5.私の頭を人質にとられている?頑張って、お父さん。負けないで、お父さん。私、お父さんの応援する。大人しく人質のままでいたりしない!
お父さんは、私と男の人を見て、歩みをゆっくりにしながら近寄ってきた。
「その子の頭にある手を、頭から離してもらいます。」
とお父さん。
「なんで、そんなことを言われないといけないのか分からないなあ。
女子高生は知っている?」
と男の人は、私の頭に置く手に力を込め始めた。
お父さんは、前回と違って、話し合いで、男の人をひかせたいみたい。
前の男の人とは、何かが違うの?
聞かれた質問には、きちんと答える。
お父さんは、この男の人を刺激しないようにしているのかもしれない。
「セクハラだからです。
同意がないのに、体を触るのはセクハラだからダメです。
私の頭の上から、手をどけてください。」
私は、正当な理由をあげた。
「女子高生は、お喋りが好きそうだから、口を塞いだほうが良かった?ねえ?」
と男の人。
男の人が、理不尽きまわりない。
私の頭の上に乗せられている男の人の手は、指に力を入れたり抜いたりしている。
男の人の視線は、私じゃなく、お父さんに向いている。
お父さんの出方をうかがって、コントロールしている。
私、ひょっとして人質?
お父さんとこの男の人は、因縁の相手だったりする?
どうしよう。
頭を握り潰されたくもないけれど。
お父さんに会えた時間を一分一秒も無駄にしたくない。
私の頭の上にある物騒な手を私がどけられたら、お父さんは、この男の人になんか負けない。
だって、私のお父さんだから。
お父さんは、私のヒーロー。
今も、お父さんは、諦めていない。
お父さん以外でも、私の頭を撫でていいと考えているなら、大間違い。
女子高生の頭を握りつぶそうかな、という物騒な男の人に撫でられて、喜ぶ女子高生はいないの!
私の頭の上から、物騒な手をどかすには、どうしたらいい?
頭が動けば良くない?
頭を動かす?
頭だけだと、簡単に捕まるかも。
全身運動で何か。
ラジオ体操?
全身運動ではあるけれど。
あった!
ヲタ芸。
サイリウムはないけど。
私、今、制服だけど。
ここは、公園だけど。
私、やるときは、やる人だから。
お父さんが、私を助けるためなら、夕方の公園のベンチで、一人で制服ヲタ芸をキメるくらい、余裕でできるから。
待っていて。
お父さん!
あ、でも、無音だと寂しいかも?
なんか、曲流そう。
うるさいって怒られたら、お父さんに一緒に謝ってもらう。
大丈夫。
お父さんは、娘と一緒に頭を下げてくれる。
私の頭の上に手を乗せている男の人は、一緒に謝ってくれそうじゃないから、謝るときは、逃さないで捕まえておこう。
この男の人が、私の頭を人質にとらなければ、この公園では、何も起きなかったんだから。
私は、まず音楽を再生した。
「は?」
と男の人は、音の発生源を見つけると、視線で止めろと言ってきた。
「女子高生。うるさい。」
と男の人。
私は、腰を低くして、腕、肩、頭を動かした。
私が公園のベンチで一人ヲタ芸をするのは、お父さんの活躍を待っているから。
「お父さん、頑張って!
私が応援しているから!負けないで!
私も頑張る!
安心して!
私、文化祭でやったから、ヲタ芸の経験者!」
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