバリなのよ!っていうか目つきが悪い!)
「ここは診療所です。当然のことをしただけのことです」
母は、相手の顔をじっとみていた。何かを王子様に問いかけるような目で。
「俺たちは、すぐにここをでていく。お前たちに迷惑をかけるかもしれないからな。
お礼は改めてする。」
そういうとスフォン様に向き直り目配せをし、すぐに外に出て行ってしまった。
スフォン様は丁寧にお辞儀をし、王子様の後を追った。
「お母さん、私王子様に初めて会ったよ・・・私の王子様のイメージを返してほしくなったよ・・・」
母は私の頭を自分の胸に引き寄せた。
「色々な人がいるのよ。でも悪い人ではないとおもうわ」
私は母の言葉に、素直に「うん」と答えた。
その次の日、私はいつも通り朝の6時に起き、朝食の支度をし、母を起こす為扉越しにノックをした。
「お母さん、起きてる?ご飯できたよ」
おはようっと小声で言いながら、扉をゆっくり開けると
母は胸を押さえながら苦しそうに呼吸していた。
「お母さん!お母さん!どうしたの?!私だよ!ラミだよ!」
急いで駆け寄るとどこを見ているのか目が虚ろな状態だった母の手を取った。
母は少し目を開け、私を視認すると、ゆっくりテーブルの上に置いてある小さなカプセルを指差した。
母の言うとおりに、小さなカプセルを取ると、母に渡した。
すぐにカプセルとお水を一緒に飲むと、また胸を押さえ体を小さく丸くし、
耐えるような格好での呼吸をつづけた。
数分後、母の呼吸は落ち着きを取り戻すかのように、静かな寝息に変わっていた。
そんな母の側に付きながら、時々母の背中を撫でる。
(この薬は一体なんなのだろうか・・・・、それに母の病気の進行速度が増してる・・・)
私に隠し事している事はわかっていた。でも、母を信じてることもまた大事なのだと自分に言い聞かせた。
気になることはあったが、母の容態が一番きになる。
(あの開かない部屋に秘密があるのかもしれない。でも、あの部屋は母の魔力で、母以外の入室を拒むようになっている。)
ふと気づくと、ベットの下に何か本があった。
そのタイトルをみて、謎が深まった。
「デビルクライシス・・・」
中を見てみようと思ったが、封印が施されていて、開かなかった。
4時間程して、お昼ご飯の支度をしていると、顔色が良くなった母が起きてきた。
「ラミ色々と迷惑かけたね」
「そんなことないよ。お母さんもう起きて大丈夫なの?」
私はすぐかけより、いつもの母に安堵した。
母は真剣な眼で私を見ると自室に来るように促した。
「お母さんどうしたの?」
「ラミは色々と思うところがあるでしょ?もう話す時期だと思ってね」
母の顔が、恐くて、それでも言わないといけないという決心が篭められた表情に一瞬だけたじろいでしまった。
静かに母の後ろを付いていく。
そして、開かずの部屋に、14歳にして初めて入ることとなった。
部屋は、本で埋まっていた。
母は、私に腰掛けるための椅子を渡し、座るようにうながした。
私が椅子に座ると母もゆっくり椅子に座り、私の目を見て、
何から話せばよいのか迷うような素振りをしたが、気持ちの整理がついたのか、一息つくと言葉を紡ぎだした。
「単刀直入にいうわね・・・私は後6日で死ぬわ」
いきなり何をいわれたのか理解できなかったが、母はどんどん語っていく。
「私はね、悪魔契約なるものを5年前にしたの。
悪魔契約をすることにより、特殊な力を授かることができる。
だが、その代償は大きい。」
母の真剣な言葉に、一語一句聞き漏らしてはならない気がして、頭を働かせた。
「ほとんどは死を招きいれる。そして周りを死に至らしめる。
まさに悪魔契約。まだまだ悪魔契約は謎が多いが、今言ったことは私が調べ、そして身をもってわかった事よ」
