「俺がこの街救う理由(わけ) ~美少女の提案で始まった日々~」
序章: 遭遇と提案
突然だが、俺、成瀬正貴は、秀才だ
一応この桜田高校においてもしっかり6番目くらいの成績を誇り、この事に関しては、おそらくきっと教師も一目置いてくれているだろう。
てか、一目置いてくれ、、、
こう聞くと、いかにも充実した日々を送っているように聞こえるだろう、、
しかし、答えは否、俺は、いつも冷静な表情を崩さず、なるべく問題を起こさぬよう、誰とも話すことなく日々静かに過ごしているのであった。
そんな、平和なある日の昼休み、俺は購買部で足早にフルーツ牛乳とカレーパンを手に取る。
このルーティンだけはやめられない辞めたいんだけど、やめられない。
実際問題、本当は食堂でカレーを食べたいのだが、誰かと一緒でないと食堂に行くことさえ億劫だった。
だって、ぼっちってばれちゃうじゃん
ただカレーが好きだという自分としては、どうしても諦めることができず、
結局今日もまたカレーパンを一人貪ることになる。
「まあ、これでいいか」
自分にそう言い聞かせ、フルーツ牛乳とカレーパンをレジに持って行く。
ちなみにぼっちとは言ったが、俺だって顔立ちは悪くない、むしろ自己評価では「A」と言ってもいいだろう。しかし、どうしても他人うまく話せないというか、本音でみんなが話さないこの学校という環境に馴染めず、正直惨めな自分が、いつも心の中で引っかかっていた。
我が学舎、2ーCをそそくさと離れた放課後、俺はいつものように一人で校門を出た。
別に残っていてもやることないしね
帰宅後の計画を練る帰宅坂道を下る途中、何の気なしに周囲を見渡していると、視界の隅に一人の少女が現れた。長い黒髪が風に揺れ、大きな瞳が正貴をまっすぐに捉えている。
今だから言うが、その瞬間、俺は心の奥底で何かが揺れるのを感じた。
「こんにちは、成瀬正貴くん」
えらい美人がそこにいた、、、
彼女の声は柔らかく、まるで心地よい音楽のように俺の耳に響いた。
「…こんにちは」
正貴は無意識に返事をしたが、自分でもなぜそうしたのかわからなかった。
なぜ、俺の名前を知っているのかという疑問が瞬間的に湧くことができないほど、
何故か、彼女の姿から目を離すことができず、気がつけば彼女に引き寄せられるように歩み寄っていた。
「あなたを全てにおいて一番にしてあげる」
突然の言葉に、正貴は驚いて言葉を失った。何を言っているのか理解できなかったが、彼女の瞳にはかつてみたことがない程、真剣な光が宿っていた。
「え?」
正貴が戸惑いながら問いかけると、彼女は静かに微笑み、坂の上を指さした。その指の先には、正貴が幼い頃によく訪れた『光栄商店街』が広がっていた。
「でも、そのためには条件があるの。私と一緒に、この光栄商店街を復興させるのよ」
正貴は呆然とした表情で彼女を見つめた。商店街の復興?なぜ自分が?彼の心に次々と疑問が浮かぶ。しかし、少女はその疑問を見透かしたかのように、まっすぐ正貴を本気の眼で見つめていた。
彼女が指した先、光栄商店街は小学生の頃、親に連れられてよく訪れた場所だった。懐かしい店先や笑顔の店主たち、そしてあの頃のよく商店街で遊んだ子の姿がぼんやりと脳裏に浮かんだ。しかし、俺自身、中学生になってからは、専ら商店街を訪れることもなくなり、その存在は徐々に彼の記憶から薄れていたものだった。
彼女は続ける
「知っているとは思うのだけど、
今は閑古鳥が鳴いているわ、、けれど、
まだまだ可能性がある場所なのよ」
彼女はそう言いながら、再び正貴に微笑みかけた。
その笑顔には何か計り知れないものがあり、正貴はその場でどうすることもできなかった。
「どうして、俺にそんなことを?そもそも、あんた誰だ?」
ようやく、俺も疑問を投げつける。
正貴の問いかけに、彼女は少しも動じることなく、静かに答えた。
「私?私は、あえて言うならあなたと街の神様よ
後、なんだったかしら、あ、理由ね
簡単よ、あなたならできると思ったからよ」
簡単に発されたその言葉には、ただの偶然では片付けられない強い意志が感じられた。
俺は、整理のつかない中で、ただ、商店街を見つめていた。
そして想う
「せめて、名乗ってくれと、、、」