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【後編】
ホーム非常灯がパッと点き、遠くの清掃スタッフが苦笑。
「兄ちゃん、ここライブハウスちゃうで」
頭を下げる。「すんませぇん」。
スマホ残1%。
通知の波――
『怒ってる?』『大丈夫?』『また埋め合わせするし!』
息を吐く。怒ってる相手は俺自身。
返信は短く。
「怒ってへん。気いつけて休みや」
送信「ポン」。直後、電源OFF。
始発まで二時間。
ベンチに腰掛け、缶コーヒー(温)をドラム替わりに「カン、カン」。
「空回りしても 今日終わらすしか ないやんな」
白い息と混ざる。
東の空が群青から橙へ。
掲示板が始発数字を点灯。
吊革に掴まり、窓へ映る自分へウインク。
「ほな、きょうもやったるで」
胸ポケットの名刺束――社会と繋がる細紐。
電車が動き出し、俺のリズムも再生。
足元で空き缶が転がり「カラリン」。
それが今朝一番の鐃鈸。
(後編 了)