私は悪魔契約という言葉が何なのかまったくわからなかった。
今まで生きてきて、耳にすらしたことがなかったのだ。
「お母さんは・・・・悪魔契約・・・・いえ・・・自分の命をかけてまで、しないといけなかった事ってなんなの?」
私は、一番すぐに疑問に思ったことを聞いた。
「貴方の命を守る事」
私はすぐに9歳の大病のことを思い出した。
母の命を奪う事になってしまったのは私だったのだ。
「お母さん・・・・・」
少し沈黙がお互いに流れた後
母が私の手を取って、ごめんなさいと小声でつぶやいた。
「なんでお母さんが謝るの。私はお母さんに感謝こそして、謝られる理由がわからないよ」
私はまっすぐに母の顔をみたが、母はもう一度小声で、ごめんなさいと繰り返すと私をまっすぐに見た。
「私は貴方の本当の母親ではないわ」
「え・・・」
私はまた頭が混乱してしまった。
母が何を言ってるのかしばらく理解できなかったが、少し時間がたち動揺はあるものの、落ち着きを取り戻した。
(じゃあ本当の母親は、誰で、どこに・・・)
「貴方の本当の母親は、きっとどこかで生きてる・・・」
私の落ち着いた心はまたざわめき始めた。
「貴方の母親と私は、元々はアーザブルク王国の悪魔契約研究員だったの。
でもある事件をきっかけに、私と貴方の母リシア=ガーネットは貴方を連れて逃げ出した。
貴方は私たちの・・・・希望・・」
母はいつのまにか、涙を流していた。
私には希望という言葉とは反対に絶望の言葉と感じ取れた。
頭の整理がついていなかったが、母の涙は見ていて、胸がチクリと痛んだ。
「お母さん、少し休みましょ?」
私の言葉に、すぐに反応したが、話を終える気にはなっていなかった。
「私にはもう時間がないの。ラミお願い。聞いて」
私の胸の鼓動は高鳴ってばかりだった
「うん」
母の顔をみてるだけで、つらくなってきていた。
「もう時間がないから、最後に私の我侭をきいてほしい」
有無を言わせない雰囲気に私の体は氷ついたように動かなかった。
母の意向で外にでると、暗く私の胸はさらに高鳴りをつづけた。
母は自ら、私から離れ、一人闇の中でたたずみ、精神を集中させ始めた。
それから数分後母を取り囲むように濃い霧がたった。
私の頭の中では母が先ほど話をしてくれた悪魔契約という名前が
頭にひっかかって離れないでいた。
「我ムリタシア=ガーネットと契約せし悪魔ここに降臨せよ!」
そういうと母は、左手の小指を右手で少し傷をつけ、血を地面に垂らした。
突然母の周りに円状の魔方陣が浮かび上がり、
母の目の前に巨大な獣のような者が浮かび上がった。
巨大な獣は母を見下ろし低い声をあげた。
「我と契約せし、ムリタニア何用か?お前の命は後6日ある。」
母は化け物を目の前に悠然と立っていた。
「セデス。もう時間がないから悪魔結晶を行うわ。」
化け物は、母を見て驚いた表情をみせた。
「ムリタニア。何を言ってるかわかってるのか?」
「お前は悪魔には屈しないと思っていたから、死を素直に受け入れるとおもっていたんだがな。
お前ほどの、悪魔結晶はさぞかしお喜びになる。5年も待った甲斐がある。」
化け物は母を見下ろし下卑笑みをばらまいた。
「少し待ってて頂戴。娘と別れの挨拶をしてくるわ。貴方も待ち遠しい時間を楽しみなさい」
化け物は待ちきれないとばかりに顔がニヤついていた。
「ふん。早くしてくるがいい」
私は目の前でおきている現実に動けなくなっていた。そして、
話がまとまったのか、母が私の方へ歩いてきた。
そして急に母が私を抱きしめながら、私の耳元で囁いた。
「どう?あれが悪魔よ。怖い?契約した私も・・・怖い?」
私はどう返していいのかわからなかった。
それにどうしてか、母の香りが愛おしく思ってしまったのだ。
「ラミ、これを貴方に渡しておくわ。お守りに持っていて。」
