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22/57

22.妹は、お母さんを追いかける。私は、お父さんに施術した、頭を握り潰したがる医者と話をする。医者について調べたよ。医者はね。

妹は、お母さんとの間に空いた隙間を埋めようとしている。


お母さんから聞きたいことを教えてもらうために、お母さんを見失うまい、として、お母さんを追いかけるようになった。


お母さんは、そんな妹に辟易している。


妹を依存させていたのは、お母さん。


お母さんが、妹の行動を嫌がれば嫌がるほど、妹は不安に苛まれて、お母さんを追い続ける。


いいよ、くーちゃん。


頑張れ、くーちゃん、その調子。


お母さんを逃がしたら、ダメだよ。


お母さんは、私達のお母さんなんだから。


お母さんは、どこにも行かせない。


お母さんが行くところには、皆で一緒についていくからね?


くーちゃんの後ろには、私とお父さんがいるよ、お母さん。


私達のこと、忘れさせたりしないからね、お母さん。



私は、お父さんに頼んで、頭を握り潰したがる医者と会うことにしたの。


「お父さんは、家族と生きるために諦めなかったのに、諦めなかった結果が、家族といれなくなる、なんて詐欺だからね?」


私はのっけから、戦闘態勢。


「家族というものは、今いなくなるか、いずれいなくなるか、いなくなる結末は違わない。」

と頭を握り潰したがる医者。


医者に、お父さんの体について聞いてみたけれど、症例が、医者自身とお父さんしかいない。


医者もお父さんも、自身の心身に興味がなかったから、調べていない。


お父さんの心身の健康を維持する方法は、何も分かっていないの。


医者の心身の変化を見て、その対応をしながら、その反省をお父さんに活かすことにした。


私が大事なのは、私のお父さんだから。



医者に会う前に調べてみた。

医者は、本物の医者だった。


異端の精神科医だと、かつて評判になっていた。


ネットで調べたら、この顔、この人、みたいなので、引っかかった。


何年か前の写真で、仕事をしている様子を写していた。


家族は、妻と子ども二人。


プロフィールには記載がなかったけど、写真を見た人からタレコミされていた。


急に目立ったから、たたかれたのかもね。


ネットの記事には、開業医と書いてある。


無名から突然有名になる場合、持ち上げられてから、評判を落とされるのが、定番コースみたい。


後ろ盾、というのがない人は。


頭を握り潰したがる医者みたいな、市井にいる普通の人を、守ってくれる人はいなかった。


時系列で記事を追うと、噂が作られていく過程を見ることができる。


最初は、悪評がパラパラ。

次第に、悪評とそれを打ち消す良い噂が交互に出てくる。

最終的には、悪評のみになる。


市井にいる普通の人が、短期間で悪評まみれになるなんて、どんな悪者?となったみたい。


当時はね。


私?


私は、思わないよ。


頭を握り潰したがる医者を排除したい誰かが波風を立てた。


お祭りに乗っかった人がいたのか。

仕事で、医者の悪評を流布した人がいたのか。


どっちもいたんだろうね。


頭を握り潰したがる医者は、誰かの頭を握り潰したい、とずっと思い続けている。


ネット上で。

『堕ちた異端』と頭を握り潰したがる医者についての悪評の総集編が出た後。


頭を握り潰したがる医者についての続報はない。


ゼロ。


あの人は、今?

みたいなものもない。


ネット記事にならないようにしている?


ネット上の記事をコントロールするのって、どれくらい可能?


悪評を、そのままにしてあるのは、誰の、何のため?


私は、私の頭を、医者に握り潰させる気はない。


頭を握り潰したがる医者と話をすることは、私の目的を達成するために、意味があるから、私は医者と向き合っている。


「今、医者は、家族と一緒にはいないの?

医者の家族は、今、どうしているの?」


頭を握り潰したがる医者は、憤怒の形相になった。


「家族を調べたのか?」

と頭を握り潰したがる医者。


「人は、人から生まれるんだよ?

医者にも家族がいるよね?

もういない?

いなくなった?」


頭を握り潰したがる医者は、喉の奥で唸り声をあげた。

「語るな、語るな。お前らが、語るようなものは、どこにもない。

奪うな、奪うな。

何者も奪うことなどできなかったはずだ!」

楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の☆で応援してくださると嬉しいです。


噂の始まり。

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