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悠久ラビリンス  作者: 手乗文鳥
本章

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11/29

広告ライターの率直な独白

広告ライターの男、樋口は以前より、世界で可能になっている各分野のテクノロジーと、実際に可能として世間に認識され、受け入れられている各分野のテクノロジーには相応の開きがあると考えていた。


そういうと、何やら都市伝説やオカルトめいた話になってくるが、例えばクローン技術はあるが、クローン人間は開発されていない。


実験の末に可能であっても、問題だらけでやらないそうだ。 一般的にはそう言われているが実際どうだろうか?


また、広島型原爆千個分のエネルギーを作れるなら震度6から7の地震を人工的に起こすことは可能だが。


報道などでは人工地震はありませんという。 逆にいえばこういう報道で人工地震があることを世間に徐々に浸透させていってるのではないだろうか?


未公開の技術は特に軍事などインテリジェンスに関わる部分で多いと思っている。


これはまだ納得しやすいだろう。


ステルス戦闘機も最初、実験中の時は誰も存在を知らないので未確認飛行物体と誤解する人もいたそうだ。


その分野で特に樋口が存在を疑っているのが特殊な電波装置だ。それが作られその実験が行われているんじゃないかということだ。


世界を一つの映画の舞台の様に捉え、シナリオを作り、どこかから電波で人の脳に働きかけ、思考を読み取り、意思をコントロールしたり、思考やイメージや感情を送り込んだり、


それをあたかも自分が考えたかのようにすることもできて、気象など自然環境もコントロールできる技術だ。


この様なものがあれば、現実に映画の様な事が起きても普通に説明がつく。


-13-


日が進み、大和西大寺駅での銃撃事件の詳細が明らかになるにつれ これは報道されている通りで、それ以上なにか裏があるような事はないだろうと樋口は思った。


夜、マンションのベランダに出ると、神戸の港を通る船の灯りを眺めながらジャーナリストの様に考えをまとめていた。


事件の構図は極めて明快であった。 しかし、樋口には拭えない違和感があった。


それは事件の起きた場所だ。 それは以前に自分が領域への侵入を認識することになった、奈良駅周辺からさほど離れてないからだ。


樋口はもう一度、以前、自分に起きた事( 続・領域侵入の事例)を考えてみた。


自分がシナリオの中に置かれた気分になり、同じ遭遇ループを繰り返し、次の事態が展開し、また最初のループに戻る、そして、またそれを繰り返しては次の事態が起き、最初のループにもどる。


アクセントをつけるように細かいトラブルが増え、次に少し大きな事態が起きる。また繰り返して最後に深刻な大きな事態が起きる。


そして終息、エクソダスという感覚と共に脱出。 樋口は職業柄シナリオに敏感だ。


自分の経験したことはあまりに鮮やかなシナリオになっていた。

ループ物の映画のシナリオに出てきそうなくらいだ。

しかも、最後に脱出をエクソダスと感じる完璧なオチまでついている。


これはそう言う映画を参照に誰かが電波装置を通じて状況を演出して、自分にデモンストレーションしたように感じられるし。


そう言う事をやろうとする発想、ホントにやること自体が極めてユダヤジョーク的に思える。


樋口は自分のこの経験談を気心の知れた仲間や友人にしたことがある、すると本当の話をしているのに場の雰囲気が徐々に胡散臭くなっていき最後には変な笑みが出てきてしまうのだ。


何か自分がユダヤジョークを言っている気分になってくる。


このあたりからも自分の直感は間違ってないような気になる、そもそも映画産業自体が初期はユダヤ資本の影響が大きく、シナリオのモチーフも辿れば旧約聖書に行き着くものも多い。


旧約聖書は大昔から多くの人が信じて、その教義に従って行動し、その文化圏が世界的に大きな影響力を握るまでになったので、最初はただの作り話だったかもしれないけど、後の時代から振り返った時に、世界のコンセプトを知る上の重要な資料になったという不思議な経緯を持っている。


