表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/57

36.お母さんと男の人と妹の食事会の顛末。私のヒーローは、どんなときでも、私の側に来てくれる。

「いや、私は遠慮しよう、今日は、三人分の予約しかしていない。」

と男の人。


「じゃあ、別の日に、お会いする予約を、今とらせてください。


お母さんの不倫相手について、娘の私は知っておかないと。


周りが見えなくなっているうちに、いいように言いくるめられてしまわないようにしたいんです。


家族なので。」


実月みつき、失礼なことをいうのは止めなさい。すみません、この子は、キツい性格で。」

とお母さんは、私が悪いかのように、男の人に謝る。


また、順番を間違えたね、お母さん。


私がキツく感じたなら、お母さんが先に、私がキツくならないといけないような振る舞いをしたからだよ。


お母さんは、本当に、事実の認識が甘い。


妹をただすだけでは、足りないよね。


お母さんは、妹じゃないから、ただすのは、止めるね。


お母さんの間違いは、私が修正していくことにする。


「お嬢さんは、家族なのに、お母さんの不倫を認めているんだ?」

と話す男の人の表情には、隠しきれない欲が見え隠れしている。


「お母さんに不倫してほしくはありませんが、お母さんに不倫を止める気がないなら、お母さんの熱が冷めるか、不倫相手にお母さんがフラレるまで待つしかないんです。


今、お母さんと別れて、これからは、他人に徹してくれると、娘としては安心です。


でも、お母さんは納得しないと思います。


お母さんは、今、周りが見えなくなっているので。


お母さんが、お父さん以外と結婚する未来があるとしたら、私達の孫が生まれて、お父さんが鬼籍に入ってからになります。


失礼ですが。

そこまで、お母さんを待ちますか?


待っていても、お母さんが結婚する保証はありませんよ。」


私はね、挑戦には受けて立つよ!

戦って勝つのは、私。


実月みつき!」

と、私を呼ぶお母さんの眦が吊り上がっている。


「お母さん。


私は、お母さんが、帰ってくるのを家で待っている。


気持ちを整理して、私のところに帰ってきて。


お母さんは、私のお母さんだから。


今晩は、不倫している大人同士、二人で話し合えばいいよ。


ただし、なんと言おうと、中学生のくーちゃんは、連れて帰るからね。」


私は妹に、聞いた。


「くーちゃんは、お母さんの一番大好きな人とお母さんが仲良くしている姿を見ながら、四人でご飯を食べるのと、お姉ちゃんと家に帰るのと、どっちがいい?」


「帰る。」

と妹は即答。


お母さんが考えていた、お母さんの不倫相手と妹の顔合わせ。


お母さんに誘われて気分が高揚していた妹は、私とお母さんと男の人との会話を聞いているうちに、お母さんの一番が妹ではないと確信できたみたい。


「そう、じゃ、一人分は、手土産にして、大人の朝ご飯にしたらいいよね。」


男の人の朝食にちょうどよいはず。


私は妹の気が変わらないうちに、妹を連れ出した。


妹は、チラチラと後ろを振り返っては、がっかりしている。


「どうしたの?」


「お母さん、来ない。お母さんは、私のことなんてどうでも良くなった?あの男の人といる方が大事なの?私といるより。」

と妹。


お母さんの大事枠に入っていない私は、正解を知っているけど、教えない。


妹は、まだ確信しなくてもいいよ。


まだ、早いから。


その不安は、もっと熟成させよう?


妹の心の奥底でね。


「くーちゃん。お家に帰る前にどこかに寄って、食べて帰る?

一人千円以内で。」


私は、中学生の妹の手を引いて歩いている。


高校の制服の私とお洒落した中学生の妹の組み合わせだからね。

他の人に絡まれたりしたら困る。


そのとき。


「きーちゃん。」

とお父さんの声。


お父さんは、私が呼んだら、必ず駆けつけてくれる私のヒーロー。


私が立ち止まると、つられて妹も立ち止まった。


「今、きーちゃん、て呼ばれなかった?」

と妹。


「お父さんだからね。」


妹は、お父さんをまじまじと見る。


「お父さん?確かに、若いときのお父さんだけど。」

と妹。


私は、お父さんに、くーちゃんを説明する。


「お父さん、くーちゃんだよ。私の妹、くるみちゃん。大きくなったでしょ。」


「お父さん?本当に?」

と半信半疑の妹。


「本物だよ。」

私は楽しくて仕方がない。


「若くなっていない?」

と妹は訝しむ。


私は、妹が思い当たる理由を作ってあげることにした。

「憂鬱さがなくなって、前向きになったからだよ?」


「憂鬱さ?」

と妹。


私の妹は、勘が働かないね。


「くーちゃんは、毎日、食卓で、お父さんにごめんなさいを言わせていたのを忘れた?


毎日の食卓で謝るような生活していたから、老け込んだだけで、元気なときのお父さんは、若々しかったよ。」


妹は、黙った。


「今夜は、私一人で危機を乗り切れるか分からなかったから、お父さんには近くで待機していてもらったの。」


「危機?」

と妹は、不思議そう。


「くーちゃんは、お母さんを信じて疑っていなかったから、お母さんが男の人のところに泊まると言ったら、お母さんについていくかもしれなかった。


お母さんは、自分の意思で男の人について行くけど、くーちゃんはお母さんといたいだけ。


でも、お母さんがついてこないなら、帰っていいよ、とくーちゃんに言っても、くーちゃんは一人で帰れた?


くーちゃんが帰りたいと言っても、お母さんと男の人に連れていかれたら、私一人じゃ勝てない。


お父さんがいたら、くーちゃんを取り戻せるよね?


だから。

お父さんにいてもらった。


何事もなく、脱出してきたから、お父さんも安心しているところ。


くーちゃん、私達は、顔を見て、お互いに話をする時間が必要だよ。


一人千円でご飯を食べて、家に帰ってから話をしようね。」


私の説得は、妹に届いた。


妹は、お母さんが、席を立つ妹を呼び止めなかったことや、店を出ていく妹を追いかけて来なかったことに傷ついている。


「家に帰ってから?」

と妹。


「お母さんとお母さんの不倫相手の話を外でするのは、お母さんが不倫相手と別れた後のことを考えたらね?」


私と妹とお父さんは、三人で夕飯を食べて家に帰った。


家族と一緒は楽しいね?


お母さんも、早く落ち着いてね?

楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の☆で応援してくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