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スライム討伐クエスト

「ふぁ〜……眠い」


 欠伸(あくび)をしながら起き上がる。

 こういう固い所で寝るのは、ダンジョンですっかり慣れてしまった。

 むしろダンジョンのあのゴツゴツ地面に比べれば、こっちは天国レベルだ。


「おはようございます。ルイド様」

「おはようエリシア。早いねぇ」


 まだ朝の六時くらいなのに。


「主様より早く起きるのが、仕える者の使命ですから」

「へぇ……」


 そういうもんなのか。


「それでルイド様。本日は何をするご予定なのでしょうか?」

「今日は昨日受付嬢にお願いされた通り、クエストを受けようと思ってる。お金も稼げるしね」

「分かりました」

『アォ〜ォン』

「おっ、起きたか」


 大きな欠伸をしたキーちゃんをわしゃわしゃと撫でる。


『クゥーン』


 お腹を出してもっと撫でて〜とやって来たので、もっとわしゃわしゃする。


「……」


 ……エリシアよ、何故俺をそんな目で見る?

 なんか少し怒ってて羨ましそうな目をしてるぞ?

 エリシアがブラッシングをし終わり、俺らは宿から冒険者ギルドへと向かう。


「さてと、どれにする?」

「わ、私が決めてよろしいのですか?」

「別に構わないよ。ぶっちゃけ俺は君を普通に対等な仲間だと思ってるし」

「で、でしたら……その……」


 エリシアがモジモジしだす。


「どうしたの?」

「えっと……あれが良いです……」


 そう言ってエリシアが指差したのは『スライム討伐 冒険者ランク:E 報酬300B(ベジナ)』というクエストだった。


「分かった。じゃあこれにしよう」


 掲示板からその紙を取り、受付嬢さんの所に持って行く。


「すみません、このクエストを受けたくて……」

「かしこまりました。詳細はこちらを。期限は明日の午後までです。お気を付け下さい」


 受付嬢から渡された紙を読む。

 なるほど、この街の外に広がる草原にスライム顔大量に()いたから、討伐して来て欲しいってクエストか……。


「それじゃあ行こうか」

「はい!」


 俺らは冒険者ギルドを出て、その草原へと向かった。


 ◾️ ◾️ ◾️


「……うわぁ……」

『『『『『プヨヨンプヨヨン』』』』』


 見渡す限りスライム、スライム、スライム。

 本当に物凄い数だ。

 あの街に来る前はここまでいなかったのに……。


「これは……倒し甲斐(がい)がありそうだ」

『ア゛ォン! ア゛ォン! ア゛ォォン!』


 キーちゃんはもう早速スライムを倒し始めていた。


「それじゃあ俺たちもやろうか」

「はっ、はいっ!」


 エリシアがスライムに向かって走っていく。

 そして……


「ほわぁぁ〜!」

「!?」


 スライムを抱きしめていた。


「もちもち〜! スベスベ〜!」

「エ、エリシア……?」

「はっ!」


 ゆっくりとエリシアがスライムを抱えながらこちらを向く。

「えっと……ルイド様、これはその、違くてですね……」

「……エリシア」

「……」

「もしかして……スライム、好きなの?」

「……はい」


 エリシアが持っていたスライムに顔を(うず)める。

 顔を全部隠しているつもりだろうが、少しだけスライムから頰がはみ出ており、真っ赤っかだった。


「別に気にする事無いよ」

「え?」


 エリシアが顔を上げた。


「スライムが好きなら、全然構わないよ。まあ討伐しなきゃなんだけど、期限まではまだあるし、それまでそうしていて良いよ」

「そんなっ! 流石にそれは悪いです!」

「いやー、あれ見てよ」

「?」


 俺が親指を差した方向には……


『ア゛ア゛ォォォォォォォン!』


 物凄い速度でスライムを倒すキーちゃんがいた。


「あぁ……」


 エリシアも察した様だ。


「まあそういう訳でぶっちゃけキーちゃんが全部片付けちゃいそうなんだ」

「なるほど、そういう事でしたか。でもキーちゃんにはダンジョンからずっと戦わせてしまっています……」

「確かにそうだけど……何というか、凄く楽しそうだ」

「そうですね」


 お互い同じタイミングで顔を見合わせ、ぷっ、と息を吹き出してその後二人で大笑いした。

 キーちゃんはその間もずっとスライムを倒していた。


『アォン!』


 ◾️ ◾️ ◾️


『プニプニ』

『プニョプニョ』


 いつの間にか、俺もスライムをモチモチし始めていた。


「エリシア」

「はい?」

「エリシアがスライム好きな理由がよく分かったよ」

「本当ですか!?」

「ああ、触感が最高過ぎる」

「そうですよね!」


 エリシアがスライムをギュッと抱いて、目をキラキラとさせて俺を見る。


「このフニョフニョ感や、このプニョンプニョン感が(たま)りません!」


 そう言ってエリシアは持っていたスライムを突く。

 何か、スライムから『シテ……コロシテ……』と聞こえる気がするが無視しよう。


「んふふ〜♪」


 エリシアはご機嫌でスライムに顔をスリスリとしている。

 何というか、この光景も絵画になりそうだ……。

 というか、エリシアがどこにいても絵画になる気しかしない。

 よくよく考えると、とんでもない美女と共に俺は今クエストを受けてるんだよな……。

 想像した事すら無かったな。


『プニプニ』


 スライムを左右から挟んでプニョプニョとやる。

 スライムは一応モンスターだが、ゴブリン以下の知能で、攻撃方法も精々体当たり程度しかないので、この様な事が出来る。

 それにしても……本当に癖になる触感だ……。

 マズイ、この道にハマったらマジで抜け出せなくなる。

 そう思った俺はめちゃくちゃ名残惜しいがスライムから手を離した。


『ア゛ォン!』


 そしてそのスライムはすぐにキーちゃんに倒されてしまった。

 ううっ、何か十分くらい一緒にいたから少しだけ悲しい……。


『ア゛ォォン!』


 キーちゃんがそう吠えて、俺らのところに寄って来る。


「ん? どうしたのキーちゃん?」

『クゥーン、クゥーン』

「もしかして……え、全部倒した?」

『アォン!』


 ……マジで言ってます?


 すぐに立ち上がって辺りを見回す。


「……うわぁ……」


 大量のスライムだったものが辺りにはあった。

 ハハッ、色んな色があるなー、アハハ。


「キーちゃん……」

『ア゛ウ?』

「凄すぎ」


 俺は改めて、神話級モンスターの凄さを思い知った。


「ふふ〜♪」


 そしてエリシアはまだスライムを抱きしめていた。


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