49.仲良く暮らしました、にしたいよね。私が頑張って、家族が仲良くなれるなら、どんなことでも頑張れる。手段は選ばない。決断もためらわない。もう、私の家族は、バラバラにならない、と安心してもいいの?
お母さんと妹の近未来の予定を狂わせたのは、お母さんと妹自身。
私に対する恨み言をこれ以上吐き出す前に、これからの現実を教えてあげる。
「お母さん。くーちゃんをお母さんに依存させて、お母さんの思い通りに動かしてきた結果が出たよ。
くーちゃんは、失った機会にとらわれ続けることを言い訳にして、楽に生きようとしてきた。
誰かがやってくれるまで何もしないで、気に入らなければ、口だけ動かす妹に、誰が何をしようとするの?
私が、くーちゃんの言動を止めても、お母さんは、くーちゃんの味方をしてきた。
今までは、それで良かったよね?
でも。
いつまでも、同じ方法は使えないの。
くーちゃん自身で乗り越えないと。
だって、お母さんは、これから私のお母さんになるんだよ。
お母さんは、これから、私を可愛がるのに忙しくなるから。
くーちゃんは、今日から自分で頑張るんだよ。
応援するね。」
「お姉ちゃんの応援なんかいらない。
お母さん、このままだと、私はどうなるの!」
と妹。
妹は、焦って、お母さんに詰め寄っている。
「くーちゃん、いつまでもお母さんに頼らないで。
お母さんは、もう私のお母さんにシフトチェンジするの。
くーちゃんには、特別に、私のお父さんを貸してあげてもいいよ?」
「お父さんは、私のお父さんでもあるの!」
と妹は叫んだ。
「くーちゃんは、お父さんのことを大事にしてこなかったよね。
お父さんを自分のものだって主張しても、今さらだよ?」
「私のせいじゃない。私は、お母さんに言われていたんだから。」
と妹。
「何を?」
お姉ちゃんは、妹が、何を告白してくれるのか、楽しみだよ。
妹は、お母さんを裏切ることにしたんだね?
妹とお母さんは、お母さんが主犯の共犯関係にあって、従犯の妹が、先に罪の告白をするんだね。
ねえ、妹。
従犯の方が罰が軽くなると思っている?
罪は罪だよ。
我が家では、執行猶予は付かないからね。
「お父さんが毎日家にいるんじゃなくて、ずっと働いてさえいてくれたら、前と同じままでいられた。
お父さんが働かないから、お母さんは、私と一緒に習い事に行けなくなったんだよ!」
と妹。
あながち、外れてはいないけれど。
時間は過ぎていくの。
生きている間は。
「お母さんとくーちゃんが、習い事に夢中になっている間。
二人は自分達のことしか考えていなかったけど、習い事をやめても同じだった。」
成長を止めたら、現状維持じゃなくて、退化するよ。
「お姉ちゃんとお父さんは、私を応援していたのに!
なんで今になって、否定するの?」
と妹。
「くーちゃんが家族だから、くーちゃんの習い事の応援はしたよ。
でもね、くーちゃん。
お姉ちゃんは、家族を踏みにじっても平気な妹の応援はしない。」
妹は、噛みつく勢いを鎮めた。
「お姉ちゃんは、私に何をしてほしいの?」
と妹。
「私は、正常な家族の愛を感じて生きていきたいの。
くーちゃんは、私の妹として、今日から、生まれ変わって生きていくんだよ。
生き方を変えて。
お母さんも、今までのくーちゃんのままがいいとは思っていない。
くーちゃんに変わる気があるなら変わっていけるよ。」
妹は、お母さんの愚痴を思い出して、お母さんの本音が、妹に見せてこなかった部分にある、と気づいた。
「お母さん。どうしたらいい?」
とお母さんに尋ねる妹は、お母さんに構われなくてイライラを溜めながら、悶々としていた妹じゃなくなっている。
お母さんは、妹に本音をさらけ出した後で、隠す気もなくなった。
お母さんは、今、何が出来るかを考えている。
家族四人で、食卓を囲んで話し合いをするなんて、私が知る限り、初めてかもしれない。
私は、お父さんに話しかけた。
「お父さんは、私とずっといてね。」
「きーちゃんが、いなくなれ、と言うまで、お父さんは一緒にいるよ。」
とお父さん。
「私が、いなくなれってお父さんに言うときは、私がいなくなりたいときだから、お父さんと私、二人で、いなくなろうよ?」
「きーちゃん、いいのかい?」
とお父さん。
「お父さん。人は、傷ついた時間と同じ時間をかけて傷を治すんだって。
妹の十五年。
私の十七年。
お母さんの傷は、いつからあったのか、分からない。
私を産んだときには、もう既に、何かに傷ついていたのかもね。
お父さんの傷は、もう治らなくなって、手の施しようがなくなったね。
取り戻せないものがあっても、変わらなくなっても、お父さんは、私のだけのヒーローなんだよ。
私が頑張れたのは、お父さんがいたから、だから。
お父さんが私の味方だったから。
どんなときも、何があっても、お父さんだけは、私の味方になってくれる。
お父さん、これからも、私の味方でいて。
最後まで、私と一緒にいてね。
お父さんからは、いなくなったりしないでね。
お父さんがどこかに行くときは、行き先を分かるようにしておいて。
私が、追いかけていけるように。
私は、もう、家で一人で、待っていたくないの。」
お父さんは、勿論、と力強く頷いてくれた。
良かった。
私は、家族をバラバラにしたくなかった。
ギリギリ、崩壊する瀬戸際だけど、踏みとどまれたのかな?
もう、何も心配しなくてもいい?
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