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第18話

正午近くになって、国王軍はキツネ族の村への視察に出発した。


今回の視察には、レオンが率いる国王東軍から、精鋭の100名が選抜されている。

100名は各20人ずつの小隊5つに分かれ、レオンのいる小隊が真ん中に、その他の4つの小隊がその前後左右を守るように配置され、キツネ族の村への道を進んでいった。


クロエは、こっそりと後方の小隊に紛れ込んでいたのだった。


*****


レオンににべもなく同行を断られて途方に暮れていた時、クロエはふと、先ほどパン老師からもらった袋に、ネコ耳や尻尾のようなものが入っていたのを思い出した。

改めてパン老師からもらった布袋の中を確認すると、国王軍の軍服と靴、それからフワフワのネコ耳の付いたカチューシャと、これまたフワフワの尻尾が入っていたのだ。


「パン老師は、さっき廊下であった時点で、私が視察に同行したいと言ってレオンに断られることも、兵士に紛れ込んででも着いて行こうと考えることも、お見通しだったってことなの……?」

幾ら何でも先を読めすぎではないだろうか。

パン老師の尋常ではない先見の明に、クロエは少しぞっとした。

「でも、まさに今私が求めていた物がここにあるんだから、ありがたく思わないとね……。とにかく一度着替えてみよう!」


クロエは近くにあった物置部屋に忍び込み、早速着替えを始めた。

カチューシャは、しっかりかぶれば根元の部分は髪の中に隠れてしまうし、尻尾はベルトが付いており、腰にベルトを巻くとちょうどお尻の上に尻尾が来るようになっていた。

この二つを身につけた上で国王軍の軍服を着ると、ぱっと見は国王軍の兵士に見えなくもない気がした。


「うーん、これで騙せるかしら……?髪はしっかり結んでおけば問題ないとして、男に見えるかどうか、いまいち自分ではわからないけど……。」


グラーディでは髪の長い男性は珍しくないが、軍では、邪魔にならないよう後ろでしっかり縛っている者が多かった。

クロエもそれにならって髪をきつく縛ると、先ほどより若干男性っぽく見える気がする。

「とりあえず、これで行くしかないわね……。ま、ばれたらばれたで、その時考えよう!」


そうして、クロエはそっと物置部屋を出て、必死に何気ない風を装いながら、東宮の馬房で出発の準備をしている兵士達に近づいて行ったのだった。


馬房では、視察隊が使う馬が引き出され、鞍をつけられたり、荷車に繋がれたりしているところだった。クロエがさりげなく荷車に近づき、荷物を積み込む作業に参加すると、横で作業している兵士に話しかけられた。


「お前、見ない顔だな。名前は? どこの隊の所属だ?」

う、まずい。何も考えていなかった……。

クロエが内心ものすごく慌て、返事に窮していると、上官らしいネコ族の兵士がこちらを振り向き、話しかけてきた。


「ああ、今日からうちの隊に配属になった、ネコ族のニーアンだな? 俺が隊長のミャオスだ。遅かったな、迷ってたのか?」

やった! なんてラッキーなんだろう!

クロエは心の中でガッツポーズをしながら、ここぞとばかりにその話に乗ることにした。

「はい! ニーアンです!よろしくお願いします!」

より兵士らしく見せようと、見よう見まねの敬礼までして見せたが、兵士達は荷物の積み込みに忙しく、クロエがそれ以上注目されることはなかった。


「信じられないくらいラッキーだわ。……これで本物のニーアンが現れなければ、誰にも疑われずに視察についていけるはず……!」

結局、出発までに本物のニーアンが現れることはなく、クロエはなんとか視察隊に潜り込めたのだった。


*****


キツネ族の村は、王都から馬で12時間程の距離にあるそうだ。

視察隊は、初日に道のりの半分を走ってから野営し、翌日は早朝に出発して、昼ごろまでにはキツネ族の村に到着する予定らしい。

つまり、2日間でかなりの距離を馬に乗って走らなければならないのだ。


クロエは花嫁修行の一環として乗馬を習ってはいたが、王宮の馬場で短時間乗った経験しかなく、外を、しかも何時間も通して走ったことは一度もなかった。


「自信はないけど、頑張るしかない! 馬も動物なんだから、私が頼めば優しく乗せて走ってくれるかもしれないし……!」

覚悟を決めていたクロエだったが、出発直前にミャオス隊長に呼ばれ、こう言われた。

「馬が足りないから、悪いがニーアンは荷車に乗ってくれ。」

そんなわけで、クロエは馬がひく荷車の上でゆったりと過ごすことができたのだった。

「本当に、信じられないくらいラッキーだわ。なんとかこのままバレずに視察を終えられるといいんだけど……。」


王宮では、そろそろクロエがいないことがバレて、騒ぎになっているかもしれない。

一応、視察隊について行くことと、無茶はしないので心配せずに待っていてほしいことを書いた手紙を自室に置いてきたものの、帰ったらきっとラヴィたちから相当怒られるだろう。


「まあ、今心配しても仕方がないわ。とりあえず今は、誰にもバレずにこの視察を乗り切ることに集中しないと……!」

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