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 『レベルが15になった!

 "ちから"が63上がった!

 "みのまもり"が54上がった!

 "すばやさ"が48上がった!

 "まりょく"が46上がった!

 "かしこさ"が12上がった!

 "かっこよさ"が7上がった!

 "HP"が73上がった!

 "MP"が56上がった!

 "スキル"『二枚舌』を覚えた!

 "スキル"『早食い』を覚えた!

 "スキル"『尻軽』を覚えた!

 "スキル"『知ったかぶり』を覚えた!

 "スキル"『思い出し笑い』を覚えた!

 "スキル"『もらい泣き』を覚えた!

 "スキル"『貧乏ゆすり』を覚えた!

 "スキル"『歯ぎしり』を覚えた!

 "スキル"『生あくび』を覚えた!』

 

 「俺は敵を倒してねーぞ?」

 「でも私が敵を倒したって事は『ジンのパーティが敵を倒した』という事になるんじゃないか?」とイリス。

 あ、なるほど。

 ドラクエⅢでルビスの塔で『はぐれメタル狩り』する時にレベル1の仲間連れて行くみたいなモンか。

 イリスが倒したモンスターの経験値は俺にも入る訳だ。

 しかし俺が覚える『スキル』は本当にろくでもないな。

 『早食い』ぐらいしか使えそうなスキルねーし。

 そして"かしこさ"と"かっこよさ"の上がり方が明らかに鈍いな。

 それにしても俺弱すぎる。

 「ジン、お前弱すぎるぞ」とイリス。

 わざわざ言われなくても今、実感してたところだよ!

 「弱いのはしょうがない。

 ただ弱さを自覚してないのが致命的だ。

 その強さで自分より遥かに格上の敵の群れに特攻する・・・自殺行為だ」

 「じゃあどうすりゃ良かったんだよ!?

 まさかゴブリンの集落に連れて行かれるとは思わなかったんだよ!」

 「とにかく逃げるんだ。

 『死中に生を拾う』のだ。

 ただ特攻するだけでは能がない。

 そう言う意味では『突然膝をついて頭を下げた』のはなかなか良かったぞ?

 アレはゴブリンの意表をついていた。

 しかしその後の特攻がダメだ」

 まさかジャパニーズ土下座が評価されるとは。


 「ごめん、言葉足らずだった。

 『良好なコミュニケーションが取れる種族の集落に行きたい』んだ。

 こちらを獲物、敵と認識している種族は勘弁して欲しい!」

 「それならそうと言ってくれ。

 しかし、そう条件を出されるとかなり限定されるな。

 ・・・そうだな。

 では『獣人』の集落はどうだ?

 獣人はその昔から人間と取引をしたり、人間の用心棒を買って出たりしていると聞く」

 「それしかないの!?

 人間の集落はないの!?」

 「ない事はない。

 2つ人間の集落がある。

 1つは排他的で集落の者以外に問答無用で攻撃を仕掛ける集落。

 もう1つは食人族(マンイーター)の集落。

 どちらが良いんだ?」

 「獣人の集落でお願いします!」

 日本にもあるもんなー。

 『よそ者を祭には参加させない』って村が。

 そういう閉鎖的な集落がホラー映画の題材になりやすいし、人間だから安全なんて話じゃないんだろうな。


 ゴブリンは薬草とは違う草の束をいくつかドロップした。

 きっとドロップがあった時に頭の中にアナウンスがあったんだろうが、必死で鉄パイプを振り回してたので、アナウンスを聞いていなかった。

 だって、俺の攻撃がゴブリンに全く当たらないんだもん。

 必死にもなるじゃん。

 ゴブリンが落とした草の束は『毒消し草』だとイリスが教えてくれた。

 何でイリスが獣人の集落を最初は避けたのか?

 獣人の集落の近辺はモンスターが強いらしい。

 「ゴブリンより強いのか?」と聞くと「ゴブリンは弱いじゃないか」との事。

 悪かったな、俺はゴブリンに全く歯が立たなかったよ!