そういうと、母は私に赤い水晶のかけらを握らせた。
それからゆっくりと私の目を見て微笑んだ。
「色々と隠し事していて、ごめんね。そして、今までありがとう」
その瞬間、私の周りに魔方陣が出現した。
「これは・・・結界魔方陣・・・?」
私は、離れていく母に何か言わなきゃいけないと思う反面、何も言葉がでなかった。。
遠く離れていく母に、「まって!お母さん!」という言葉をつむぎだしたが、
実際に口からでていたかどうかもわからない。
私はもう動けなかった。そして、母に渡された赤い結晶石をじっと見つめた。
今起きていることが、現実なのか夢なのか。
私の頭の中は、もう目の前で起こることを見つめることしかできなかった。
「おまたせ。もう心残りはないわ。はじめましょう」
母は悪魔と対峙するような位置に移動し、深呼吸をすると言葉をつむぎだした。
「我の命を悪魔結晶化し、我の契約せし悪魔と融合する。そして天使契約とする!」
悪魔は母を見て目を見開いた。
「おい!いきなり何をする!お前、俺の力わかっていないのか?!」
「わかっているわ。魔力と精神エネルギー、共に悪魔である貴方に及ばない。でもね、
私も悪魔になりきればどうかしら?」
母は二度足踏みすると、それが発動条件なのか、母の背後から鎖が飛びで、悪魔を拘束する。
悪魔は驚いた表情を隠せなかった。
「お前は治癒魔法以外使えないはず、なぜ・・」
「貴方は知る必要ないわ。貴方はもう封印されるのだから」
母の表情はいつもの優しい表情ではなくなっていた。
悪魔の体をじわじわと、引き寄せている。
「こんな鎖引きちぎってやるわ!」
悪魔も暴れ回るが一向に切れる様子はない。
「なんだこの鎖!。普通の鎖じゃないな!?」
母を睨みつけるが、まったく動じていない。
「ええ、上級魔法よ。しかも特殊能力つきのね。」
悪魔の顔が苦痛にかわっていた。
「まさか、この鎖俺の魔力を吸ってる!?」
「今気づいても遅いわ」
悪魔はすぐに魔方陣を解き放ち、鋭い牙をもち、体中にドス黒い魔力を纏った狼のようなものを、5体出現させた。
「あいつらを食い殺せ!」
悪魔は大きな声で叫ぶと共に、狼が一斉に、母と私に襲い掛かった。
「ガルルルル!」と闇の声は大きく辺りに響いた。
私は恐くて腰が抜けて動けなくなっていた。
母はそれを待っていたかのように、さらに足を3回地面を踏むと、更に鎖が背後から飛び出て、
5匹の狼らしきモノを拘束した。
「私の勝ちね」
「多重契約したな!・・・まあいい。俺の負けだ。だがな、後で後悔するんだな。」
悪魔は最後まで呪いの言葉を口にした。
悪魔を至近距離までひきづりこみ、悪魔の口をもふさぐと諦めたように動かなくなっていた。
そして、最後のとどめとばかりに母は、悪魔の心臓の位置に手を置き、
大声で叫んだ。
「スペースコンプレッション!」
母は涙を流しながらこちらをみていた。
「ねえ、リシア。貴方との約束はもう守れそうにないかもしれない。貴方の娘はとってもいい子に育ったわ。
リシアに話たい事沢山あったのよ。私に娘を預けたまま、どこかにいくなんて酷いわ。一回文句言わないといけないわ。
もう時間がないわ・・・・
リシア・・・今貴方はどこにいるの?」
母が空を見上げるように、私ではない誰かに言葉を紡いでいた。
その言葉が、痛く心に吸い込まれた。
母の名前を呼んだが、周りの空間の歪みに消し去られていた。
周りのあらゆるものが、母の手に向かって引き寄せられていく。
そんな嵐のなか母は私に手を振っていたように見えたが、それはもう確認できなかった
激しい空間の歪みが数秒ほど経った瞬間、大爆発が起こり、辺り一面を吹き飛ばした。
できるだけ、がんばって連載を随時更新していこうとおもいますので、是非よろしくおねがいいたします。