特訓
翌日、昨日の爆発事件の事を事情聴取されて、俺は宿へとヘトヘトになりながら帰った。
「ルイド様! ど、どうでしたか……?」
「色々と聞かれたよ……爆発時の状況、あの女の子の状態。そして……俺を襲って逃げた奴の詳細」
「……」
ベットに横になり、俺は腕を額に乗せた。
「ともかくお疲れ様でした。お水要りますか?」
「そうだな……ちょっとお願いしてもいいかな。流石に今日は疲れた」
「かしこまりました」
そう言ってエリシアは酒場へ水を取りに行く為に部屋を出て行った。
「ル、ルイド様」
「ん?」
「ルイド様を襲った人って……一体何者なんでしょうか?」
「分からない……でも……」
俺は昨日、俺の攻撃を受け流されたシーンを思い浮かべる。
「物凄く強かった。それだけは分かる」
「っ!」
何度思い浮かべても、彼と一対一で勝てる気がしない。
まあ俺は召喚士だし、いざとなったらゴブリン君でも召喚すれば良いのだが、今はそういう話ではない。
「ルイド様……」
「大丈夫だラルム。俺は別にメンタルボコボコになったりはしていないよ」
「そ、そうなんですか?」
「ああ。というか……ダンジョン内でもそういうの色々あったからね……」
あの鹿のモンスターの事は忘れない。まさか角を発射しまくって受け流しても誘導ミサイルの如く追尾して来て……上手く受け流さないと爆発するとかいう俺の受け流しが全く効かないモンスターだったからな……。
あれはちょっとメンタルやられた。
「色々……」
「そう。色々」
「まあともかく、ルイド様の精神状態が安定しているなら良かったです」
丁度その時、エリシアが部屋の中に入って来た。
「お待たせいたしましたルイド様。お水です」
「ありがとうエリシア」
水を飲み、息を吐く。
そしてすぅーっとゆっくり吸い、ゆっくり吐く。
「よぉし! 今の水で疲れもなんか吹っ飛んだし、ちょっと特訓してくる!」
「え!? ルイド様!?」
「ル、ルイド様ぁ!」
俺は部屋から思いっきりダッシュで出て行き、アリスさんの家へ直行した。
もちろんアリスさん自身がいるとは思っていない。
実際今日事情聴取であれだけされたのだ。アリスさんが忙しく無いわけがない。
お目当てはアリスさんの家の――
「すみません!」
「ん? これはこれは、ルイド様。どうされましたかな?」
俺は庭にて手入れをしていた執事さんに声を掛ける。
「すみませんけど、特訓がしたくて、庭を貸して貰えませんか?」
「特訓……と、言いますと?」
「強くなる為の特訓です」
「……なるほど、深くは聞きませんが……流石にご主人様に無断で庭を貸す事は出来ません……」
「で、ですよね……」
なんかテンションがおかしくなってこんな事を言ってしまったが、流石にダメだった。
「ですが……」
「?」
「この家の近くに大きな公園がございます。そこにて練習されるのはいかがでしょう」
えっ、この近くに公園があったのか!
「ありがとうございます! そこに行って特訓して来ます!」
「お気を付けて」
そうして俺は、執事さんに言われた公園へと向かうのであった――。
◾️ ◾️ ◾️
「よぉし……」
公園に着き、邪魔にならない様隅に寄る。
不思議な事に、本当に宿に行くまでにあった疲労感が全く無い。
これなら、良い特訓が出来そうだ。
「ふっ!」
まずは普通に基礎的なトレーニング。
腕立て伏せ、バービー、腹筋、まあそんなところだ。
それを高速で百回ずつやり、一旦休憩。
因みにだが、レベルが上がりまくったおかげがこのくらいやっても殆ど疲れを感じない。
「さてそれじゃあ……本格特訓開始だ!」
そう言い、俺は目の前に想像上の敵を出す。
お相手は、深層で出会ったモンスターの中でも最も普通の人族に形が近い奴だ。
「すぅー……はぁー……」
短剣を抜き深呼吸する。
「っ!」
そして目の前のヒトガタと戦い始めた。
もちろん想像上の為短剣に攻撃の重みが加わる事は無いが……本当に乗っかっていると錯覚するほどには頑張って想像している。
「見てあの人……」
「うわなんだあの動き!?」
「早すぎて見えないんだけど!?」
「綺麗な動きだな……」
周りの人が何か言っている気がするが……集中だ。もっと集中出来る様にならないと。
『ドゥチチチチチチチチチ』
ヒトガタがそう鳴き、更に攻撃頻度を速めてくる。
大丈夫……まだ全然ついていける……!
ひたすら受け流し、何度もヒトガタの首を斬り裂く。
いやでもまだだ……俺ならもっと速く出来る……!
受け流しのスピードじゃなくて……攻撃するまでのスピード……素早く、受け流しとほぼ同時……いや、受け流しと同時に……。
「!」
一つ、良い案を思いついた。
『ドゥチチチチチチチチィィィィィィイイイイイイイイイ!』
ヒトガタが大声で鳴いて物凄い勢いで腕を振り下ろしてくる。
「はぁっ!」
その時、攻撃を受け流した短剣が、そのまま相手の威力を借りて首を斬った。
「で、出来た……!」
これだ! 間違いなくこれだ! これならば受け流しと同時に斬れる!
「よし! あとはこれをものにするだけだ!」
そうして俺は、その後も何度もヒトガタに向かって短剣を振るい、何とかやろうと思えば出来る程には出来る様になったのであった。




