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46/57

46.悲劇でも、喜劇でも、茶番でも。

妹は、お姉ちゃんは、と呟いて、黙って、私の後ろを歩く。


お母さんは、不倫相手の元へと気が逸るのか、後ろから私と妹を追い抜かしていく。


警察官は、建物の出入り口から、私を追い払うのが仕事だったのかも?


私と妹、お母さんが建物の出入り口から離れると、建物の中に入っていった。


建物の関係者が通報したんだね。


誰かが通報したことで、警察が来たから。


不倫相手は、肩身がせまくなるかもね?


通報されるようなことをしなければ良かったのに。


間違った選択肢しか選ばないのは、落ち目の証。


どんどん落ちていけばいい。


どんどん。


どんどん落ちて。


惨めになって。


私より惨めになって、私に見下されていてよ。


『あははは。黒さが深まる、深まる、ああ、黒い。』

と、大きな口が、私の心の黒さを喜んでいる。


お母さんが、現場に着いたんだね。


「お姉ちゃんは、家族だから、私と一緒にいるの?」

と妹。


「家族だから、というけれど、今までの私達の在り方は、家族じゃなかったからね?


バラバラな家族は、家族であるとは言わないの。」


私の思う家族じゃないなら、家族とは言わない。


私の望む形態に変えるの。


私の側にいない期間は、家族としてカウントできない期間。


私の家族は、これから始まるの。


妹は家族だから、不安がらなくていいよ。


私の妹だから、私の家族の一員として生きていける。


私と妹が、建物の裏口につくと、大人が三人で争っていた。


私も加勢にいかないとね。


不倫相手をお父さんが足止めしていた甲斐があった。


大きな口が興奮している。


私の心に連動しているんだ。


大きな口は、お父さんに、お母さんの不倫相手を教えた後、お父さんの姿を隠していない。


お父さんは、お母さんの不倫相手を逃さずに、条件を持ちかけた。


『妻が、納得して、不倫相手と別れ、家族の元に帰って、お母さんに戻り、家庭で、実月を大事にし続けることができるなら、夫から不倫相手に慰謝料は請求しない。』


私が考えた条件を、お母さんの不倫相手が達成できなければ、一括で慰謝料を支払うように、お父さんは不倫相手へ要求する。


お父さんは、私のお願いを無視しない。


私のお父さん。


お父さんは特別。


いつでもどこでも。


私のお父さんは、私のヒーロー。


私だけのヒーロー。


何があっても、私を助けに来てくれる。


私と逃げてくれる。


私を逃がしてくれる。


そんなお父さんだから、お父さんは特別。


お父さんは、私から逃げない。


私の一番は、お父さんなの。


若返っても。


大きな口に喰われて、何かを失っていたとしても。


私のために駆けつけてくれるのは、いつだってお父さん。


「夫と連絡が取れないなど、大嘘をついて騙した君のせいで、俺がどれだけ迷惑をこうむったか!

二度と俺に関わるな!」

とお母さんの不倫相手。


不倫相手は、お父さんの前で、お母さんに別れ話を切り出した。


私と妹は、離れて見ている。


不倫相手のやる気が引き起こすのは、悲劇?喜劇?


それとも、茶番?


『ああ、突き進む、突き進む、黒さのままに。』

と大きな口は、今にも踊りだしそう。

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