表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

【中編】

 定時のはずが終業チャイムは遠い。

「急ぎの資料、今日中な」

 部長ボイスに空調の風音がハモる。


 残業承認ボタンを押す指が「カチッ」じゃなく「ガチャン」と手錠(てじょう)の音に聞こえた。


 22時。退社、駅へ猛ダッシュ。


 改札――またタッチエラー。

 駅員に問いかけられる前に声張る。


「チャージ不足ッスよね! はい! 分かってます!」

 チャージ機で千円紙幣が戻る「ピロッ」。


 ホームに上がると発車ベルが涙声みたいに「ポロロ…」。


 電車の揺れは疲労をシェイクし、昼に食えなかったコンビニおにぎりが内臓でローリング。


 彼女の姿はない。既読もない。


 乗り換え駅で事件発生。


(うわ、ケータイない!!)

 書類と一緒に職場ロッカーへ置き忘れた。


「終電まで30分」

 掲示板のLED数字がカウントダウン。


 会社へ逆走、裏通用口イン。

 警備員が苦笑い。「また忘れ物?」

 拳を胸にドン。


「ハイ! もう(のろ)いっす!」


 闇のロッカー室。棚に放置スマホ発見。

 画面点灯、通知1。

 彼女(かのじょ)『今日は友達と飲みー! 返信いらんで!』


 空笑い。


(はぁ……俺だけ深刻(シリアス)モードかい)


 バッテリー残12%。ケーブルはオフィス。


 電車あと10分。走る。

 倉庫ドア「ガタガタ」、階段「ダダダ」。

 足音がヒップホップのビート。


 駅到着と同時に終電ドア閉まる「プシュー」。


「……ウソやろ」


 まばらなホームで呟く。

 選択肢、的外(まとはず)れ三択(タクシー/ネカフェ/徒歩)。

 財布はチャージで空。


 スマホ残5%。

 画面が暗転→再点灯。

 彼女『電車逃した(笑) ネカフェ泊まるわー』


 怒りと脱力(だつりょく)がグラデーション。

 叫ぶ。


「ふざけんなぁぁぁ!」


 夜風が返事「ヒュオォ」。


(中編 了)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