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第3話

目が覚めると、クロエはまた見たことのない場所にいた。


身体を起こして見回すと、クロエが寝ていたのは、自宅のベッドの3倍はありそうな大きさの、天蓋付きの豪華なベッドだった。




「……ここはどこなの?」

クロエがポツリと呟くと、部屋の片隅の椅子から、誰かが慌てた様子で立ち上がり、走り寄ってきた。

「クロエ!目が覚めたのか!」

えーと、この金髪にネコ耳のイケメンは誰だっけ?

見覚えがあるような気がするけど……。

「クロエ! 俺だ、レオンだ! ……わかるか?」

レオンはまたしてもクロエの顔にグッと顔を近付けて見つめてくる。

「ああ、あの神殿みたいな場所で会った人ですよね? ……あの、ここはどこですか?」

クロエの反応に、レオンはなぜか明らかに落胆した様子だった。

「俺を覚えていないのか……。」

「いえ、だから教会で会ったレオンさんですよね? ここはどこなんですか?」


改めて周りを見回すと、部屋の中はベッドの豪華さにも負けない煌びやかさだった。

クロエがひとり暮らしをしているワンルームマンションの倍はありそうな広さで、

ベッドの他には、どっしりとしたソファと細かい彫刻を施したテーブルが置かれていた。

部屋の奥側は一面大きなガラス窓になっていて、太陽の日差しが部屋の中を明るく照らし出している。

「なんていうか……中世ヨーロッパのお城みたいな部屋ね。」


クロエが呟いたと同時に、部屋のドアがバタンと開いて、茶髪の少年が入ってきた。

「レオン、そろそろ付き添い交代してよ〜! 僕もクロエの顔見たい……って、クロエ!目が覚めたの!?」

入ってきたのは、確かリンネと名乗っていた少年だ。

ニコニコしていて、レオンよりは話しやすそうな気がした。

「あの、ここはどこですか?」

レオンに聞いても答えが返ってきそうにないので、クロエはリンネに聞いてみることにした。

「ここは王都のグラーディ城、つまりこの国の王宮だよ〜! この部屋はクロエにこれから住んでもらうお部屋で、家具とかも色々増やしていくつもりなんだけど、足りない物があったら何でも言ってね!」


今度はあっさり答えが返ってきたが、色々ととんでもない情報が含まれていた気がする。

グラーディ城ということは、やはりここはお城なのだ。

それにしても、住んでもらうとは?

いつ私がここに住むことに決まったんだっけ?

またしても混乱し始めたクロエに、リンネは続けて言った。

「クロエが目覚めたんなら、みんなに報告しないと! クロエ、ちょっと待っててね!」

リンネはそう言うと、パタパタと走って部屋を出て行ってしまった。


*****


「クロエが目覚めたので、改めてみんなに集まってもらったわけだけど……。」

クロエが目覚めてから十数分後、リンネがラヴィとウォルフを連れて戻ってきた。

クロエがやや落ち着いた様子なのを確認して、ラヴィは教会での話の続きを始めた。

「クロエはあの時混乱していたし、それに説明も足りていなかったと思うから、改めて説明するね。」


相変わらず穏やかな調子で、ラヴィが話し始めた。

基本的にこの4人をまとめているのはラヴィのようで、自然に司会として話を進めている。

少し落ち着いたことで、クロエは自分の格好を気にする余裕が出てきた。

寝巻き姿で見ず知らずのイケメン4人に囲まれているというのは、かなり恥ずかしい気がする。

しかし、自分の身になにか異常なことが起こっているのはわかるものの、圧倒的に情報が不足しているので、クロエはとりあえず身なりのことは置いておいて、黙って話を聞くことにした。


「ここは獣人の国グラーディ。獣人っていうのは、僕たちみたいに半分獣の人間のことで、この国の人々はみんな、犬とか猫とか猿とか、色々な種族の獣人なんだよ。」

ラヴィはよどみなく話を続けた。

「この国の王は、ずっとライオン族が務めてきた。およそ1000年前にグラーディを建国した初代の王と王妃の間に生まれたのがライオン族で、その直系の子孫が代々王として国を治めてきたんだ。先代の王も、もちろんライオン族だったんだけど、ここでちょっと困ったことが起きてしまった。」


ラヴィはここからおよそ20分にわたって話を続けた。

そのほとんどがクロエにとってはとても信じ難いものだったが、まとめるとこういうことらしい。

建国1000年の節目を迎える獣人の国グラーディには、様々な種族の獣人が住んでいるが、王は代々ライオン族が務めてきた。

グラーディでは、例えばイヌ族の男とネコ族の女というように、別の種族同士が結婚して子供を作ると、ほとんどの場合父親と同じ種族の子が生まれる。

ライオン族は特殊で、男しか生まれない種族のため、王となった者は代々他の種族の女性を妃として迎え入れていたが、生まれる子供は必ず王と同じライオン族の王子だった。


しかし先代の王の時、なぜかこの法則が覆される出来事が起きた。

先代の王には4人の妃がいて、それぞれに息子が生まれたが、なんと4人の王子全員がライオン族ではなかったのだ。

グラーディの歴史上初めての事態に直面し、次代の王を決めかねているうちに、先代の王は病にかかり、床に伏すことが多くなった。


こうなると、次代の王を巡る争いが起き始める。

4人の王子が属する種族である、ウサギ族、オオカミ族、ヒョウ族、クマ族は、なんとか自分たちの種族の王子を次代の王にしたいと、あらゆる場面で反目し合い始めた。

さらに、1000年続いたライオン族による統治が揺らいだことで、以前から王家に敵対的な態度をとっていたキツネ族や、圧倒的に数の多いネズミ族などが、各地で謀反のような動きを見せ始めた。


先代の王はこの状況を打開しようと、「私が異世界に渡り、伝説の【獣を統べる乙女】を探し出す。次代の王は、その乙女が選んだ者とする。」と言い残し、残りの力を振り絞って、単身異世界に渡っていった。

王が異世界に渡ってから数週間後、王の代わりに現れたのがクロエだった。

……ということらしい。


「……ということで、クロエには【獣を統べる乙女】として、僕たちの中から1人を選んで結婚して欲しいんだ。そしてその選ばれた者が、次の王になる。」



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