350日 町中華
「どうだ真鈴、調子はどうだ?」
「…今日は人が多いんだよ。初音はどこに行くんだ?」
「ちょっと夜見川まで。途中で千成と理世も乗ってくると思うんだ。」
「ということは魅華子も乗るってことだよね…乗り込めるかな…」
真鈴と初音は同級生らしい。だが、なんで一緒にならないのだろうか。
「日吉台に到着します。このバスは栗本経由の夜見川行きです。」
「3人お願いします。」
「はい、ちょうど。」
バスはしばらく走っていると、目的地に到着したみたいだ。
「やっぱりここですか…」
「そう、栗本。今日は私と飛翔、あとは沙恵の3人だね。」
「珍しい組み合わせだね。葉子とか吉乃とかいないんだもの。」
「まぁ、あの子は予定があるからね。」
「…まぁ、提出してるもんね。今日は結花さんも墓参りですし。」
「その場所って…」
「あそこの共同墓地に…」
「あぁ、刑務所の方でしょ。今回は逆側よ。」
「逆側って何があるの?」
「…あった。ここだ。」
「ここって…森でしょ?」
「そうだね、森だね。」
「…森になっちゃったんだね。昔ここは何もない空き地だったんだよ。この空き地で私と葉子は出会ったの。」
「え…」
「転生前は寂しかったなぁ。親も帰ってこず、誰も帰ってこず…ここはそんな育児放棄された子が集められていたみたい。でも、ここは辛かったな。」
「それってどういう…」
「葉子はきっと戻りたくないし、私も少し前まで戻れなかった。出会った友達がみんな餓死したから…」
「餓死って…どうしてこの場所で…」
「…昔、酷い孤児がいたの。他人のものも自分のものにして、逆らったら殴るような…そんな人がいたの。」
「…ご飯を奪って…場所を奪って…なんだか見えちゃったな。」
「僕にも見えた…だからここが森になったのかな…」
「そうだね…」
この孤児の話のあと、何も話せないぐらい空気が冷えてしまった。再び空気が温まったのは中心街に行ったとき。
「ここが栗本の中心街か。」
「懐かしいね…でも、分かり合える仲間は…ほぼ残ってないよ。」
「葉子さん以外にもいるのかな?」
「一人だけ。そうだ、この町の食堂にいるって聞いたから…立ち寄ろうか。」
食堂に入ると、元気な声が聞こえた。
「元気だった?」
「梨穂、去年ぶりでしょ。」
「もしかして…君が梨穂の知り合いなの?」
「そうだよ。あぁ、君たちは初めましてだね。」
「そうだね。梨穂の友達の…」
「沙恵さんと飛翔くんでしょ。葉子も来ればよかったのに…」
「魔王に今年の卒業試験を提出してるから今日は無理よ。」
「仕方ないね。じゃあ、みんな私のお勧めでいいよね?」
「お願いします!」
「…結構いいじゃない。それでさ、さっき言えなかったんだけど…その時代の話ってできる?」
「転生した後の話ね…いいわ。でも、ご飯が届いてからね。」




