21.妹の危機感。お母さんに捨てられそう?お母さんは、お姉ちゃんに乗り換えるかも。お姉ちゃんは、最近、お母さんといる時間が長い。
お母さんに呼ばれない夕食後、妹が話しかけてくる。
お母さんがいるとき、妹は私に話しかけてこない。
お母さんがいるとき、妹はお母さんと話をするのに忙しい。
お母さんのいないとき、妹は、お母さんが私にした話を聞きたがる。
お母さんと妹は、本当に仲良しだね?
私を呼びつけるタイミングが、かち合わないように気を付けているのは、妹の方だから、妹の方が、お母さん大好き状態?
お母さんが大好き過ぎて、お母さんに聞けないんだよね?
「どうして、お姉ちゃんだけを呼んで、話をしているの?」
「お母さんが、わざわざ私だけ呼んで話す内容だから、くーちゃんには話せないよ。」
と私は返事する。
お母さんは、妹のすることに寛容じゃなくなってきている。
お母さんの態度が冷たくなって、不安?
心配?
お母さんに、捨てられてしまうんじゃないか。
お姉ちゃんに、ポジションをとられるんじゃないか。
妹は、ずっと、考えている。
考えたまま、動き出さずに立ち止まっている。
私は、妹に、胸の内で語りかける。
お母さんに捨てられるかもしれないけれど、くーちゃんのポジションをとるのはね、お姉ちゃんじゃないよ。
お母さんの一番は、残念ながら、お姉ちゃんじゃないの。
一番が誰なのか、お姉ちゃんは知らない。
くーちゃんは、誰だか知っている?
今は知らなくても、お姉ちゃんより先に知ることになるんじゃない?
分かったら、お姉ちゃんにも教えてね。
お母さんの一番は、くーちゃんだったよね。
お母さん自身を除いた中での一番は、という意味で。
ねえ、くーちゃん。
今のくーちゃんは、お母さんの何番目だと感じているの?
お母さんが、片時も手放さないスマホ。
「ねえ、くーちゃん。
お母さんは、誰とメッセージのやりとりをしているんだと思う?」
私が聞いても、妹からの返事はない。
いつものこと。
「お母さんがスマホを触っているタイミングで、くーちゃんのスマホに、メッセージはきている?
不安にもなるよね?
くーちゃんは、お母さんが話してくれるのを今か、今かと待っているもんね。」
妹は、手にあるスマホを見つめたまま、言葉を発さない。
「くーちゃんは、いつまで待てる?
待てないなら、聞いてみたらどうなの?」
「誰に?」
と妹。
「お母さんに、直接聞いてみたらどう?
『お母さんは、誰とやりとりしているの?
私には話せない人?』って。」
妹は、無理、と一言。
手元のスマホから目を離さない。
「直接は、聞けない?
そうか、聞けないよね。
くーちゃんは悪くないよ。
今までは、くーちゃんから聞かなくても、良かったもんね。
教えてくれないからって、いきなり聞けないよね?」
私は理解あるお姉ちゃん。
お母さんと妹の関係は、二人だけで完結してきた。
妹が知りたいことは全部、妹が尋ねる前に、お母さんが教えてきた。
お母さんの態度が変わったけど、お母さんは、妹に理由を教えない。
私は苦悩する妹に寄り添うお姉ちゃんだよ。
胸の内で、妹に話しかけるけれど、決して声には出さないの。
くーちゃんは、どうすればいいか分からないよね。
分からないから、くーちゃんは、一人でいるしかないんだよね?
お母さんに相手にされなくなって寂しいね?
お母さんに見捨てられるかも、と考えたら苦しいね?
お姉ちゃんはね、知っているんだよ。
お母さんは、お姉ちゃんを捨てる気だったんだよ?
くーちゃんも知っているよね?
くーちゃんも、お母さんに賛成して、お姉ちゃんを捨てるつもりだったもんね?
お姉ちゃんは、捨てられそうになったけれど、捨てられなかった。
だったら、ねえ、大丈夫じゃない?
くーちゃんも。
くーちゃんが頑張ったら。
ひょっとしたら、ひょっとするかもしれない。
くーちゃんは、お母さんに振り向いてほしいんだよね、もう一度。
ねえ、くーちゃん。
お母さんに振り向いてもらうには、くーちゃんは、どうしたらいいんだろうね?
待っていたら、振り向いてくれるの?
振り向かせにいく?
うん。
それがいいかも。
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