347日 もう疲れたよ
「みしろが死んだ!?」
「すぐに初音さんを呼んで蘇生しましたが…」
「…今つむぎちゃんはどこにいるの!」
「飛翔さんを追いかけて…路面電車の中です!」
「…この便にはいないから次の列車だね…なんで止まったんだろう…」
「飛翔が乗ってる電車…安全確認中だわ!」
電車は駅に着く手前で安全確認を取っている。その間、もしかしたら彼女に追いつかれる…そう思うと早く降りたかった。
青い空が見える。これでもまともに生きてきたのだから…最後は天が微笑んだのか…死期を悟ったその時、安全確認が取れたので電車が発車する。
「…ここで降りよう。ここから亀川なら場所は知ってる。」
僕は電車から逃げた。がむしゃらに逃げた。彼女の束縛と恐怖に怯える生活から僕を守るために逃げ続けた。
思えばここまでの道は遠かった。その間に何人に助けられたのだろうか。何人に迷惑をかけたのだろうか。そして、まだ逃げる。大きすぎる狂気的な愛から逃げる。
「もうすぐ…安寧の地だ…」
道を駆け抜ける僕の力は…疲れと安心感からか少しだけ抜けた。抜けた時、後ろから声が聞こえた。
「飛翔さん!」
「…飛翔さん…怖かったですよね…大丈夫です。お家に帰りましょう…」
僕は何も言えなかった。いや、言おうと思っていた言葉は多かったが、なぜか口が開かなかった。それほど僕は疲れていたのだろう。
あれから何時間寝ていたのだろうか。僕が起きた時に感じたのは久々の家のベッドのふわっとした感触だった。しかし、家に戻ったはずなのに口が思ったように開かない。ありがとうともごめんなさいとも言えなくなった。ただうめくだけだと自分でも感じる。
「もっとわたくしがしっかりしていれば…本当にごめんなさい…」
「結花さんのせいじゃないわ。私のせいでもあるし、彼の自業自得でもあると思うわ。」
「…私が紹介しなければ…ごめんなさい…」
「ひよりちゃんも悪くない…悪くないよ…」
「待って…飛翔がスマホを指している…」
「あ、あぁ…そんなことを思っていたのですね…」
書いていた内容はこうだ。迷惑をかけてしまったこと、身体も心ももう疲れてしまったこと、本当は一杯言いたいこともあるし、お礼も言いたいが、おそらく声が出なくなっていること。それでもみんなを憎むわけではないこと。そして最後に…
「バラにはとげがあるのに僕は綺麗な花びらにしか目がいかなかった。その下にあるとげにわかっていたのに…僕はなんて愚かなのだろうか…そんなこと言わないでよ…」
「飛翔さんは悪くないのに…これはあんまりですわ…」
「…飛翔さんをどうしましょうか。私たちも色々ありますし…」
「…大丈夫ですわ。きっと数日でよくなりますわ。大事なのは…この悲劇を二度と起こさないことだと思いますわ!」