話が少々脱線した。

樋口が言いたい事は今度のこの事件も、誰かが領域に侵入し、なんらかの小さなイベントや事象を通過した後の最後の大きな事態として起きたことではないかということだ。


少なくとも事件自体が普通に社会で起きた現象として考えると、やや強引で不自然に感じられるのだ。


事件そのもののあてこすり的な性質を通じて誰かが事件当事者や関係者とは一切なんの関係もない誰かに領域侵入をあてこすったように感じられる。


しかも規模的に領域侵入した人間以外にもわかるほど最後に発生した事態が大きい。


似た経験を持つものなら、この事件に樋口と同じ印象を持つだろう。


樋口はこれ以前にも似たような経験をしたコロナパンデミックだ。

この時、樋口は自分の身の回りでシナリオ的な複線を確かに確認していた。


樋口は2016年の三月半ば頃から、マスクをつける人が少しずつ増えていってるなと感じていた。


年月日まで覚えているのはそのくらい違和感があったからだ。


街ゆく人は老若男女問わずそうだし、特にコンビニエンスストアの店員なんかはマスクをつける人が急増して、妙な圧迫感を感じていた。


その頃ならまだ接客するのに顔を隠すことに違和感を感じる人も多かっただろう。


樋口はそんな世間の変化に違和感があった。

しかし、その当時、誰に聞いても、そんな事はない、以前と変わらないという。


樋口にそう返答した何人かの人もその後マスクをつけるようになっていき、さらにその人たちは自分がつけていてもマスクをつける人は増えていないというのだ。


誰かのシナリオに電波的に操作され、マスクをつける人が増えていったなら、当然マスクをつけた人が増えたということを気にする人はいない。 そういう感情を持つことはシナリオ外だからだ。


その他にはパトカー、救急車、消防車などがサイレンを鳴らし、ランプを光らせ、走っていくのを見かける回数が増えた。多い時は連日だ。


これもまた何かの変化や不安を印象づけるのに映画でよく見られる手法だが、なにか自分に対するアラートの様な印象を受けた。


突然走りだして自分を追い抜いていく人も増えた。


この走る人は、人物はみな違う人たちなのに思わず笑いそうになるバタバタした走り方をするという特徴が共通してあった。


そして皆コミカルさと裏腹に殺伐とした印象を受けた。


木も枯れるし、伐採もされた。 自宅マンション前の木もこの頃伐採され、通りの街路樹は枯れ、神社の大きなクスノキも公園の大きな松の木も枯れて伐採された。


そして樋口宅の周りでは近隣トラブルが増えた。


そして2020年にコロナが起きた。


中国で新しい風邪が発生したと聞いたとき樋口は直感的にこれは全世界に広がると思った。


そしてなぜかそろそろそういう事が起きるのにタイミング的にちょうどいいという変な感覚があった。


結果、樋口が考えた以上の惨事が訪れ、自身も含めほぼ全員がマスクをつけるようになった。


そして今、惨事は終わりマスクは激減した。 今、コンビニエンスストアの店員もほぼマスクをしていない。


この状況を見て、やはりマスクは自然に増えたわけではなく、全てはシナリオで、今つけている人が減ったのはコロナパンデミックというシナリオがエンディングを迎えたからだと感じている。


コロナウイルスも中国、武漢の研究所から意図的に漏らしたという陰謀論があるが、樋口はウイルスの流出という状況が電波装置によって現実世界に演出されたものだと思っている。


シナリオの元はおそらく映画の「バイオハザード」だろう。


こう言ってしまった時の論理の飛躍感、バカバカしさ、これもまたユダヤジョーク的な構造をもっている。


バカバカしくなる、胡散臭くなる。 話が飛躍する。

これが電波装置の存在をカムフラージュする最大の論理的ギミックなのだ。


樋口は仕事柄色んなタイプの人と会う。 その中にはやはり妙な怪しい人も当然混じってくる。


考えて誰かと思い出せないが自分がどこかで境界線上の人と接触し、どこかで領域に侵入し、自分がなんらかのトリガーを引いたのかも知れないと思っている。


シナリオとして発生した事態、事件は現実として自然に発生していて、全てその中で説明がつく。


* * *


銃撃事件もコロナも、電波装置の演出により作られたものなのだ。

この仮説の不謹慎さ、バカバカしさこそがユダヤジョーク的で何よりも重要だ。


裏付けのため必要な調査は今後何か起きた際は、その場所周辺を測定機で電波の存在の有無、強弱、発信元を調べる事だ。


* * *


宏はまた河童の奇妙な夢を見た


その中で、カッパは淡路島で畑に忍び込み、玉ねぎをバリバリとかじっていた。


「甘い、実に甘い。こんな玉ねぎがあるのか。これが食べられないイヌとは哀れな生き物だ」


「ふぅ」と一息つくと


畑の主が現れ


「こらー!おまえなにしとー」


と追いかけてきた。


河童は振り返ると


「陰謀論がバカバカしく見える方がこちらには都合が良い。

誰もシステムや日常が機械的に操作され歪んだり、侵食されているなど考えたくないものだ」


とつぶやき大気中に蒸発していった。

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