28.妹が、お母さんの後を追いかけられるのは、私がそれを許しているからだと、お母さんと妹は気づかない。くーちゃん、間違えてはいけないよ?
お母さんの帰りが、日に日に遅くなっている。
仕事が終わるとさっさと帰ってきて、家事をしていたお母さんは、家事をするには遅い時間に帰ってくるようになった。
毎日の家事のうち、しないと生活に困る部分は、私が最低限している。
洗濯や洗い物は、毎日しないと、生活に支障をきたすから。
妹?
妹は、家事を自分がするものだとは思わないみたい。
食事は、席についたら、出てくるものだと思っている。
食べ終わった食器は、何もしなくても片付けられていて、洗われていて、翌朝には使えるようになっていることが当たり前だと思っている。
脱いだ服や使ったタオルは、洗われて干されて、次の日に用意されているものだと疑っていない。
妹に指摘するのは、簡単だけど、私はまだ、しない。
私の目的のために。
今は、まだ、妹に、家事の現実を教えるタイミングじゃない。
部屋の床の目立つ埃は、こまめに捨てるようにしている。
風呂掃除は、毎日しなくてもなんとかなっている。
生活は、ぎりぎり回せているから、まだ大丈夫。
やっつけ仕事のような化粧だったお母さんは、このところ、丁寧に化粧をするようになった。
家にいて、私を見ていないのは前からだったけれど、妹のこともあまり見なくなった。
妹が、お母さんの仕事場に押しかけるのは、恒例行事になっている。
お母さんが、妹を見つけて、先に帰らせるまでが、一連の流れ。
最初の方こそ、妹は、お母さんに諭され、構われ、機嫌を直して素直に帰宅していた。
お母さんの帰宅時間が遅くなるにつれて、妹は、帰宅を渋るようになった。
「家にいても、お母さんがかまってくれない。」
とお母さんに訴える妹。
お母さんは、妹とのやり取りに疲れてきている。
お母さんは、妹を構うことが面倒になってきている。
妹を構っても、発展性がないことに、お母さんは気づいた。
妹は、同じ場所で、ずっと足踏みしている。
足踏みする様子を隣で見て、上手に足踏みするね、と褒めてやらない時間ができると。
不安になった妹は、お母さんを探し歩き、お母さんを連れてきて、同じ場所に戻って足踏みしてみせる。
同じ場所に居続けたい妹と、妹のいる場所から離れて、新天地に行きたいお母さんの攻防が続いている。
妹にとっては、お母さんに構い続けてもらうのが、当たり前。
でも。
お母さんが、妹を構っていたのは、妹が可愛いから、という理由だけじゃない。
かつて、妹を可愛がることは、お母さんの望むものを、お母さんに引き寄せてくる結果をもたらしていた。
今は?
生産性のない妹に構っても、同じことのループから抜け出せない。
「お姉ちゃんがいるでしょ。
くるみちゃんは、最近、お姉ちゃんとも仲良くなっているじゃない。
お姉ちゃんに構ってもらって。」
と言うお母さん。
『お母さんの代わりに、お姉ちゃんに構ってもらいなさい。』
お母さんは、強請る妹に言うようになった。
お母さんは、私に頼んでもいないのに、何を言い出すの?
お母さんに構ってほしいのは、妹だけじゃない。
私もだよ。
妹の方が、お母さんを捕まえるのに適任だから、妹がすることを見守っているだけで。
お母さんが家をあける時間をのばしていることを、私は快く思っていないよ。
「お姉ちゃんは家にいるけど、お姉ちゃんはお姉ちゃんで、お母さんじゃない。
なんで、お母さんは、私とお姉ちゃんを一緒にいさせようとしてくるの?
お姉ちゃんは、一緒じゃなくていい。
お姉ちゃんは、いらない。
お母さんがいてくれたらいい。」
と妹。
妹は、お母さんに不満をぶつけることができるようになっている。
私が、頭を握り潰したがる医者の家族にかかりきりになっている間に、妹は成長したようだ。
妹の成長は、喜ばしい。
妹の心の成長はまだまだだから、お姉ちゃんの私が導いてあげる。
お母さんがいるから、お姉ちゃんはいらないなんていう考えを妹が持つのは、いけないことだって、妹は学習しないと。
うちは四人家族。
お父さん、お母さん、私、妹。
ねえ、妹、間違えたらいけないからね?
妹の家族は、お母さんと妹の二人じゃないんだよ。
間違えているなら、覚え直そうね?
お姉ちゃんはね、お姉ちゃんを無視する妹になってほしくないの。
お姉ちゃんをお母さんの代わりにしてほしくもないの。
お姉ちゃんは、妹にお姉ちゃんのことを家族の一員として、尊敬してほしいと思っているんだよ。
最初からずっと。
妹が生まれてからずっと。
妹が習い事をするようになる前から、妹とお母さんは、お姉ちゃんに対して、ニ対一だったから、お姉ちゃんはとても悲しかった。
妹は、お姉ちゃんと同じ、お母さんの子どもなんだから。
お母さんとお姉ちゃん、どちらかに味方したいんだったら、お姉ちゃんの味方をしないといけないよ?
お母さんが教えてくれなかったことは、お姉ちゃんが教えてあげる。
うちに、お母さんは一人しかいないの。
妹のお母さんは、お姉ちゃんのお母さんでもあるの。
お母さんを独り占めするのはいけないことなんだよ。
お母さんを独り占めしない妹になろうね?
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