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23.『家族をバラバラにさせない。』私が頭を握り潰したがる医者と話をしていると、知らない声が加わった。『喰いたい、喰いたい。』と声は言う。

頭を握り潰したがる医者にとっても、家族は特別だったんだね。


私と同じく。


頭を握り潰したがる医者の家族は、今、どうしているんだろう。


頭を握り潰したがる医者の家族がどうなっていても、私には関係ないから、私からは聞かない。


私が聞き出したところで、何かが変わるわけでもなし。


医者を追い詰めたものの正体が分かったところで、何になる?


今の医者は、頭を握り潰すことしか考えられない。


頭を握り潰したがる医者が施術を続けているのは、医者としての意識が根底にあるからだろうけれど。


医者の施術って、医療じゃないなら、何なんだろう?


人が人に使ったけれど、人が生み出した技術なの?


「荒ぶるのは、後で一人のときにして。

お父さんの体の見た目は若返った。

思考は制限を受けている。


お父さんと生きるなら、気をつけることを先に確認しておきたい。


他に、分かっていることはないの?」


「いなくならないのか?」

と頭を握り潰したがる医者。


「私は、私のお父さんを家族じゃないと思ったことは一度もない。

お父さんは、私の家族。

今までも、これからも。

一緒に生きていくの。お父さんだけじゃない。

お母さんと妹も。」


「今はよくても。」

と頭を握り潰したがる医者。


「今、大丈夫なら、この先も大丈夫にする。

私のお父さんを私から引き離すのは、止めて。

私とお父さんが、互いに離れると決めない限り、私達は一緒にいる。


何がなんでも。


どんなことをしても。


私の家族をバラバラにさせない。


私の家族をバラバラにしようとしているのは、どうして?」


「純粋な、純粋な。」

と知らない声がした。


「誰?」


「混じり気がない黒さを持つ娘。喰いたい、喰いたいなあ。喰えば、腹が膨れそうだ。」

知らない声は、近くから発されている。


姿は見えない。


「私だけが、一方的に見られているのは、気持ち悪い。私を見て、どうのこうの言いたいなら、姿を見せてよ。」


小さくて尖った歯が並ぶ大きな丸い口が、私の横で、カチカチと歯を鳴らしている。


「今、話していた?」

確認してみた。


「喰いたい、喰いたい、おまえを喰いたい。おまえの黒さを喰わせろ。」

と大きな口。


「嫌に決まっているわ。私は、地黒でもないし、髪も普通の黒さなんだけど。」


「純粋な黒さ、黒くて、うまそう。」

と大きな口。


口だけで、耳がないから、私の声が聞こえない?


「おまえの黒さは、混じり気がない。濁っていない白さが転化した。透き通るような黒さ。ケハケハ。喰いたい、喰いたい。」

と大きな口。


「黒さって、外見じゃなく、内面のことをさしている?」

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怪異、登場しました。

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