 「ごめん、多分俺、獣人の集落の近辺に今、行ったら死ぬわ。

 イリスが守りながら、獣人の集落にいけるぐらいに俺を鍛えてくれない?」

 『甘ったれるな!』と言われると思い込んでた。

 「わかった。

 私がジンを鍛えれば良いんだな?」意外にもイリスは二つ返事だった。

 「腹が減ったな。

 鍛えるのも兼ねて食材狩りに行こうか?」とイリス。

 確か、エルフは肉を食べない。

 鍛えると言っても、木の実を採ったり、キノコを集めたり・・・って感じだろう。


 「おかしい」

 「何がだ?」

 「イリスは肉を食うのか?」

 「食うに決まってるだろうが。

 私は弓矢を扱うのだぞ?

 狩った動物を食わないと思うのか?」

 そういえばそうだ。

 「・・・で、何を狩るんだ?」

 「ホワイトベアだ」

 「白熊じゃねーか!

 そんなもん狩れるか!

 だいたい狩れたとして二人で食いきれるか!」

 「大丈夫だ。

 食べきれない分は保存食にしたり、獣人の集落で売ったりする。

 毛皮や内臓など、ホワイトベアに無駄な部分などはない」

 「そんな事を言ってるんじゃねえ!

 俺に熊が殺せる訳がないだろうが!」

 「大丈夫だ。

 私がサポートする」

 「それにしても無茶苦茶だろ!」

 「ジンはもしかしてスライムを沢山倒せば、レベルが上がる、とか思っていないか?

 それではどれだけ時間がかかるのだ?

 しんどい思いもしないで、短期間で強くなれると思っているのか?」

 俺はギクッとする。

 俺はどこかで『しんどい』『危険』が避けられると思っていた。

 着実にレベルアップしようと思ったらしんどいし、手早くレベルアップしようと思ったら、命の危険があるのは当たり前なのだ。

 俺が『獣人の集落に行きたい』と言うから、手早くレベルアップする手段としてホワイトベアの討伐をイリスは提案した。

 何も無茶な事は言っていない。

 無茶なのは『低レベルなのに獣人の集落に行きたい』と言った俺だ。

 「・・・俺が何をすれば良いのか教えてくれ。

 俺はアホだから、イリスが『言わなくてもわかる』と思っている事が理解出来ない。

 俺が一人で熊を狩れないのは考えるまでもない。

 狩りはイリスが主体になる。

 俺に出来るのは『囮になる事』だろう。

 逆に『これは絶対にやるな』という事も教えてくれ!」

 「アホだ、アホだと思っていたが、少しは頭が回るみたいだ。

 そうだな、ホワイトベアから逃げる時は必ず"下"に逃げるようにしろ」

 「下?」

 「そうだ、ホワイトベアは登るのは得意なのだ。

 でも図体の大きいホワイトベアは降りるのが苦手なのだ」

 「何の下だよ?」

 「坂道の下、木の下、山の下、とにかく下に、下に逃げるのが生き延びるコツだ」

 「逃げるだけで倒せるのか?」

 「どうせジンには逃げて囮になる事しか出来まい。

 倒すのは私に任せておけ。

 ホワイトベアは強靭な筋肉と頑丈な毛皮に守られてはいるが、眉間だけが弱点だ。

 百発百中の弓矢の腕を持っている私にとっては楽勝とは言わないまだも、相性の良いモンスターだ」

 別にイリスは嫌がらせで『ホワイトベアの囮になれ』と言った訳じゃない。

 沢山俺が経験値を得れるモンスターの中で『弱点がハッキリしていて逃げる方法がある』『相性が良くて倒せる可能性が高い』

 俺が短期間のうちに獣人の集落に向かうには、ホワイトベアを倒して経験値を積むしかない。

 「やるしかねえな・・・」

 俺はイヤイヤ覚悟を決めた。


 俺とイリスはホワイトベアの群生地に向かう。

 「ホワイトベア討伐はレベルアップ目的だけではないのだ。

 群生地の向こう側に獣人の集落がある」

 なるほど。

 どうせ群生地を通らないと、獣人の集落に辿り着かない訳か。

 だったら道すがらレベルアップするのが一番手っ取り早い。


 「ここから先はホワイトベアのテリトリーだ」

 街道の側道をしばらく歩いているとイリスが口を開いた。

 この道を人間が通る事はほぼないだろう。

 道は全く整備されていなくて、勾配があり『山道』と言うのが相応しい。

 「ここからは別行動だ」とイリス。

 「別行動?

