表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/57

11.お父さんを連れて帰ると告げると、勝手に決めるなと言う妹。妹の気持ちを考えなさい、というお母さん。考えるのは、妹の気持ちだけ?

私がウキウキと報告するのと対照的に、お母さんと妹の反応は悪かった。


驚くこともなく。

喜ぶこともなく。


「へー、そうなんだ。」

と妹。


妹は、心底、どうでもよさそう。


お父さんについて、何も聞いてこない。


「良かったね。」

とお母さん。


お母さん。

良かったねって、私が会えて良かった、という意味?


お父さんについて、お母さんから何も言うことはないの?


元気だったかどうか、気にならないの?


お母さんと妹の反応は、私が予想していたものとあまりにも違っていた。


よく分からないモヤモヤしたものを打ち消したくて、私は明るく言った。


「明日は、私、お父さんと帰ってくるから。

明日から、お父さんと暮らせるよ。

家族四人、また一緒だね。」


お母さんと妹は、動きを止めた。


どうしたの?


嬉しくないの?


お父さんが帰ってくると聞いて。


妹は、わざとらしいため息をついた。


「お姉ちゃん、何を勝手に決めているの?お姉ちゃんだけの家じゃないよね?」


妹からは、お父さんの帰宅を歓迎している様子はうかがえない。


「勝手も、何も。お父さんは、家族だよ。私達のお父さんだよ。元々、四人で一緒に暮らしてきたよね?」


「前は、そうだけど、今は違うじゃん。今さら帰ってきて、家族ヅラされても、何様のつもり、なんだけど。」


「何様って、何を言っているの?お父さんだよ!」


私と妹の口論が始まりかけたとき。


「お父さんは、帰りたいって?

帰ってくるってお父さんが希望しているの?」

とお母さんが、静かに聞いてきた。


「お父さんは、帰れないって言っていた。私が、お父さんに帰ろうって言ったんだよ。」


「じゃあ、帰るのは待ってもらって。」

とお母さん。


お母さん?


「なんで?お父さんに早く帰ってきてほしくないの?」


私は、早く一緒に暮らしたい。


「妹の気持ちを考えてあげなさい。」

とお母さん。


妹は、お母さんの隣で、いつも通り。


ぷつん、と私の中の何かが切れた。


「妹の気持ち?

考えるのは、妹の気持ちだけ?


私達は、家族だよ。


四人いるんだよ?


お母さんの気持ちは?


お父さんと私の気持ちは?


家族の中で考えるのは、妹の気持ちだけ?」


妹は、箸を置くと自室に向かった。


お母さんは、妹が席を立っても何も言わない。


お母さんは、お父さんが家にいるようになってから、食卓で喋らなくなった。


お父さんが家からいなくなってからは、妹と喋るようになった。


私と喋るのは、必要なときだけだよね、お母さん。


お父さんが仕事に行っていたとき。

お母さんは、うるさいくらいに、妹の行儀について指摘しては、直すようにと言っていた。


妹に、うるさいくらいに言わなくなったのは、妹が習い事を辞めてから。


お母さんは、妹が可哀想なの?


妹だけが可哀想なの?


違うよね?


妹が可哀想なら、姉の私も可哀想だよ。


お母さんだって、可哀想だよ。


うちの元祖可哀想は、お父さんだよ。


お父さんは、望んで可哀想になったわけじゃないんだから。


妹とは違う。


妹は、可哀想になろうとしている。


妹は、可哀想にならなくても、生きていけるのに。


だから、私は、妹に言うんだよ。


可哀想に浸るなって。


お母さんが、言わなくなったから。


お母さんは、生きていくことに疲れているよね。


「お父さんは、私達と一緒にいることを諦めないために頑張ったの。」


私は、お母さんに伝えた。


実月みつきは、お父さんと暮らしたいの?」

とお母さんは、ゆっくりと息を吸って吐いて、した後に聞いてきた。


「私は、四人で暮らしたい。」


「じゃあ。先に、お母さんの話を聞いて。」

とお母さん。

楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の☆で応援してくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