表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/57

34.疑惑も、疑念も、口に出した途端に、真実と比べようがなくなる。一度芽生えると、なかった状態には戻らない。誤解って、建前のためにある言葉?

機嫌悪そうだね、お母さん。


意中の男の人が、隣にいる手前、私を排除したい気持ちはあるけれど、男の人にどう思われるかが気になって、行動を決めかねている?


そうだよね?


私は、お母さんの隙をつくよ。


お母さんは、隣の席の男の人に、高校生の娘を連れて来る話をしていなかった、という、私の認識は間違っていないよね?


「高校生の私じゃなくて、中学生のくーちゃんにお洒落させて、大人の男の人に会わせるのが、この食事会の主旨なんだ?


お母さん、こちらの男の人に中学生のくーちゃんを紹介して、くーちゃんに何をさせようとしているの?


そんな話を聞かされて、中学生のくーちゃんを置いて帰れるわけないよね?」


私は、真面目くさった顔で抗議する。


疑惑、疑念。


生じなければ、とらわれないもの。


一度、芽吹いてしまえば、決して、何もなかった状態には戻れない。


「何を考えているの!

謝りなさい。

あなたの考えているようなことは、あり得ないわ。」

お母さんは、まなじりをけっした後、小声になった。


私のいいたいことが、お母さんに正確に伝わっていて、私は満足。


「誤解をときたい。お母さんと妹さんと一緒に食事をする約束をしただけだ。」

と男の人。


甘いよ?


誤解であると言葉にして説明するだけで、誤解だと納得させることができる、と本当に思っているの?


私のことを、どれだけとんまだと思っているの?


誤解だよ、そうですか、が通用するのは、どちらにも誤解という建前が必要な場合だけ。


私は、建前を必要としていないの。


誤解どころか、曲解であったとしても。


口に出した言葉だけが、残るの。


「会う娘を、しっかり者の高校生の姉の私じゃなく、お母さんの言うことは全部正しいと信じている純粋な中学生のくーちゃんに限定している、というのが、信用ならないです。


私と違って、家族以外の知り合いが少ない中学生のくーちゃんの場合。

お母さんが騒がない限り、問題が発覚しにくいんです。


お母さんが騒ぐときは、中学生のくーちゃんに問題が起きてしまった後です。


問題が起きても、知らんぷりよりはマシですが、くーちゃんに問題が起きないのが一番です。」


私が直球で、問題点を指摘すると、男の人は、険しい顔になった。


そんな指摘は、想定していなかったから、返す言葉に困っているんだよね?


お母さんは、男の人の隣で慌てている。


私が、懸念点を具体的に物申しているからね。


男の人にも、お母さんにも、私が何を想像していたか、正確に伝わっていて何より。


私の真の狙いは、まだ、明かさない。


楽しみにしていてね、お母さん。


実月みつき、失礼なことを言わないの。

ここは、これから、新しい家族になる人だけでの食事会なの。実月みつきは帰りなさい。」

とお母さん。


お母さん、今、新しい家族って言ったね?


今の発言は、禁句だよ。


「お母さんが、男の人と付き合うのは、否定してこなかったけれど、男の人のために、家庭を犠牲にするのは止めて。」


実月みつき、言っていいことと悪いことの区別がつけて。いい加減にしなさい。」

とお母さん。


お母さんは、新しい家族なんて作ったらいけないの。


お母さんは、私のお母さんなんだもん。


私の家族は、お父さん、お母さん、妹がいればいいの。


お母さんは、まだ分からないの?


分からないなら、私が分かるまで教えるからね、お母さん。


私を置いては、どこにも行けないということを、お母さんには是非自覚してもらわないと。


私は、お母さんを追いかけ続けるより、お母さんに追いかけてほしいし、待っていてほしい。


お母さんには、一人でどこにも行ってほしくない。


私の見えるところにいて、私と生きようとして。


一生だよ?

楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の☆で応援してくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