351日 悲しいけど…
「お待たせしました。ラーメンと半チャーハンセットです!」
「ありがとうね。」
栗本の中心街の定食屋。寂しい雰囲気とは裏腹に味は優しくて暖かい。まるで昔食べたかった味だ。
「ところで、昔あそこで何があったの?」
「孤児たちの話だよね…」
「それは私から話するね。君たちは…栗本と聞いて何を思いつく?」
「墓地と刑務所。」
「それと悲しい街。」
「そうだよね。実際正解。ここは悲しくて、辛い街。昔この町は孤児と自殺志願者が転生して集まっていた。」
「結花さんもそうだね。」
「楠さんか…でも、あの子は強かったから高嶺さんと一緒に抜け出せたの。こんな悲しい場所の中の温かいところへ。でもね、私たちにはそれができなかった。」
「…ところで、どこかで君を見たことがあるんだよ。飛翔もない?」
「僕もありますね…」
「…無理もない。私は昔、人を殺したからな。」
「そうだね。そろそろ教えましょう。」
「私は千草クレア。そう、殺人鬼よ。」
「…あの日の事件の犯人…」
「あの日の事件って…?」
「飛翔も知ってるでしょ。孤児の拷問。」
「あのおぞましい事件か…」
「でも、私たちは罪を軽くするようにお願いしたの。そしたら罪が軽くなったの。」
「私は確かに殺してしまった。でも、その子はもう死ぬはずだったの。救うべきだったのに私が放置して殺した。でも、梨穂や葉子が事実を話してくれたからここにいる。」
「…クレアが殺したのは…私たちから食料も住む場所も盗んで自分のものにした孤児だから。」
「それは孤児として言っていいのかな…」
「なんだか自分勝手な気がする…」
「…あの子は目立ちたかったの。誰かに気づいてほしかったの。でも、誰にも気づいてもらえなかったの。その結果…私が見つけた時には弱ってたの…すぐ死んでしまうぐらいに。それを放置した結果よ。拷問でも何でもない。」
「それで…」
「刑務所にいたわ。でも、あそこで過ごすよりずっと楽だった。まぁ、あの現状を見て拷問していたのが私だと思われたらしいけど…本当は違うんだよ…」
「泣かなくてもいいんだよ。もう私たちが分かってるから。」
「…それでそのあとは…」
「刑務所は収容中に一回壊れたの。飛翔くんの兄のせいでね…いいの。私は出るべきじゃないと思ったし、何よりその時の刑務官が出てもいいんだよって言ったんだ。それを聞いて違うと思った。そのあと刑が軽くなったんだけどね。」
「…それはよかったのか?」
「そうだよ。だから今ここがある。そして私がここで喋ってる。もともとここは老夫婦が経営してたんだけど…弟子入りして少ししたら私の店になっちゃった。」
「そして私が来て、友達を呼んだってわけだ。そろそろバスの時間だから…お金は置いていくよ。」
「…ありがとう。行ってらっしゃい。」
帰りのバスは、少しだけ暖かった。




