30.お母さんは、誰とどこに行こうとしているの?お母さん、私ね、ずっと待っていたの。私の番をね、ずっと待っていたの。
お母さんと男性は、お洒落なレストランに入っていった。
お母さん、私は、お母さんと一緒にお洒落なレストランに入ったことがないの。
その男の人とお洒落なレストランに行きたいなら、まず私と行ってからにしてほしかった。
妹が小さいとき。
私がお母さんと外食するときは、いつも妹が一緒で、妹の食べられるものがあるお店。
妹が習い事を始めたら、妹の団体と一緒に、追加でついていく私。
妹は、妹の友達と楽しそうにしていて、私は大人しく邪魔にならないようにしていた。
お母さんは、他のお母さんと仲良くしていて、私に見向きもしない。
他のお母さんが、私に声をかけてくれたときだけ、お母さんは、私を見る。
『一人で大丈夫だから。その子は、放っておいても平気だから。ごめんね。気にしないで。』
とお母さんは、私に構ってくれたお母さんを私から引き離す。
『そうお?』
他のお母さんは、お母さんが私に声をかけなくてもいいと言えば、声をかけない。
妹の友達でも、妹より小さい子ども、妹の友達の弟妹の面倒を見てあげて、と言われてきた。
面倒を見てあげてと大人に言われるから、面倒を見ているだけで、私が自分から面倒をみたいと言ったことはない。
だって、私より小さい子どもと遊ぶなら、私が合わせるばかりだもん。
自分より小さい子どもといて、楽しいことなんて、ある?
だいたい、私、自分より小さな子どもとの遊び方なんて知らないもん。
私自身が、自分より大きな子どもに遊んでもらった経験がない。
私のお母さんは、私が勝手に遊んでいて、手がかからないと外で言っていた。
お母さん、私は勝手に遊んでいないよ。
遊んでなんていなかった。
ずっとお母さんを待っていたの。
妹の次は、私の番が来るって。
待っていたんだよ、お母さんが来てくれるのを。
大人は、自分が子どもといても楽しくなくて、楽をしたいから、子ども同士で遊んでほしいんだって、私は知っていた。
大人は、私と遊ぼうとしない。
理由は、私が、子どもで、私と遊んでも楽しくないから。
大人の数が揃っているなら、一人くらい、私を見ていてもいいじゃない。
ねえ、お母さん。
他のお母さんが私を構うんじゃなく、お母さんが私を構って、妹を妹の友達とまとめて、他のお母さんに見ていてもらえないの?
どうせ遊ぶなら、遊ぶ相手は選びたい。
大人も子どもも、考えることは一緒。
私、私を構ってくれる他のお母さんのことが好きだったよ。
私の好きな、他のお母さんは、人気者だった。
お母さんも、そのお母さんのことが好きだったよね?
そのお母さんを嫌いなお母さんも、嫌いな子どもも、見たことがなかった。
そのお母さんは、誰からも好かれるお母さんだったね。
私を構ってくれている人を私から引き離すとき、お母さんは自分が話したい人とか、他のお母さんが話をしたい人のときは、早かったよね?
私を構ってくれている人が、お母さんの話したい人じゃないときは、他のお母さんに指摘されてからじゃなきゃ、来なかった。
お母さん。
私、生まれてから、今まで、我慢してきたの。
私と妹とは二歳差。
私が、二歳になる前まで。
お母さんは、お腹に赤ちゃんがいるから、と言っていなかった?
私、覚えているの。
私がお母さんと一緒にいるために、どうしたらいいか、一生懸命考えたこと。
お母さんは、進んで私といようとはしない。
私がお母さんに合わせたら、私は、お母さんと一緒にいられる。
お母さんの邪魔をしなかったら、私はお母さんと一緒にいられる。
妹が生まれてからは、妹がいるからと、お母さんは言うようになったの。
ねえ、お母さん。
私は、お母さんに構ってもらえるのを待っていたの。
待っていたの、ずっと。
お母さんは、私を構わないで済まそうとしていない?
お母さん、私、決めたの。
私、お母さんを待っていた分を、全力で構ってもらう。
私は高二だけど、私は子どもだから、私におまけして、今から十八年。
お母さんは、私を構って、甘やかすの。
私は、お母さんと男の人がお店の中に入っていったので、家に帰ることにした。
小さいときに我慢していた出来事って、ある日、ふと思い出したら、そのことばかりを思い返してしまうね、お母さん。
覚悟していてね。
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