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第4話

一体どこから突っ込んでいいのかわからないくらい突飛な話に、クロエは逆に冷静になっていた。

「……ここが異世界だってこととか、あなたたちが獣人だってことをとりあえず信じるとしても、この国のことを全く知らない私が、次の王様なんてそんな重大なことを決められるわけないでしょ……。」

ため息をつくクロエに、ウォルフが言った。

「だが、お前が選ぶしか無い。それ以外に国民たちを納得させられる決定方法がないからな。」


リンネもうなずいて続けた。

「先代の王の遺言は絶対だしね。それに、クロエを見て僕たちも確信したんだ。この子は間違いなく、伝説の【獣を統べる乙女】だって。」


「そんな、私はたまたまあのネコ……じゃなくてライオンなんだっけ? とにかくあの子を助けただけよ。人違いなんじゃ……。」

クロエの言葉を遮って、今度はラヴィが話し始めた。

「伝説によると、【獣を統べる乙女】は美しく聡明で、全ての獣を癒し、従えることができるとされているんだ。クロエ、思い当たる節があるでしょう?」


……もしかして、私の特異体質のこと……?

確かに、子どもの頃から動物には必ず好かれたし、どんな動物もクロエの命令には従ってくれた……。しかしこの特異体質のせいで、子どもの頃は周囲から気味悪がられ、いじめられたこともあったのだ。

さらに大人になってからもこんなことに巻き込まれるとは……。

本当に自分の特異体質を呪わざるを得ない。


クロエが返事に窮していると、ずっと黙っていたレオンがおもむろに口を開いた。

「やはり俺は反対だ。今この女が自分で言ったように、この国のことを何も知らない者に王を選ばせるなど、無理があるだろう。」

冷たい口調で話すレオンを、クロエは少し驚きながら見つめていた。

さっき2人きりだったときは、もう少し柔らかい雰囲気だったのに……。

でも、レオンは4人の中で唯一、クロエと同じ「クロエが王を選ぶなんて無理」という内容の主張をしてくれているのだから、ありがたいと思わないといけないのかもしれない。

……それでも、「この女」やら「馬の骨」やら好き放題言割れるのは、多少腹がたつけれども……。


レオンが続けて言った。

「ラヴィ、この女を元の世界に帰す方法はないのか? 第一王子であり、グラーディの神官を務めるお前なら、何か知っているだろう。」

ラヴィは少しの間難しい顔をして黙っていたが、一つため息をつくとポツリと言った。

「クロエを元の世界に返す方法はある。」

「そうなの!?」

クロエは前のめりになってラヴィに詰め寄った。

「お願い、その方法を教えて!あなた達の希望に沿えなくて悪いけど、私には仕事だってあるし、早く帰りたいのよ!」

クロエがいなくなって、動物たちの治療は誰がやっているのかが気がかりだった。

ケガをした子がいればちゃんと治療してあげたいし、ケンカの仲裁もクロエがいなければなかなか大変だろう。あのカンガルーたちだって、また暴れているかもしれない。


クロエがあまりに顔を近づけて来るので、ラヴィは少し赤面しながらクロエを制した。

「クロエ、落ち着いて。帰る方法はあるけど、そのためにはやっぱりクロエに王を選んでもらわないといけないんだ。」

「……どういうこと?」

クロエは頭がこんがらがりそうだった。

そんなクロエの様子を見ながら、ラヴィは淡々と説明を続けた。


「自分が異世界に渡ったり、誰かを異世界に送ったりできるのは、王だけなんだ。前王はもういない。そうなると、今後クロエを元の世界へ送ることができるのは、新たに即位する王だけだ。」

ラヴィの言葉を聞いて、クロエは目を輝かせた。

「なら、私が4人のうち誰かを選んでその人が即位したら、元の世界に帰してくれるの? それなら、もうこの場ですぐ選んじゃうけど!?」

この際、第一王子で、かつ一番頼りがいのありそうなラヴィに決めてしまえば良いだろう。無責任な気もするが、しかし他に選び方を思いつかないのだから仕方がない。


「それは無理だな。」

ウォルフが口を挟んだ。

「さっきも言ったが、次代の王が決まらないことで、武闘派の種族のいくつかがきな臭い動きをし始めている。実際に国王軍との間で小競り合いが起きているところもあるようだしな。そいつらに対して、正当な王が即位し、国王軍が盤石であることをアピールするには、王の側に王妃として【獣を統べる乙女】がいる必要がある。」


クロエは落胆して、がっくりと肩を落とした。

「なによそれ……。じゃあいつまで付き合えばいいわけ?王様を選んで結婚して、さらにその武闘派の種族とやらがみんな大人しくなるまで?」


ラヴィが真剣な眼差しで答えた。

「まあ、そうだね……。それに、今この場で第一印象だけで選ぶのではなく、ちゃんとクロエが愛せる相手を選んでもらわないといけない。伝説では、「乙女が心を捧げた者が、正当な王として国をかつてない繁栄に導く」とされているんだ。クロエの心からの愛がなければ、「乙女が選んだ正当な王」とは認められないだろうね。」


……ただ選ぶだけでもハードルが高いのに、相手を愛していなければ、選んだと認められないだなんて……。クロエには到底できないように思える。


「クロエ、大変だとは思うけど、僕たちのことをちゃんと知って、その上でただひとりを選んで欲しい。その上で、結婚してしばらく経ってもクロエがどうしても元の世界に帰りたいと思うなら、帰れるように最善を尽くすと約束するよ。」


それは一体いつになるんだろう。

年単位で時間がかかる気がする。


さらにラヴィが続けた。

「それと、次代の王は、先代の王が亡くなってから100日以内に即位することになっている。だからクロエには、100日以内に王を、つまり結婚相手を選んで欲しいんだ。」

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