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冒険者ギルドにて

「あの……何でしょうかこれは……?」


 カウンターに出したデカスイショウガニの腕を見て受付嬢さんが戸惑いつつそう言った。


「えっと、デカスイショウガニ……いや、正式な名前は知らないからそう呼んでるだけなんですけど、ともかく水晶のダンジョンにいた巨大な蟹のモンスターの腕です」

「な、なるほど……」


 こう受付嬢さんは困ってはいるが、これでも大分少なめにした方なのだ。

 元々このデカスイショウガニの腕は5mほどはあり、そんな物持って帰るわけにはいかないので三分の一くらいの大きさにした……のだが、それでもこの反応らしい。

 うーん……まず持ち帰ったのが失敗だったか……?


「えーと、目立っちゃってるんで、出来れば早急に換金して欲しいんですが……」

「あっ! はい! かしこまりました! 少々お待ちくだ――」

「おっとそうだ、忘れるところだった。これらの換金もお願いします」


 そう言ってポーチの中から近くにいたスイショウグモの脚や付着していた水晶を取り出す。


「エリシア達のは俺に渡して。今ここで出すと流石に多過ぎて迷惑になっちゃうから今度俺が換金しとくよ」

「かしこまりました!」

「分かりました!」


 エリシア達の分を受け取り、俺は受付嬢さんに向き直る。


「……」


 受付嬢さんがギョッとした表情をして、デカスイショウガニの腕を数人がかりで奥へと運んで行った。

 い、今のは「まだあるんかい!」って顔だったな……ごめんなさい受付嬢さん。まだあるんです。


「さてと、ひとまず換金して貰えそうだし良かった」

「ですね! ここまで頑張って持ってきたのに換金できなかったら悲惨でしたからね!」

「だな」

「そう言えば、冒険者カード、何も言われませんでしたね」

「あぁ……確かに」


 ヨロプに来る前にピロさんに貰ったあの偽冒険者カードのお陰で、いちいち俺のレベルが高い事で驚かれないのは何と言うか凄く良い。

 受付嬢さんが驚く度、周りからの視線が俺に突き刺さるからな……まあ、さっきもそうだったんだけど。


「ルイド様、お待たせいたしました」


 その時、奥から受付嬢さんが戻って来た。


「こちらが今回のクエスト達成報酬と、先程のジャイアントクリスタライブの腕やその他諸々の換金結果になります」

「ありがとうございます……っ!?」


 横を見ると、これまたかなりの量の大金が入っていそうな袋が。


「あの、これですか?」

「そうです。それです」

「ちょっと多くないですか……?」

「多くありません。現在ジャイアントクラスタライブの殻やその他諸々の値段が高騰(こうとう)しておりまして、その結果です」

「そ、そうですか……」


 まあ確かに実際かなり頑張ったけど、まさかここまで貰えるとは……。

 銀貨が十……二十……ともかくとんでもない量だ。

 間違いなくこの間アリスさんに奢った分以上はある。

 ……うん、高かったなあれは……。


「またのお越しを、お待ちしております」


 受付嬢さんに遠回しに帰れと言われたので、エリシア達と共に去ろうとしたその瞬間――


「おや? ルイドか?」


 と、呼び止められてしまった。


「あれ? アリスさん?」


 俺らを呼び止めたのは、少々疲れた顔をしたアリスさんだった。


「どうしてこんな所に?」

「それは私のセリフだ。君は今日調査とかそう言うのは無しだったはずだろう?」

「そうです。なので特に予定も無かったので、久しぶりにクエストでもやろうかなと……」

「き、君って奴は……折角の休暇をクエストに使うなんて……普通こういう日はショッピングしたりするものだろう? 特に女性の仲間がいる時は」


 え、そうなの?

 で、でも確かに、最近冒険者ギルドのクエストやってなかったし、久しぶりに体も動かせたしで俺にとっては悪い事無しなんだけど、エリシア達にとっては……。

 チラッとエリシア達の方を見る。


「ニコッ」

「ニコニコ」


 うわっ! 笑顔が眩しい!

 でも笑ってくれたってことは……不機嫌じゃあないって事だよな?

 良かった……今度は絶対商店街とかに連れてってあげよう。


((次は期待してますよ、ルイド様!))


「そう言うアリスさんは何故ここに?」

「私はちょいと人探しだ。ほら、冒険者ギルドには酒場があるから色々な人が集まるのでな」

「なるほど」

「まあ、成果という成果は何も無かったんだけどな……」


 ここほど情報が集まる場はそう無いのに……それでも手に入らない情報って何だろ?


