48.痛みがないと、気づけない?誰の痛みなら、気づける?
妹は、私の考えに不満しかないみたい。
「お姉ちゃんの言う通りになんて、ならない、しない。」
と妹。
「くーちゃん。お母さんを見ていて、まだ、そんなことを言うの?」
「お母さんだって、お姉ちゃんの言う通りにしないよ。
私の言う通りじゃなく、お姉ちゃんの言う通りになったことなんて、今までないもん。」
と妹。
くーちゃんの学習能力が心配になるよ、お姉ちゃんは。
「言う通りにしない?
おかしなことを言い出すね。
言う通りもなにも、お母さんもくーちゃんも、私のお母さんと妹として生きていくんだよ。」
「おかしなことを言っているのは、お姉ちゃんだよ。
いつからおかしくなったの?」
と妹は、真顔で聞いてくる。
「私がおかしなことを言い出したというなら、私におかしなこと言わすような状況にしたくーちゃんとお母さんのせい。
私がおかしくなったというなら、お母さんとくーちゃんは責任をとって。」
「お姉ちゃんの問題に私を巻き込まないでよ。お父さんも何か言ってよ。」
と妹は、お父さんに話題をふった。
「私の問題じゃないの。
私の家族の問題なの。
家族のお母さんとくーちゃんは、これからの私を助けてね。
お父さんは、私に全面協力だよ。」
「なんでよ。」
と口をとがらす妹。
「くーちゃんが生まれる前と生まれてから、家族を愛してきたお父さんの愛情を、お母さんとくーちゃんはどんな風に取り扱ってきた?」
「私が生まれる前のことなんて知るはずない。」
と妹。
「くーちゃんが生まれる前の一年は、お母さんの期間につけるから、くーちゃんは心配しないでいいよ。
くーちゃんは妹の期間を妹でいるの。」
お姉ちゃん、鬼じゃないからね?
「私は、お姉ちゃんとはいない。
今は中学生だけど、すぐに家から出ていくから。」
と妹は、鼻息荒く意気込みを語っている。
「どうやって?」
「高校にいって、大学にいって、家から出ていく。
お姉ちゃんは、ずっと家にいたらいい。
年をとって、一人になっても、家にいたらいい。」
と妹。
「くーちゃんは、高校生になれるの?」
「なれるよ!
私が合格したって知っているくせに!」
と妹。
「春からその学校に行くんだって確認した?自分で?」
「どういうこと?お母さん、私は高校生になれるよね?」
と妹は、お母さんを振り返る。
「当たり前よ。」
とお母さん。
当たり前、ね?
「お父さんがもらう慰謝料は、お父さんのお金だから、お母さんとくーちゃんには使わないよ。」
「何が言いたいの?」
とお母さん。
「私は大学に進学する。
私のために、お父さんはこれからも頑張ってくれるんだ。」
「実月は、進学しないんじゃないの?」
とお母さんは、ムッとした。
「お母さんは、私が進学しなくてもいいと思っているよね。
お母さんが、私を捨てて逃げたから、約束は白紙撤回だよ。
私を捨てなかったら、良かったのに。
進学しないのは、くーちゃんね。
さあ、お父さんのお金を回収して、お家に帰ろう。」
私は、医者の家族騒動で知った人に法律上問題なく、お父さんが慰謝料を回収できるようにしてもらった。
その慰謝料は、お父さんを精神的に追い詰めたお母さんと妹のために使わない、ということにしてある。
私達は、我が家に家族四人で帰ってきた。
お母さんは、妹に聞いた。
「くるみちゃん。高校からの連絡は何かあった?」
「さあ、知らないけど。お母さんが言うなら、連絡着ているんじゃない?」
と妹。
妹の進学予定先からの書類は、封を切られずに、積まれている。
お母さんは、書類を開けて、半狂乱になった。
お母さんが浮かれている間、お母さんに任せきりで生きてきた妹は、自分のことでも、誰かがしてくれると無関心でいた。
送られてきた書類に書いてある、妹の進学予定だった高校の入学手続きに関する全ての期限は、過ぎていた。
妹は、お母さんを追いかけるのに忙しくて、中学校を自主休校していた。
お母さんは、家にいなかった。
妹の進学先の手続きを、お母さんがしないと誰もしない我が家。
妹の交友関係は、ゼロ。
中学校から連絡をとろうにも、妹は学校に来ない、家にもおらず、所在不明で不可能。
お母さんも帰ってこないから、お母さんとも連絡がつかない。
未成年で高校生のお姉ちゃんも、不在がち。
お父さんには、分からない話題。
妹の進学先の話題が出る機会は、お母さんが道ならぬ恋に突き進んでから、出なくなった我が家。
今回、全ての条件が揃った。
今からでも、妹が受かりそうな高校を探せば、どこか受かるかもしれない。
受かるかもしれないけれど受からないかもしれない。
受かっても通えるとは限らない。
「分かっていて、放置したの!ヒドい!私の人生を潰したの!お姉ちゃんなんか大キライ」
と妹。
「くーちゃんの見えるところ、手の届く場所に、書類はいつもあった。
この状態は今日だけじゃないよ。
お母さんがいるときから、この状態だった。
お母さんは、迷わず書類を出してきたよね?
お母さんは、私に教えられないでも知っていたよ。
責められるのは、私じゃないよね?
私のときは、自分で書類に目を通して、お母さんに頼んだよ。
くーちゃんが、自分では何もしないで、自堕落に生きてきた結果じゃないの?
くーちゃんに同情の余地はどこにあるの?
お父さんがいなくて孤独になった私に寄り添うこともせず、お母さんにべったり、お母さんだけと生きてきたくーちゃんの生き様の集大成が今だよ。
お母さんに何とかして、と泣きついて、何とかしてもらう?
くーちゃんは、お母さんに、どんな愚痴を言われたのか、もう忘れたの?」
妹は、私にくってかかるのを止めて、書類を手に青ざめるお母さんの方を恐る恐る見た。
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