 俺は何をすれば良い?」

 「囮としてホワイトベアを引き寄せて欲しい。

 そして木の上にいる私の、弓矢の射線にホワイトベアを連れて来い」

 「どうやって!?」

 「それはジンが考えろ。

 どうにかして挑発しろ。

 そうだな、挑発のよくある方法はスキルを使う事だ」

 「スキルか。

 俺、ろくなスキルを持ってないんだよな・・・」

 「あくまでも『よくある方法』だ。

 必ずしもスキルを使わなくても良い。

 何としても、ホワイトベアを私の前に引き付けろ」

 「あぁ、ちくしょう!

 やれば良いんだろうが!

 やってやるよ!」

 「それでこそ私の配偶者だ」

 「うるせー、そんな事思ってないクセに!」


 見つけた。

 ホワイトベアが山道をウロウロしている。

 どうやってこちらに引き付けようか?

 スキルを使うとか言ったっけ?

 ものは試しだ。

 頭の中でアナウンスが聞こえる。

 「スキル『流し目』を使った。

 ホワイトベアはいきり立った!」

 待て待て!

 何でいきり立つんだよ!

 あ、そう言えば、野生動物に視線を送っちゃダメとか言うよね。

 目が合うってのは野生動物にとっては『敵対』を意味するって言うし。

 そんな事言ってる場合じゃない!

 はからずもホワイトベアを怒らせちまった!

 ホワイトベアがこちらに向けて突っ込んで来る。

 イリスの方に引き付けなくちゃ!

 俺がイリスの方にホワイトベアを連れて行こうとすると、木の上からイリスに「何をしているのだ!?逃げないか!」と怒られた。

 何でだよ?

 決死の覚悟で何とか、ホワイトベアをイリスの方を向かせようとしてるのに!

 俺の不満を見透かすように「取り敢えず山道の下の方向に逃げろ!」とイリスが怒鳴る。

 「何でだよ!?」と俺が怒鳴り返す。

 「距離を取らないとジンが殺されるぞ!

 私がホワイトベアを倒してもしょうがないだろうが!

 取り敢えず距離を取れ!

 こちらに連れて来るのはそれからだ!」

 「わかったよ、取り敢えず山下に逃げれば良いんたな?」

 俺が山下に逃げる。

 俺もそこそこ『素早さ』が上がっている。

 俺は木々を縫って山下に逃げる。

 ホワイトベアが俺を追い掛けて、山を下って走って来る・・・と思いきや、ホワイトベアはゴロゴロと転がりながら落ちていく。

 こんなに下りに弱いの!?

 「これだけ距離が取れたら、こちらへ誘導出来るはず!」と木の上からイリスが叫ぶ。

 「作戦を最初から説明しといてくれよ!」

 「戦いの最中に考える習慣を身に付けろ!」

 「習慣が身に付く前に俺が死んだら意味がないだろうが!」

 「死んだらそれまでの男という事だ」

 かなりイリスの教育方針はスパルタらしい。


 転がり落ちていったホワイトベアがフラフラしながら山を登ってくる。

 落ちながら色んなところに身体をぶつけただろうし、グルグル転げ落ちていったから目も回しているんだろう。

 これならイリスの方向にホワイトベアを誘導出来る!

 誘導されて来たホワイトベアの眉間にイリスの放った矢が突き刺さる。

 矢が眉間に刺さったホワイトベアは直立不動になったかと思ったら、時間差でズズーンと土煙を立てて倒れた。


 あたまの中でファンファーレが流れる。

 『レベルが19になった!

 "ちから"が32上がった!

 "みのまもり"が30上がった!

 "すばやさ"が32上がった!

 "まりょく"が31上がった!

 "かしこさ"が3上がった!

 "かっこよさ"が1上がった!

 "HP"が54上がった!

 "MP"が40上がった!

 "スキル"『熱い抱擁』を覚えた!

 "スキル"『卍固め』を覚えた!

 "スキル"『投げキッス』を覚えた!

 "スキル"『裸踊り』を覚えた!

 神聖魔法"ヒーリング"を覚えた!』

 初めて『卍固め』という戦闘で役に立ちそうなスキルが手に入った。

 しかし俺にはホワイトベアに近付いて卍固めを決める勇気はない。

 ・・・つーか、一撃で葬られるだろう。

 そんな事より魔法だよ!

 役に立ちそうな魔法を覚えたんだよ!

 しかし怪我をしないと『ヒーリング』って効果なさそうだな。

 魔法の効果を確かめるためにホワイトベアに軽く攻撃されてみようか?

 ・・・何を考えているんだ!

