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314日 小説


「5月14日、今日は何もしない日を選んだ。」


この文章は、昔の小説の始まりの一文だった。そう、あの小説は僕に希望をくれた作品だ。久々に思い出したので少しだけ感傷に浸ることにしようか。


「都会の喧騒に疲れ、僕は何をすればいいのかわからなくなった。そんな中、ふと思い出した言葉がある。」


何もしなくていい、生きているだけで価値がある。これは僕の友達が言ったことだ。この小説を知って、一緒に読んだ…あの頃がとても懐かしい。でも…その友達はここにいない。


「人ってどうして争うのか。傷つきたくないのに。」


都会の喧騒に疲れた小説の主人公は、日々そう思いながら仕事場に行っていた。満員電車に疲れ、上司や同期との人間関係に疲れ、気が付けば枕が濡れていたこともあった…と書いてあった。


「…懐かしい小説だったな。でも、もう一度ここに生きている意味が分かった気がする。」


この小説に出会ったのは中学の時、その時も人間関係に疲れ、家族とも不仲で…居場所がないと感じて死にたいとさえ考えていた。だが、この本はそんなことを考えながらも何もしないという考えを選んだ結果生きるという選択肢を選んだ。その主人公の姿を見て、僕も気が楽になった。


「あの子…もういないんだよね。うん、知ってる。知ってるんだよ。全て。」


一緒に読んだ友達は、信号無視のトラックに轢かれて亡くなった。中学3年の冬、受験発表が終わった帰りの事だった。僕はそれを教室で知った。


「あれは仕方なかったんだって。警察はそういったけどさ…」

「でも、本当は殺されたんじゃないかって…そう思いたいんでしょ。」

「沙代里さん!」

「私には確認することはできない。でも、身近に確認できる人がいるんじゃないかな?そうだよね…るるさん。」

「バレちゃいましたね。私は現世とここをつなぐ…門番とでも言いましょうか。その友人さんの死因についてを調べたいのですね?」

「…その瞬間を見せてください。」

「見せなくても大丈夫ですよ。」

「どうして…」

「…私、目撃者なので。」

「そう、ちなみに私も見てた。あのトラックの運転手はね…信号無視してた。」

「でもあれはね…信号無視をして逃げても仕方ないの。だって…その運転士、死んでたから。」


その瞬間、背筋が凍る。


「冗談だと思っても仕方ない。でも、これは本当なんだ。」

「悲しいよな。だからひき逃げっぽくなってしまった。本当は止まってたはずだと思う。」


悲しい記憶は残り続けるが、それを埋め尽くすほど人生は長いのだろう。だから人は前に進んでいく。疲れたら何もしなくたっていい。その分あとで動けばいいのだから。小説の最後にはそう書いてあった。そう、何もしなくたって何かできることはある。希望を失って死ぬまでに。

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