表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/63

捕獲して

 巨大な鎖が飛んで来てテュポーンに絡まり付くと、テュポーンは思わず地面に手を付いた。


「うっ!」


 その時に起こった風圧によって、俺らは物凄い速度で吹き飛ばされる。

 何とか受け身を取ると、吹き飛ばされたおかげでテュポーンがどうなってるのかが遠くからよく見えた。

【召喚(召喚士)】達がいた場所から、一つ一つの環状(かんじょう)の部品の大きさが大きな山程ある鎖が飛び出していた。


「あれが……【召喚(召喚士)】さん達の力……」

「うん。凄いでしょ?」

「ははは……凄すぎるよ」


 その水色の鎖はまるで制限を知らない様にとんでもない速度でポンポンとテュポーンへと向かって射出され、テュポーンの体へと巻き付いていく。

 あんな魔法、見た事がない。

 あの深層のモンスター達の魔法やスキルでさえ、あれの足元にも及ばないだろう。


「ともかく、これで俺らの任務は終わりだ、本当にお疲れ様、マスター」

「いやいや、【召喚(召喚士)】さん達が沢山助けてくれたお陰だよ、本当にありがとう」

「どういたしまして。それじゃあ、あの鎖を出してる第三隊の所に行こう。報告したら多分あの街に戻って休めるからさ」

「了解」


 そうして、俺らは第三隊の【召喚(召喚士)】さん達がいる場所へと向かった。


「よっ…………あっ、マスター!」


 そう言う彼の手から、小さな水色の鎖が出てそれが第四隊の方へと飛んでいくと、他の鎖と混ざり合い、巨大な一本の鎖となってテュポーン目掛けて飛んでいく。


「うわぁ……遠くから見ても凄かったけど、近い所で見るともっと凄いね」

「まだまだ出してくよー。はっ、ほっ」


 次々と出される鎖は、いつしかテュポーンの姿が見えなくなるほど巻き付いていた。


「よぉーし! そろそろ引っ張るぞ! 第四隊! 頼むよ!」

「「「「「おるあぁぁぁああああ!」」」」」


 そんな声が聞こえてくると、ゴゴゴゴという物凄い地響きと共に、テュポーンがこちらに引きずられて来ていた。


「え、えぇ!?」


 あんな巨体が……いとも簡単に……!?


「あの鎖が完璧に巻き付いたら、後はこっちのもんなんだよ」


 こっちものってレベルじゃないんだが!?


「まあ、俺らがスキルだから出来る芸当である事は間違い無いんだけどね」

「? どういう事?」

「俺らはスキルだから、基本的にこの世界では思いのままなんだ。まあ、あのテュポーンみたいに手こずる奴はいるんだけど」

「へぇ……」

「だから基本的には、まず脱走される事自体がないんだけど、万が一脱走されても数人でちゃちょいと捕まえられるのさ。さてと、ここは第三隊と第四隊に任せて、俺らは街に戻って休もう」

「分かった」


 俺らは街に戻り、あの半球のガラス張りの場所までやって来た。


「いやぁー、一仕事終えたねぇー」

「だね」

「本当にありがとうマスター。マスターがいなかったらヤバかったよ」

「いやいやいやいや! 皆んなの方が物凄い頑張ってたよ!」

「はははは、そうかも知れないけど、マスターの尽力が無かったら、もしかしたら死者が出てたかもしれないし」

「……俺、何か出来てた?」

「もちろん! マスターがテュポーンを引き付けてくれたりもしたし、何だかんだあの文字通りの決死の覚悟でテュポーンの情報を取ってきてくれたりもしてくれたから、物凄く助かったんだ」

「そ、そうなんだ……それなら良かった……」


 ちゃんと役に立てれてて良かった。

 でも、彼らくらい強くなりたいな。ぶっちゃけ足を引っ張っちゃってる時もあったし。


「だから大丈夫だって、皆んな言ってるでしょ? いつかはここまで来れるって」

「で、でも……」

「「「「「召喚主様ぁー!」」」」」


 突如、背後からそんな声が聞こえて、見るとテュポーンの所へ行く前に俺の事を見てキャーキャーと言っていた女性達が俺の事を呼んでいた。


「召喚主様! ご無事だったでしょうか!?」

「テュポーン捕獲なんていう命懸けの作業、本当にお疲れ様でした!」

「お疲れでしょう? 私が休ませてあげます!」

「あっ、ずるーい! 私が休ませてあげます!」

「わーたーしーでーすー!」


 やいのやいのと言い合う女性達。

 なんか、こんな美女達が俺を取り合っていると考えると……めちゃくちゃ嬉しいな!?


「こらこら! マスターの前で行儀悪くしない!」

「「「「「ご、ごめんなさい……」」」」」


 そう言って謝る彼女達。

 いや、もうちょっと続けてても良かったんだよ……?


「それじゃあ、僕が休ませるから、君達は寮に戻ってて」

「「「「「はぁーい」」」」」


【召喚(召喚士)】さんがそう言うと、皆んなはそう返事して少し【召喚(召喚士)】さんを羨ましそうに見ながらどこかへ歩いて行った。


「ごめんねマスター、普段はあんな感じじゃないんだ。本当だよ?」

「いやいや、疑ってないよ。皆んないい人そうだったしね」

「良かったぁ。そう思われちゃったら、召喚した時すっごい気まずくなっちゃうだろうから」

「確かに」

「さてと」


 彼はそう言って近くにあった椅子に座った。


「それでマスターはどうしたい?」

「どうしたいって?」

「現実に帰るか、もう少しここにいるか」

「今って現実は何時くらい?」

「えーと……大体十二時くらいかな」

「え!?」


 お、俺とんでもない時間寝てるじゃないか!?

