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悠久ラビリンス  作者: 手乗文鳥
本章

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シンクロニシティ②

加奈子は


「ま、いい人なんですけどね。酔うとたまに変なこと言うんです」


そういうと「すいません。ちょっと」いうと席を立ち、ふわっとしたオムレツの様な尻をこちらに向け、テーブルと壁の狭い隙間から出ると、トイレに立った。


戻ってきて席に座ると財布からモソモソと乗車証を取り出し。


「私これ持ってるんですよ。父親からもらったものですけど」


というと近鉄の優待乗車証を見せてくれた。半年間全線無料乗車できる便利な券だ。


宏は冗談半分で


「すごいね。それはなかなか貴重だ。立派な名誉県民の証だよ」


と返した。

実家は橿原でなにやら家に土蔵のある立派な家らしかった。


「土蔵になんか土器とか、仏像とか、古い書物とか色々あるんです。おじいちゃんが集めてたものらしくて何やら貴重なものらしいんですけど。どこからどう集めたか今になっては経緯がさっぱり分からないんですよ」


宏は


「素晴らしい、邪馬台国が九州にあったと証明される貴重な資料かも知れない」


と答えた。


「ん?」


加奈子は鼻をヒクッとさせると妙な顔をした。

宏は少し笑いそうになりながらも神妙に答えた。


「最初は九州で始まってるんですよ。大陸とも交易しやすいし、ただ何故かそこで上手くいかなかったから、天皇はあちこち旅して奈良にたどり着いて、そこで九州でやろうとしたことをやり直して、都ができた。


しかし、長年居るうち、坊主が威張り出し、自分が天皇になろうとするヤツも出てきて、やはりここももっさりしただけのクソみたいな場所だったと思い、


京都に遷都して平安京ができて、徳川幕府ができるまで都は京都が中心だったというのが歴史の大きな流れじゃないですか?


だから九州と奈良に似たものがあるんですよ。


九州に高千穂があり、奈良に高の原がある。どっちも高天原と言われている。


邪馬台国も同じで、九州だ奈良だと論争してるけど、最初、九州にあって奈良にも似たようなもの作ろうとしたから、議論が分かれるんですね。


卑弥呼とか邪馬台国とか言葉の響きも原始的だし、こういうのは奈良の言葉の響きではないですね。どちらかといえば九州ですよ。


文献に残ってる周囲の地理の特徴もどちらかといえば九州っぽいし。


さらには昔のトルコにハランと言う場所があってイスラエルからそこに向かうヤコブが天から降りてくる神を見たって旧約聖書の話があるようで。


そこから少し話はズレますが、さらにハランは同じくトルコのタガーマとの間で交易があってその辺の話をまとめてタガーマハランの天孫降臨。


ニニギの高天原への天孫降臨という話になったという説がありますね。当時の発音はタカマガハラではなく、タカマガパラだったらしいですけどね」


加奈子は何かを考えながら話を聞いていた。


「うーん、そうなんですか?そんな話があるんですか?」


宏は答えた


「あるみたいですよ。シルクロードのできる過程でイスラエルから渡来したユダヤ人のラビが明治時代のお雇い外国人みたいに朝廷に色々アドバイスしていたんでしょ。

埴輪もでてるし、


平安京を造成した渡来人の秦氏なんかはおそらくアジア系ですが、そういった知識も色々持ってたみたいですしね。


平城京も平安京も立ち上がった頃は古代の明治維新みたいな感じだったのでしょう。


大陸の文化を色々日本に合うように編集してまとめなおして、インストールして、その過程の大化の改新ではそれまでの記録が焼けてなくなったりもしてます。


かなり機能的に合理的にそれまでの歴史の流れを編纂して国家形成を行なっていったと思いますよ。


このあたりの歴史の話が陰謀論みたいになるのはホントにそういう作為があったからです。


645年より昔の日本は文献での記録が乏しくよく分からないんです。


そして、日本書紀や古事記ができて現在に至るまでの日本のコンセプトがまとまった。

とりわけそれが完成した平安時代は重要だと思いますよ」


加奈子は宙を見ながら話を聞いていた。


宏はさらに


「ま、しかし、ユダヤ文化や旧約聖書から得た知見は日本文化に合うようにロジック部分だけを慎重に抽出した感じはありますね。


仏教みたいにそのまま受け入れたような感じではないですね。なんか暗号の様に神道文化の中に埋め込まれてるって感じです。


下手すると、趣味の悪いダジャレみたいになってる所もあって、主流の見方にならないんでしょう。


数も少ないし、ユダヤ系の渡来人は当時からも完全に黒子的な存在のまま歴史の影に埋もれていったと思いますよ。

汎神論の日本には一神教的な考え方は、厳しすぎたんでしょうね」


一息に話して宏は


「かなり、ざっくりとまとめてますけど、概ねはそんな感じだと思います。未来永劫真相は判明しないと思いますけどね」


少し話題を変えようと思った。


「休みの日は何をしているんですか?」


加奈子は答えた。


「写真を撮るのが好きなんで、よく撮りにいきますよ。


このあたりは撮るものは沢山ありますからね。次は夢絃峡の写真を撮りに行こうと思ってるんですけど。夢絃峡は知ってますか?」


宏は答えた。


「木津川の上流の所ですね。行ったことありますよ。

あのあたりは写真に撮るのが難しいですね。

雰囲気とか、空間の広がりとか、なかなか一枚の写真に収めきれない。

あの辺りも色んな伝説がありますね」


加奈子は答えた


「今度一緒に行きますか?私の友達も行きたいって言ってるし」


「あぁ、いいですね。ボクもあの辺りは久しぶりです」


宏は夜の十時頃に店を出ると、近鉄の大和西大寺駅で加奈子と別れるとターミナルを横切って押熊方面のマンションに帰宅した。


その日の夜、寝ていると夢に妙なカッパが現れた。


頭に旧約聖書をのせ忍者の衣に身を包み、忍法を唱える時の様に指を胸元で組みこう言った。


「ホントかウソかなのかなんてことは問題ではない。それはバカの考える事だ。


これは規定されたシナリオ。世界の全てはこの線に沿って操作され、動くだけなのさ。」


ドロンと煙が上がるとカッパは消え、宏は目を覚ました。


妙な夢だと思ったがすぐに忘れてしまった。


この時、宏もまた領域に静かに、しかし深く確実に侵入していた。


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