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13.妹と私の扱いの違いについての、お母さんの行動の理由を、動機を、私は考え続けていた。妹のしてきたこと。お母さんがしていたこと。お母さんが、したかったこと。

妹は、どうしてお母さんの特別なの?


何が違う?


姉と妹の違い。


手がかかるから、手をかけるの? 


手をかけたいから、手をかけるの?


私と妹の一番の違いは、先に生まれたか、後に生まれたか?


私は、妹との違いを考えてきた。


違いが分かったところで、私の待遇が変わるわけじゃないと途中で気づいた。


変わらないなら、せめて、納得のいく理由がほしい。


だから、私は考えるのを止めなかった。


お母さんの行動の動機はなんだろう?って。


お父さんが仕事に行けなくなってすぐの一ヶ月間。

お父さん以外の三人、私、お母さん、妹は、以前と変わらない生活をしていた。


お父さんが仕事に復帰できないとはっきりして。


お母さんは、週四のパートから正社員の仕事に変えた。


仕事を変えたときに、お母さんの中で、お母さんとお父さんの役割分担は終わったんだと思う。


お父さんは、稼ぐ人。

お母さんは、家族を助ける人。

という役割分担。


お母さんとお父さんで話し合って決めたのか、なんとなく決まっていたのか。


役割分担がなくなって、お父さんの分の責任もお母さんの肩に乗ってきた。


お母さんは、仕事を変えてから、家に帰ってくるときは、いつも疲れていた。


お母さんの望んでいた生活じゃなかったから。


お母さんの望んでいた生活が終わってしまったから。


妹の夢を叶えるという生活が。


妹の夢を叶えるために、妹と二人三脚で走り続ける生活が。


妹の夢を叶えるために手を伸ばして手に入れた最高の環境の中で、生活するという夢の暮らしは、強制終了することになった。


お父さんが働けなくなって、収入が途絶えるから。


お父さんが働けなくなって収入が途絶えるだけじゃなかった。


お父さんは、家にずっといたけれど、家のことや、子どもの世話をしなかった。


今のお父さんは、家事をするかもしれないけれど、当時のお父さんはしていなかった。


早く元気になってくれるのなら、何もしないで確実に治してくれたらいい。


お母さんも、私達もそう考えていた。


お母さんは、お父さんが何もしなくても、何も文句を言わなかった。


お父さんの状態は、なかなか思うように良くならなかった。


お父さんから聞いた薬の話。


お母さんや私達の、お父さんが早く治れば元の生活に戻れる、という願いと期待にお父さんが応えようとする都度、お父さんは状態を悪化させて、効き目の強い薬へと切り替えていくことになった、ということだと思う。


お父さんは良くなりかけては悪化する。


お母さんは、期待しては裏切られてを繰り返した。


疲弊しても、お母さんは、お母さんである以上、私と妹の前で、お父さんを責められない。


お母さんは、食卓では口数が減った。


お母さんは、お父さんを責めなかった。


お父さんを責めたのは、妹。


お母さんが側にいるのが当たり前だった妹。


どうして、妹は、毎日、食卓でお父さんをなじるようなことを口にして、お父さんに謝らせていたの。


最初は、やんわり妹を諌めていたけれど、すぐに止めなくなったお母さん。


お母さんに諌められなくなって。

妹は、毎日、お父さんに謝らせた。


その後は、必ず、私に叱られるのに、妹は、止めなかった。


お母さんが、妹を優先するのは、お母さんの癖、習慣だった。


お母さんが妹をたしなめるのを止めたとき。


お母さんは、妹をたしなめるのに疲れたのかと、私は思った。


習い事に関係ないことで、妹をたしなめたくなかったんだろう、と。


妹にお父さんを攻撃させる行為を、何としても止めさせたい、と私は思った。


妹がお父さんを傷つける行為は、家族の誰のためにもならない。


お父さんは、ごめんね以外の言葉を言える状態じゃなかった、おそらく。


ごめんね以外の言葉を言える状態でも、お父さんは、ごめんね、を選んだと思うけれど。


そんな風に考えていたら、光明がさした。


お父さんがいるときは、お母さんは、妹にかかりきりになるのが常だった。


お母さんと妹の関係は、お父さんがいたときも、いなくなってからも変わっていないことに、私は気づいた。


私は、妹の言動が不可解だと思い始めた。


毎日、お父さんに、ごめんね、を言わせたかったのは、本当に妹?


お父さんのせいで、と続けられなかった習い事について何年も引きずったまま、妹は、小学生から中学生になってしまった。


習い事のお友達とは、もう会えない、生活が違いすぎて、あの中にいられない。


もっと、才能が伸ばせたのに。


これからだったのに。  


そう嘆きたかったのは、誰?


私は、その考えにたどり着いたとき。


一本の糸が繋がった、と思った。


妹は代弁者に過ぎない。


妹を隠れ蓑にして、お父さんに謝らせていたのは。


お父さんが謝りつづけることを望んだのは。


お母さんだ。

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