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悠久ラビリンス  作者: 手乗文鳥
本章

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19/29

169号線のローラーコースター

-27-


駐車場から吉野を離れ、しばらくたち奈良に戻る車中で加奈子は尋ねた。


「麻莉はどうだったの?」


宏は山あいを走る車の窓から、雑木林の向こう遠くに見える山の斜面下の夕陽に染まる田んぼを眺めながら


「さっき言った通りだよ」


と答えた。


「私が聞いてるのはそんな事じゃないのよ、麻莉はどうだったかって聞いてるのよ」


宏はのらりくらりかわそうとしたが加奈子は執拗に追及した。

加奈子の勢いに押された宏は結局、一部始終を話さざるを得なくなった。


加奈子は最初、普通に聞いていたが白い頬が目に見えて紅潮してきた。

宏からは驚くほど、細部に至るまで根掘り葉掘り聞いてきた。


段々と宏は腹の下あたりがムズムズしてもっさりと重たくなってきた。


加奈子もハンドルを握る手が少しおかしくなってきて、腰のあたりから下をソワソワとシートに強く押し付け始めた。


「ちょっと疲れてるみたい。少し休みたいな」


というと進路を切り替え、山の斜面下の道に降りると


先程に山の隙間から見えていたパステルでメルヘンなホテルの駐車場の短冊カーテンをくぐると、車を停めた。


それから宏を方を向くと、忌々しいものでも見るかの様なえげつない顔で、蔑むような視線を向けてえずき始めた。


「大丈夫?」


宏が尋ねると、しばらく加奈子は咳き込んでいたか、落ち着くと先程と打って変わって何か感情の織り込みが済んだように微笑んだ。


それから紅潮したままの顔でくりっとした潤んだ瞳を宏に向け、まだ荒い呼吸を抑えながら


「宏くんね、麻莉にそんなことしたのなら私にはそれ以上の事をしないとダメなのよ。それに私は見返りなんか要求したりしないのよ」


と言った。


宏が黙ったまま見返すと、収まりがつかないといったような表情で


「別にね、ここであなたを降ろして帰ってしまっても構わないのよ」


というと宏の肩をぐっと押した。

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