6.私の頭を人質にする男の人とお父さんと私。お父さん、頑張る。
男の人は、お父さんの出方を見ている。
私の頭の上の男の人の手は、乗っかったまま。
ヲタ芸している頭から外れないなんて。
「女子高生は、応援してるらしい。」
と話す男の人は、つまらなそう。
つまらないなら、私の頭を解放してほしい。
「はい、娘が応援してくれました。」
お父さんの声は、うんと近くで聞こえた。
男の人の手と私の頭の間に、お父さんの手が滑り込んでいた。
昨日、私の頭を撫でてくれたお父さんの手だ。
「お父さん。」
「きーちゃん。もう大丈夫だよ。遅くなってごめんね。よく頑張ったね、きーちゃん。」
とお父さん。
「時間を決めていなかったから。」
どちらかが待つのは、仕方がない。
私が、会いたかったんだから、私が待つ分には構わない。
「きーちゃんから離れてください。
結婚しても大丈夫な人しか、きーちゃんに近づけたくありません。」
とお父さん。
お父さん。
結婚しても大丈夫な人としか、私と話をさせないなんて決めていたんだね?
「手ごと握りつぶせる。知っているよね?」
と男の人。
男の人は、握力もだけど、考え方が、異様。
お父さんと男の人は、知り合いなんだと思う。
知り合いの娘の頭を握りつぶそう、と考える人とお父さんが仲良く出来るわけない。
お父さんは、どこで知り合ったんだろう?
多分、お父さんは、この男の人に楯突かないようにしている。
楯突いたら、激昂する人?
私は、ヲタ芸を終わらせた。
音楽も止める。
「女子高生は、お父さんを待っていたんだよね?」
と男の人。
「そうですけど、何か?」
「女子高生には、お父さんが誰だか、分かるんだ?」
と男の人。
男の人は、私の真意を探るように、目を覗きこんでくる。
「私のお父さんですから。お兄さんは、お父さんの知り合いですか?」
私も負けじと、目を覗き返した。
「知り合い?知り合いって便利な言葉だね?
女子高生のお父さんの創造主だよ。」
と男の人。
創造主ってことは?
「美容整形のお医者さん?」
お父さんを見る限り、見た目も体も不自由なところはなさそう。
医者としての腕はよくても人格に問題ある人なんだ。
お父さん、手術代が足りなくて、パシらされている?
男の人は、私のことを残念なものと認識した目で見た。
「女子高生は、盛大な誤解をしているから、訂正しておけば?」
と男の人は、私の頭の上にあった手を下ろした。
「構わないんですか?」
とお父さん。
お父さんが、男の人に許可をとっている。
やっぱり、手術代足りなかったんだ。
「娘もこっち側に呼ぶ?」
と男の人。
「きーちゃんは、このままで。」
と答えるお父さんの緊張感が一気に高まった。
男の人は、私を見ない。
「じゃあ、そのつもりで、言い聞かせておかないとさ。」
と男の人。
男の人は、そのまま、私の方は見ずに公園からいなくなった。
「きーちゃん。」
と、私を呼ぶお父さんは、明らかにほっとしている。
「お父さん。」
お父さんと私は、同時に呼びかけていた。
「座って、お父さん。私はお父さんが、いなくなってからの話を聞きたい。」
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