24.頭を握り潰したがる医者に技術を教えたのは、大きな口。貫き通す意思の強さが大好物。
お父さんも頭を握り潰したがる医者も、大きな口が私の横にいることに驚いていない。
大きな口が現れたのは公園なのに、悲鳴をあげる人もいない。
お父さんと頭を握り潰したがる医者はともかく、他の人は、他人に関心がないから?
お父さんと頭を握り潰したがる医者と私の三人のうち、大きな口と初めましては、私だけ?
「名前を知らないから、見た目で呼ぶよ。
大きな口は、頭を握り潰したがる医者とお父さんの諦めずに貫き通す意思を喰った?
お父さんが、家族といるために諦めないで頑張ったのに、今の姿に変わってから家族といることを諦めていた。
頭を握り潰したがる医者の方も、家族がポイントになる意思があったんじゃない?
家族といたいという意思が。」
大きな口は、ケハケハと笑う。
「うまそう、うまそう。真っ黒なおまえの心を喰いたい、喰いたい。」
と大きな口。
大きな口の思考は、食欲に支配されていて、会話にならない。
私は、頭を握り潰したがる医者に確認することにした。
「医者に確認したいんだけど。
医者の施術は、人の技術を超えているよね?
大きな口は、医者に施術方法を伝授したけど、実際に施術したのは、大きな口じゃないよね?
伝授された医者が、医者自身とお父さんに施術したんだよね。
大きな口は、医者に伝授した施術が成功したから、医者とお父さんの貫き通す意思を喰った。
あっている?」
私の推測が正しければ。
誰にも施術されていない私は、大きな口限定で無敵。
「よく気づいた。」
と頭を握り潰したがる医者。
大きな口が、喰いたいとわざわざ言っているのは、今のままの私じゃ、大きな口は喰えないんだと思う。
喰ったところで、大きな口の腹が膨れない、とか、積極的に食べようとする材料が私にはない。
施術されていない私は、大きな口の好みに合うような加工をされていない。
頭を握り潰したがる医者やお父さんは、調理済みでお皿に盛り付けられた煮魚。
私は、まだ釣られてもいない、川で元気に泳いでいるヤマメ。
大きな口が、私にできることは、喰いたいと言うことだけ。
大きな口との会話を成り立たせるにはどうすればいい?
「大きな口に私は喰わせない。」
大きな口から逃げるんじゃなくて、向き合うことにした。
「黒き娘。その心の黒さをさらに黒くしていくのか。喰わせろ、喰わせろ。歯ざわり、歯ざわり。ざわざわ、ざわざわ。」
と大きな口。
「私は、私の目的のために、どんなことでもするの。
私の目的は、私の家族をバラバラにしないこと。」
私は、大きな口に、一言一句、噛みしめるように伝える。
「大きな口は、私の心を黒くて、うまそうと言った。
私が私の目的を遂行するために、私の何かを失うなんて、私は絶対に嫌。
私の目的を達成するために、何かを失う必要があるなら、何かを失うのは、私じゃなくていい。
私には、失うものなんて、一つもないの。
今あるものは、何一つ手放さない。
これから手に入るものも、私は一つも取りこぼさない。
ねえ、大きな口。
私の心の黒さは、尊い?
強欲に生きる私は、おいしそう?
大きな口は、私を見て、極上の味を妄想するために、私に使われて?
大きな口が勿体なくて食べれないほどの心の黒さ。
飽きるまでずっと見ていたら?」
私は、知っているの。
なりふり構わず、が大事なんだよ。
自分の大事なものをつかんで離さないでいるためにはね。
大事なものは、誰にも盗られないようにしておくの。
盗らせないようにしておくの。
どんな方法を使ってもいいんだよ。
守りきったものだけが、望みを叶えることができる。
私の望みを叶えることができるのは、私だけ。
だって、私しか望んでいないから。
世界中で、私しか望んでいないことを、私はやり遂げる。
お父さんもお母さんも妹も、私の家族は、一人もいなくならせないよ。
だから。
お父さんには、私のヒーローでいてもらう。
これからも、助けてもらうの。
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