「ここであったのも何かの縁だ。君達さえ良ければなんだが……少し飲みに付き合ってくれないか?」

「……エリシア、ラルム……どうする?」

「私はルイド様が良いのであれば」

「わ、私も同じくです!」

「ルイド、君は?」

「俺はもちろん、オーケーですよ」

「よし来た! ならば早速行こう!」


 そうして俺らは隣の酒場へと移った。


「私が誘ったからな、今回のは私の奢りだ」

「ありがとうございます。じゃあ俺はモヒートを貰います」

「いいのか、そんなので?」

「はい。俺はあまりお酒に強くないので……」

「そうか。エリシアちゃん達は何にするんだ?」

「申し訳ありません。私達はお酒が飲めないのです」

「すみません。私もです……」


 二人が申し訳なさそうにそう言う。


「えっ、そうなの?」

「はい…… 〝私達〟はお酒が苦手なんです」

「苦くて酔っ払ってしまうので……」

「じゃあジュースにしようか。何が良い? ジンジャエールとかリンゴジュースがあるけど」

「では私はジンジャエールを」

「私はリ、リンゴジュースを」

「それじゃあ私はニホーシュを頂こうかな」


 ニホーシュ? 聞いた事も無いお酒だな。


「くはは、何だその酒はって顔だな」


 バ、バレた……! やっぱり俺顔分かりやすいのか……?


「私の生まれ故郷の酒なんだ。この大陸からずぅーっと東にあってね。最近まで鎖国していた影響で輸入されていなかったんだが、ようやく輸入されたらしくてな。全く今からあの酒が飲めると思うと楽しみだ」


 へぇ……アリスさんはそんな所から来たのか……。


「あぁすまない。ニホーシュ十本とモヒート、後はジンジャエールとリンゴジュースをくれ」


 アリスさんがそう店員さんに注文すると、店員さんはこちらを何回も振り返りながらカウンターへと帰って行った。


「ア、アリスさん? 十本って聞こえた気がするんですけど?」

「ん? ああ、十本って言ったな」

「ニホーシュってそんなに小さいボトルに入ってるものなんですか?」

「いいや。この国で売られてるワインと同じくらいの大きさボトルに入ってるな」

「それを……十本?」

「そうだが、何だ?」


 アリスさん……! 大食いだけじゃなくて酒豪でもあるのか……!?

 十本て……いやいや、とんでもない量だぞ!?


「ルイド君はそのくらい飲まないのか?」

「まず飲めませんよ」

「そうなのか!?」

「アリスさん。貴方が大食いなの自覚して下さい」

「うっ……いやまあ……自覚はしてるんだがな……? 私も女だ……あまり認めたくないじゃないか、そういうの……」


 そういうもんなのか?

 隣を見ると、エリシア達がコクコクと「分かるわぁ〜」という感じに頷いていた。

 えっ!? 本当にそういうもんなの!?

 お、女心って難しいな……。


「お、お待たせいたしました……」


 そんな事を話していると、大量のニホーシュと俺らが頼んだジュース類を店員さんが持って来てくれた。


「ありがとう」

「は、はいっ」


 店員さんはスタコラとカウンターへと行ってしまった。


「それじゃあ、飲もうか!」


 そうしてアリスさんはニホーシュを一本開け……


「乾杯! グビッ、グビッ」


 ラッパ飲みし始めた。


「アアアアリスさん!? ラッパ飲みは危ないですよ!?」

「んん? いつもこんな感じだから大丈夫だ。ルイドもじゃんじゃん飲んで良いぞ」

「いやいやいやいやそれでも危ないですから!」

「全く……なら仕方無い。ラッパ飲みはやめるよ」

「ほっ……」


 良かった……ラッパ飲みは本当に危ないからな……アリスさんに大事がなる前に止めれて良かった……。


「じゃあ牙飲みにするよ」

「……牙飲み?」


 そう言うと、アリスさんはニホーシュを二本持ち、口の左右に当てて飲み始めた。

 確かに、ボトルが牙に見えるな……じゃなくて!


「余計ダメですよ!」

「くははは! 冗談だ冗談」


 そんな会話をしながら、俺もモヒートに口を付ける。

 うん、爽やかで物凄く美味い。

 エリシア達を見てみると、とても美味しそうにジンジャエールとリンゴジュースを飲んでいた。

 めっちゃ可愛いな……。


「くはは、いやぁー、ルイドは揶揄(からか)い甲斐があるなぁ」

「えぇ……勘弁して下さい」

「くはははは! 善処するよ!」


 そうして、俺らはアリスさんとは対照的にちまちまとお酒やジュースを飲むのであった。


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