46.悲劇でも、喜劇でも、茶番でも。
妹は、お姉ちゃんは、と呟いて、黙って、私の後ろを歩く。
お母さんは、不倫相手の元へと気が逸るのか、後ろから私と妹を追い抜かしていく。
警察官は、建物の出入り口から、私を追い払うのが仕事だったのかも?
私と妹、お母さんが建物の出入り口から離れると、建物の中に入っていった。
建物の関係者が通報したんだね。
誰かが通報したことで、警察が来たから。
不倫相手は、肩身がせまくなるかもね?
通報されるようなことをしなければ良かったのに。
間違った選択肢しか選ばないのは、落ち目の証。
どんどん落ちていけばいい。
どんどん。
どんどん落ちて。
惨めになって。
私より惨めになって、私に見下されていてよ。
『あははは。黒さが深まる、深まる、ああ、黒い。』
と、大きな口が、私の心の黒さを喜んでいる。
お母さんが、現場に着いたんだね。
「お姉ちゃんは、家族だから、私と一緒にいるの?」
と妹。
「家族だから、というけれど、今までの私達の在り方は、家族じゃなかったからね?
バラバラな家族は、家族であるとは言わないの。」
私の思う家族じゃないなら、家族とは言わない。
私の望む形態に変えるの。
私の側にいない期間は、家族としてカウントできない期間。
私の家族は、これから始まるの。
妹は家族だから、不安がらなくていいよ。
私の妹だから、私の家族の一員として生きていける。
私と妹が、建物の裏口につくと、大人が三人で争っていた。
私も加勢にいかないとね。
不倫相手をお父さんが足止めしていた甲斐があった。
大きな口が興奮している。
私の心に連動しているんだ。
大きな口は、お父さんに、お母さんの不倫相手を教えた後、お父さんの姿を隠していない。
お父さんは、お母さんの不倫相手を逃さずに、条件を持ちかけた。
『妻が、納得して、不倫相手と別れ、家族の元に帰って、お母さんに戻り、家庭で、実月を大事にし続けることができるなら、夫から不倫相手に慰謝料は請求しない。』
私が考えた条件を、お母さんの不倫相手が達成できなければ、一括で慰謝料を支払うように、お父さんは不倫相手へ要求する。
お父さんは、私のお願いを無視しない。
私のお父さん。
お父さんは特別。
いつでもどこでも。
私のお父さんは、私のヒーロー。
私だけのヒーロー。
何があっても、私を助けに来てくれる。
私と逃げてくれる。
私を逃がしてくれる。
そんなお父さんだから、お父さんは特別。
お父さんは、私から逃げない。
私の一番は、お父さんなの。
若返っても。
大きな口に喰われて、何かを失っていたとしても。
私のために駆けつけてくれるのは、いつだってお父さん。
「夫と連絡が取れないなど、大嘘をついて騙した君のせいで、俺がどれだけ迷惑をこうむったか!
二度と俺に関わるな!」
とお母さんの不倫相手。
不倫相手は、お父さんの前で、お母さんに別れ話を切り出した。
私と妹は、離れて見ている。
不倫相手のやる気が引き起こすのは、悲劇?喜劇?
それとも、茶番?
『ああ、突き進む、突き進む、黒さのままに。』
と大きな口は、今にも踊りだしそう。
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