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14.住む場所は違っていても、お父さんと会うことはできる。『お母さん、一つだけ、私の希望を叶えてほしい。他は、今まで通り、妹の希望通りでいいから。一つだけ。』

お母さんは、お父さんに謝らせてすっきりしていたのだと思う。


お母さんは、自分でお父さんをなじるようなことはしなかった。


お母さんがなじったら、お父さんは、変わるために家を出るよりも、命を断つことを選んでいたかもしれない。


お母さんになじられることは、お父さんにはこたえたと思うから。


お母さんは、お母さんとして、やってはいけないラインを見極めていた。


おそらく。


お父さんにごめんねを言わせることが、お母さんが望まなかった生活を続ける糧になっていた。


妹を不幸だ、可哀想だと評するなら、家庭の都合で、習い事を続けられなくなったことは、該当しない。


お父さんとお母さんの関係を維持するために、妹が挟まれたことこそが、妹の不幸だと思う。


妹は、自分のことを、お父さんに謝られるような、可哀想な目にあわされた子どもだと誤認した。


習い事が続けられないだけだったら、妹は、全く可哀想じゃなかった。


家族の協力がないと成り立たない習い事は、家族の協力が得られなくなったときに終わる。


仕方がない。


そういうものだ、とすぐに妹に言い聞かせていれば、未だに間違った認識のままではいなかった。


習い事を辞めることになったのは、お父さんのせいだ、となじる妹。


お父さんは、謝るだけ。


お母さんは、謝るお父さんを見て、溜飲を下げる。


小学校高学年から中学生の姉の私に、お母さんのささやきに耳を貸す小学生の妹を説き伏せるような色々は備わっていなかった。


不幸が玉突き衝突して、私達は四人とも可哀想のスパイラルにはまっていった。


お父さんが最初にいなくなった。


お父さんがいなくなった後、お母さんのイライラのぶつけ先は、私に変わったんだと思う。


お母さんは、親として、娘を攻撃してはいけない、という心理が働いているから、私に直接、何かを言ったりしない。


私に問題発言をするのも、私を話題の外に追いやるのも、言い出しっぺは、妹。


でも、構図は、お父さんのときと同じ。


首謀者は、お母さん。


だから、妹と話しても解決しない。


お母さんと話さないと。


「お母さん。

お父さんが会社でどんな目にあって、仕事に行けなくなったのか、私は知らない。


お父さんが、仕事に行けなくなって、私達は四人ともそれぞれが、それぞれの理由で苦労した。


私達家族のバランスが崩れた発端は、お父さんが仕事に行けなくなったこと。


お父さんが仕事に行けなくなった原因は、職場にあるんだよね?


私達が、家族内で、互いに傷つけ合う理由は、なかったんだよ。


私は、家族が一つでいることを諦めない。


今、バラバラになったら、誰も幸せじゃない。


お母さんと妹が、お父さんに会わないでいることを望むなら、お父さんをこの家には連れてこない。


だからね。

お母さん。


私が叶えてほしいのは、今から言う一つの希望だけ。


他の希望は、捨てる。


この一つ以外は、今迄通り、妹の希望を叶えてあげたらいいよ。


お母さんは、お父さんと決して離婚しないこと。


私の望みは、この一つだけ。


私が自立して、家を出ることがあっても、決して、離婚しないで。


妹が真人間になるように、早めに手を打たないと、お母さんは、可哀想な妹の一生を背負うことになるよ。


私は、自立するから。」


お父さんは、お母さんに離婚届を渡されたら、拒否しないと思う。


お父さんの優しさで、離婚したくなくても、そう望まれているから受け入れる。


今の、若返ったお父さんは、人であるかどうかが、危うい。


お母さんと離婚しないでいることで、お父さんという存在を守れる。


お父さんは、離婚したら、生きる意味を失うだろう。


私は、優しい家族思いのお父さんを二度も失いたくない。


お父さんとお母さんに離婚はさせない。


徹底的に邪魔する。


準備してお父さんに会わないと、とお母さんが言うから。


お母さんが、準備しようがすまいが、お母さんをお父さんに会わせない。


私は、一人でできる子どもだったの。


驚くことはないよね。


一人で、するべきことをしているだけ。


小学生のときは、宿題や課題。


高校生の、今の私のするべきことは、一つだけ。


私の家族が瓦解しないように、離したり、くっつけたりして、修繕しながら、長持ちさせること。


三つ子の魂百まで。


人って、変わらないの。

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