 間違いなくエリシア達に心配をかけちゃってる……!


「い、今すぐ起き――」

「あぁ、()()のね?」

「……ん?」


 夜中の……十二時?

 俺が宿に帰って寝た時間と同じくらいだ。


「それもそのはず、なんとこのスキルの世界にいる間、マスターの現実時間は進んでいないのだから!」

「な、なんだってぇー!?」


 ちょっと大袈裟に俺は驚く。

 いやいや、普通にこのくらいのリアクションをとっても良いくらいの事じゃないかこれ!?

 だってここなら無限に練習出来るし、【召喚(召喚士)】さんっていう練習相手になってくれそうな心強い人達もいるし、神話級モンスター達なんかを見て回る事だって出来る!

 そう考えたら夢の様な場所だなここ!?


「でも気を付けてね。ここに長居しすぎると戻れなくなるよ」

「……どういう事?」

「このスキルの世界はスキルの者達以外をあまり好まないんだ。今回の件に関してはマスターの力が必要だと判断した僕らと【召喚ゴブリン】君が呼んだ訳なんだけど、本来であればマスターはこの世界に踏み入る事はまずないんだ」

「そ……そうなんだ……」


 良い練習場だと思ったんだけどな……。


「ま、ちゃんと時間を守ればマスターの思う良い練習場にはなるだろうね」

「? どういう事?」

「このスキルの世界が見るのはマスターがここにいた累計時間ではなく、()()()()()()()()()()()なんだよ。だから、ちゃんと時間を守って出入りすれば、この世界がマスターに何かする事はないよ」

「……もしもその居て良い時間を過ぎちゃったらどうなるの? 戻れなくなるって言ってたけどもうちょい具体的に……」


 単純に疑問に思って聞いたのだが、そう言うと彼は顔を少し曇らせてしまった。


「あっ、いや、言いたくないなら別に……」

「あぁー……そうだなぁ……なんていうんだろ。この世界のものになっちゃう? って言うのかな」

「え」


 何それ怖い!?


「そうなりたくなったから、ちゃんと時間を守ってね? マスター」

「分かった」


 まあでも時間を守るだけで良いなら、本当に良い練習場だなここ。


「そう言えば、あと俺が居て良い時間ってあとどのくらいなの?」

「えーと、大体一時間とかそこらじゃないかな」

「一時間!?」

「結構この世界に居て貰っちゃったからねー。まぁそんなもんだよ。それに大丈夫。帰る時は一瞬だから」

「じゃ、じゃあ大丈夫……か?」

「うん」


 でもあと一時間か……三十分くらい練習させて貰っても良いかな?


「良いよ」

「えっ、あっ、ありがとう!」


 そうだ、彼ら俺の心読めるんだった……。


「んじゃあどこら辺が良いかな。俺らがいつも彼女達に教えてる学校みたいな所があるから、そこでやろうか」

「オッケー」


 そうして俺は【召喚(召喚士)】さんと共に、この世界の学校へと向かった。


「ここだ」

「こ、ここ!?」


 そこはとてつもなく広い公園の様な場所で、ちゃんと遊具なんかもある中、植物が生い茂っている箇所あり、これが学校なのかと思った。


「あ、本当の学校にこんな立派なグラウンドはないからね?」

「グラウンド?」

「この屋外の場所の事」

「へぇー……」


 まあ確かに物凄い広さだからな……そりゃそうか。


「じゃ、ここで練習する訳だけど……なんの練習がしたいの?」

「そうだなぁ……やっぱり単純な基礎体力と基礎筋力と、受け流し力を鍛えたいんだけど……あんまり時間ないから今回は受け流し力だけ鍛えようかな」

「りょーかい! じゃあ俺が相手になるよ」

「良いの!?」

「もちろん! マスターの練習に付き合えるのは俺らからすれば最高の事だからね! それじゃあ……」


 そう言うと、彼は周囲を見渡して、木の下に落ちていた程良い長さの木の枝を拾った。


「俺がこの木の枝でマスターに攻めるから、マスターはそれを受け流して」

「分かった」


【召喚(召喚士)】さんの強さはエゲツない。

 だから、あの木の枝相手でも俺は間違いなく苦戦するだろう。

 でも、それが練習というものだ。頑張らないと。


「行くよ……」

「ばっちこい!」

「……ふっ!」


 瞬間、彼が消えた。


「!?」


(モグラビトやアリスさんよりも断然速いっ!)


 分かってた事だけど!


「ぐぁっ!」


 そして、木の枝が俺の腕にぶつかる。

 痛っったい!? むちゃくちゃ痛いなんだこれ!?


「マスター、この速度くらいには対応できないと、深層の中の更に奥、深淵のモンスターに簡単にやられちゃうよ?」


 逆にいつ行くんだそんなとこ!?


「備えあれば憂いなしって事で……次行くよマスター!」

「うおぉっ!?」


 俺はもうほぼ心眼の域で体を仰け反らせ、その目の前を木の枝が通過していったのを風圧で感じた。


「おっ、良いね良いね、でも勘だけじゃダメだ……よっと!」

「うぐっ!」


 短剣を構えてはいるのだが、見えない神速の一撃によって受け流す事が出来ない。

 ていうかあれ本当に木の枝か? 金属で出来たハンマーかと思うくらい重いし痛いんだが?


「当て方と振り方と握り方だよ。まあこれは今のマスターには少し早いけどね」


 そうか握り方か……あまり握り方とかに意識した事は無かったな……自分が良いなと思ってる握り方をしてるだけで……。


「今はそれで良いよ。さて、もう一回行くよ!」

「うわぁぁぁ!?」


 その後、俺は【召喚(召喚士)】さんにこってりと絞られたのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