 ホワイトベアに攻撃されたら身体の半分くらいなくなりそうだ。

 死んだら『ヒーリング』どころじゃないよな?

 蘇生魔法があるか、ないかはわからない。

 でも『ない』と思っていた方が安全だろう。

 あったとしても、使える者を知らなきゃ『ない』のと同じだろう。

 そんな事より今は『ホワイトベア狩り』だ。

 次のホワイトベアを探す。

 群生地なら一匹見つかった側に他のホワイトベアがいる可能性は高いはずだ。

 やはり見込みに間違いはなかった。

 ほどなく二匹目のホワイトベアは見つかった。

 見つかったが二匹目のホワイトベアは自分達より遥か山の上にいる。

 そしてイリスの射線上にはいない。

 いたとしても『上向きに放った矢は狙いも定まらないし、威力も落ちる』との事だ。

 「ジンがホワイトベアを山下(やましも)に誘導してきて」とイリス。

 まぁ予想はしてたけど、やっぱりそうなるよね。

 俺はウンザリしながらホワイトベアに小石を投げつけた。

 当たるとも思ってないし、当たったとしてもダメージが通るとは思っていない。

 しかし小石はホワイトベアの頭に命中してしまったのだ。

 「アンギャアァァァァ」熊の鳴き声というよりは怪獣の鳴き声のような雄叫びが響く。

 まるで『痛てえじゃねーか、コノヤロウ!』と怒っているようだ。

 ホワイトベアが俺を目掛けて山を駆け降りようとして、コケてゴロゴロと落ちて行く。

 落ちて行くホワイトベアはドカドカとピンボールの玉のように沢山の木の幹に激突する。

 そして登って来る時にイリスの射線に入るように誘導しながら逃げる。

 慣れてしまえば単純作業だ。

 よく考えたら、日本でだってイノシンやクマに人間が力で敵う訳がない。

 だから、狩るための罠をはるのだ。

 道具を使うのだ。

 ホワイトベアだって殺すために準備していたら怖れる事はないのだろう。

 しかし気になる事が一つある。

 俺がホワイトベアに小石を投げた時、明らかにダメージが通っていた。

 『痛い』というジェスチャーをホワイトベアはした。

 急所に当たった訳でもない、山下(やましも)から投げた小石がホワイトベアにダメージを与えたのだ。

 もしかして、俺、攻撃力上がってる?

 そういえば最初にホワイトベアから逃げた時は『ゼエゼエ』と息が切れたが今回は息が上がっていない。

 身体能力が上がっている・・・気がそこはかともなくしないでもない。

 自信はない。

 過信は『死』を招きそうだ。


 もはや恒例となった、頭の中のファンファーレだ。

 『レベルが22になった!

 "ちから"が28上がった!

 "みのまもり"が30上がった!

 "すばやさ"が26上がった!

 "まりょく"が25上がった!

 "かしこさ"が1上がった!

 "かっこよさ"はあがらなかった

 "HP"は50上がった!

 "MP"は32上がった!

 "スキル"『猫騙し』を覚えた!

 "スキル"『逆ギレ』を覚えた!

 "スキル"『掌返し』を覚えた!

 "攻撃魔法"『ファイアーボール』を覚えた!』


 スキルを覚えるたびに何か嫌な大人になっていくな。

 普通に『掌返し』なんてスキル、いらねーし。

 「何か魔法を急に覚えるようになったな」と俺。

 木から降りて来て、ホワイトベアの解体をしているイリスが言う。

 「今までは魔力が低すぎて、魔法を覚えるどころではなかったんだろう。

 そこそこレベルアップで魔力が貯まったから魔法を覚えるようになったのではないか?

 ・・・にしても遅すぎる。

 人間は10歳になる頃には冒険者を志していれば五つや六つ、魔法は使えて当たり前だと聞くが」

 「今まで、冒険者を志してなかったんだよ!

 大器晩成型なんだよ!」

 「そう言う事にしておこうか?」

 イリス、何か言いたそうだな。

 言わなくても良い!

 凡人なのは自分で良くわかってるから。


 俺もイリスも予定が順調に進んで気が緩んでいたんだと思う。

 『ホワイトベアの群生地』

 ここで起こる罪悪感の事態を予想しておくべきだった。

 『群生地』つまり『(むれ)』にいるホワイトベアが複数いる可能性を考えておくべきだった。

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