318日 ゆるく行きたかった
目が覚めれば、よくわからない車の中だった。あぁ、拉致されたんだと命の覚悟をしていた。しかし、流れていたのはその雰囲気に似合わない可愛らしい曲とラジオのDJの声だった。
「お送りしたのは夢川奏のsurpriseでした!」
「あ、飛翔起きたみたい。おはよう。」
「葵ちゃん…どうしてこんなことを?あと…千明さんはどうして?」
「そりゃ避難ですよ。空襲警報、知らなかったの?」
「え…」
どうやら西町周辺で空襲警報が鳴ったらしい。その警報のあと、実際に空襲があったようだ。しかし、誰がこんなことをしたのだろうか。魔王に聞きたいが、電話がない。
「電話ならこっちにあるよ。」
「その声…もしかして!?」
「お久しぶり。巫女になった水橋凛だよ。覚えてるよね?」
「あぁ…あの時の二の舞はないよね…」
「ない、たぶん。」
「それあるって言ってないかな?結花さんも帰ってきたら泣くぞ?」
「あと、運転してるのって誰?」
「運転役の斉藤昇です。今回は僕が運転しますね。」
「君…浜大の法学部でしょ?」
「僕は文学部ですよ。ひなた先輩がお世話になってます。」
「ありがとうね。ところで凛は学校行ってるの?」
「浜大の文学部。巫女と両立できていいんだよね。」
「僕と同じだから呼んだんだよ。」
「…ところで、あと一人足りないと思うのは気のせい?」
「そうね。どこにいるんだろう?」
「わからないときは寝ようではないか。」
「そうだ、あそこに寄ろう。」
車は山の中へ向かっていた。道中のドライブインで一人乗っけることになってるらしいので、到着してすぐに探した。
「どこにいるんだ?」
「もしかしたらここに!」
「葵、それは似ているけど他の作品だぞ。」
「凛、ここにいるのは?」
「それも他人だし…何より誰だよ。」
「私ハーレーで…」
「帰れ!」
「千明は見つけたか…ってそれクマのぬいぐるみじゃん。」
「これにふじわらって…」
「うーんとね、この作品は別に日常を淡々と描いているんだけどね…そうじゃないんだよ…」
「過度な期待されているところ悪いけど…この女の子は誰?」
「あ、それ撫子じゃん。」
「あ、どうもお久しぶりです。試験は出られますよね?」
「あー…要相談。」
「えー…」
「みんな大変だよ。目的地のキャンプ場にライオンと熊とチワワが100匹流れたらしいよ。」
「うわなにをするやめ…くぁwせdrftgyふじこlp!」
「凛が死んじゃったじゃねーか。ばかやろー!」
「もうこのキャンプ引退するわ。」
「それができると良かったんだけど…見て、神楽阪。」
「え…」
そこに写っていたのは戦火に焼かれた町々だった。公園も駅も、家も何もなかった。
「嘘…でしょ…」
「嘘なんかじゃない。こうなってしまった理由はわかってる。でも、その親がいない。」
「親って?」
「…実はそのキャンプ場に親の手がかりがある。」




