343日 【定期】愛が重い
「8月になったから…忙しくなるなぁ…」
「そうなんですか!?」
「そうなんだよ…今年の学食コンテストの運営や試験問題を作らないと…そのための日程とか指導とかもいろいろ…」
「そうだったんですね…」
「あれ?飛翔さん?誰と電話しているのでしょうか?」
「つむぎちゃん、毎日のように電話するから大変なんだよ…」
「どうして…どうして大変なんて言うのですか?」
「…飛翔さん、わたくしの愛って重かったのでしょうか?」
「結花さんの愛は重くないよ…少なくとも今は…」
「私はあなたのためを思っているのにですか!?どうして…ねぇ、どうしてですか?飛翔さんは私だけを見てくれればいいんです…」
「…わたくし、ちょっとだけめまいがしましたわ…」
「大丈夫、僕も辛いです。みんなが好きだから。」
「今、行きますね。」
他愛もないただの長めの電話で終わるはずだった二人の会話は、神楽阪の住宅街での話につながる。チャイムが鳴ったからだ。
「…すみません!今から宿泊は大丈夫ですか?」
「ちょっと今日は厳しいですね…」
「嘘をつかないでください。」
「えぇ…」
「飛翔さんを隠したいのでしょう?あなたは私たちの障害物です。」
「その物言いはあんまりじゃないですか!?」
「いえ、本当です。どうして邪魔をするのでしょうか?」
「前から結婚して同居もしているからです。」
「そうですか…でも、隠してるのはわかります。飛翔さん?いるのはわかってます。出てきてください。」
「すみません、勝手に入らないでください!」
「…結花さん、あなた嘘をつきましたね。もう飛翔さんがいないじゃないですか。」
「そうですね…ごめんなさい…」
「…本当は時間稼ぎして、私から遠ざけたのでしょう。それなら…あなたを殺します。」
「やめてください…やめて!」
「ちょっと待ってよ。つむぎちゃんは何をしようとしているかわかってるの?」
「え?邪魔者を殺すだけですよ。あぁ、あなたもでしたね。倉田真音さん。」
「そうね。でも、もし飛翔がいたら彼を殺してたでしょ。」
「そうですね。だって私と飛翔さんですもの。というか軽々しく彼の名を呼ばないでください。気持ち悪いです。」
「…それじゃあ教えてあげる。飛翔ね、あなたが来るとわかってから怖かったみたいだよ。」
「なんでそれを知っているのですか?」
「結花さんから電話が来たの。」
「それで囲みに来たのですか…許しません。あなたたちをまとめて殺します。」
「そうか。殺すのか…悲しいが、俺が笑っているうちはやめてくれ。」
「あなたは誰ですか?」
「俺は中村浩介。しがないヤクザだ。」
「やっぱり来てくれたんだ!」
「俺は女性に手を出したくない。だから、笑っているうちは殺さないでくれ。」
「…そこまで言うなら仕方がないです。ですが、飛翔さんの居場所を教えてください。」




