腰痛の完治とビリヤード
-29-
翌朝、加奈子の運転するパステルカラーの車はホテルを出発した、車中、宏は「腰が痛い」と腰の辺りを手で叩いた。
加奈子は、そんな宏をすわった目で満足気に眺めながら
「私たち結局羊の皮を被ったオオカミなのよ」
と言った。
加奈子はなにか詰まったものがとれたように晴れやかで、血色よく、額にはツヤがあった。
宏はズキズキと今にも外れそうな腰の痛みを気にしながら、最初に会って以来、かなりの圧を加奈子にかけていたと悟った。
車中、宏は頭の中にブランドもののワンピースを着たマリーの後姿のイメージが浮かんだ。
浮かんだというより、送り込まれてきたと言った方がいいだろう。
宏が何も考えていないのに突如イメージが立ち上がったからだ。
しばらくするとイメージは先に大阪の湾岸地帯で見た河童に変わった。
目をこするとおさまったものの、またすぐに同じイメージがループした。
車は橿原に入りしばらく進んだ。すると歩道にマリーが歩いているのを発見した。
「宏くん、麻莉だよ、よかったね」
加奈子は淡々とそういうとクラクションを鳴らし、そばの空き地に車を停めた。
マリーは歩道から空き地に入ってきた。
今日はブランドバッグ二つに加え大きな紙袋をもっていた。中には化粧品や健康食品、美顔器、健康器具、洗剤など色々入っていた。
「久しぶり、どこ行ってたの?」
と加奈子がたずねると、マリーは二人をそれぞれ見てから
「昨日は神戸で仕事でした。朝まで。
母親が色んなもの押し付けられて、私も捌かないとダメなんです」
と言った。
「大変だね」
と加奈子が言うと
「普通に売るだけでは難しくて、私と抱き合わせで売らないといけません。
だから最近は週の半分位は朝まで帰れません。フフフ」
というと宏を向くと
「宏さん、最近全然連絡くれませんね?
どうしたんですか?」
と尋ねた。
宏は「腰が痛くて痛くて」と答えた。
「腰が痛い?」
マリーは宏の腰の辺りを見ると、こめかみ辺りに力を入れ、指をパチンと鳴らした。
次の瞬間、宏の腰痛は消え去った。
「これで大丈夫ですか?」
「あれ?治った」
「人の体なんてこんなものです」
宏はすっかり元気を取り戻した。
加奈子に近くのショッピングモールに行くように頼み、車を走らせた。
ショッピングモールに着くと、宏は
「ちょっと待っておいて」
というと階下に降り、ドーナツとコーヒーを人数分買い二人に渡した。
そのまま、食べ終えると一同顔を合わせ、これからどうするか話をした。
マリーが
「SNSの更新用の写真を撮らないといけません」というので、
宏は
「じゃ、ビリヤードでも行ってハスラー風に写真を撮ればいいんじゃない?」
というと、マリーは
「さすが宏さんですね」
と乗り気になったのでビリヤード場に行った。
写真やら動画をとりながら数ゲームプレイし、ついでにダーツもやりながら写真や動画を撮影した。
ゲームは誰が強いわけでもなく、勝ち負けはほぼほぼ互角だった。
ゲーム終了後にマリーは
「今日は休みですので、母のスナックに来ませんか?」
と尋ねた。
加奈子は二人を店に送り届けると車を置きに自宅に戻った。




