余興のトランプと電波発生装置
「多分、なんか変なものを持ってると思う、高周波の美顔器とか健康器具かなんか扱ってて、それを応用したような電波の発信機を持ってると思う」
樋口もまた、アリサを見た。
あどけない顔で、アリサは微笑み返して言った。
「えっと、またなんか頼んでいいですかね?」
友山が
「どうぞ」
と言った。
アリサはカシスオレンジを作りはじめた。
樋口はしょっぱく、コクのある柔らかいナッツをかじりながらモスコミュールを飲み
「そうなのか?」と友山に聞き返した。
友山は樋口を向くと
「これまでのセールスレター絡みの仕事で会った人間の話とお前の話の内容を考えたら、整合する部分が多いよ」
と樋口に言った。
アリサは話の間を見て
「トランプでもしますか?」
と言ってきた。
樋口が
「あぁ、いいよ」というと
樋口、友山、自分にトランプを配り始めた。樋口は何をやるのかと思ったらアリサは
「ババ抜きをします。私これしか知らないんですよね」
と舌っ足らずな声でいうとババ抜きを始めた。
トランプはたいがい、樋口か友山が勝った。
アリサは
「私、ゲーム弱いんですよね、オセロでもなんでも」
樋口は
「将棋は?」
と尋ねた。
アリサは「将棋?」というと笑ったままだまりこんだ。
樋口は別の話に変えようと思って
「このあたりに住んでるの?」
と尋ねた。
「須磨」と答えた。
友山は
「いいね、すぐ泳ぎにいけるね、男は?」
と尋ねた。
アリサはすっとぼけた表情で
「んー」
と言った。
さっきからアリサは随分グラスを空けていた。かなり酒に強そうだった。
なんだかよくわからないけれど思いの他三者の波長は近かった。
樋口は唐突に
「電磁波どう思う?」
とアリサに尋ねた。
「電磁波?電子レンジみたいなヤツですか?」
「あー、そうそう、冷蔵庫とか、テレビとか」
「あんま、気にしないですね」
友山はアリサに言った。
「ホント二十歳って若いね、肌の事何も気にしなくていいね」
「そんな事もないですよ」
といい、追加のナッツの小皿をテーブルに置いた。
「この店って衣装とかは着てくれないの?」
「あーうちはそういうのやってないですね」
と困惑気味にアリサは応えた。
「ダメじゃない、衣装着ないと」
友山は言った。
アリサは苦笑いしながら
「やっぱそうなんですかね?」
と返した。
それから友山は樋口を向くと
「お前、前に電波装置はユダヤジョークみたいな理屈で動くって話してたよな?」
樋口は
「あぁ」と答えた。
「日本でな、ユダヤの話をするのは誰が居ると思う?」
「教会とマルチか?」
「そうだな、歴史好き、都市伝説好きもいるけど少数だな、ま、教会はそんな電波は飛ばさないだろう、となるとマルチだ。
ああいう、自己啓発の理屈は元を正せばフリーメイソンだよ、神秘主義的な啓蒙思想者のネットワークだ、フリーメイソンは古代イスラエルの石工の集まりだ、ま、結局ユダヤだな。」
「ああ」
「これで、分かったな?電波の出元はマルチだ」
そういうと友山はアリサを見ると
「キムチ食べたい」と言った。
樋口は
「キムチもチヂミもマルチに売ってもらえ」
というと友山は
「美顔器ベースの電磁波発生装置もついでに買わないとな」
と答えた
アリサは
「今度来るまでキムチ買っときますね」
と答えた。
樋口が時計を見ると日付が変わっていた。
客は樋口と友山だけになっていた。
カウンターにはスマートフォンが置かれていたが特に番号は交換されず、ショップカードが渡された。
会計を済ませ、狭い階段を降り、アリサに手を振って別れると通りに出て
それぞれタクシーを拾い帰途についた。




