――笠地蔵六140字小説(四月三日~四月九日)「少年と彼女(仮題)」8
笠地蔵六 @kasajizorock
「開けて出てこないとブチ破るぞ!」
義父だった男の怒鳴る声が聞こえた。囃し立てる声も重なる。
あんな男にでも付いてきてくれる仲間はいたんだ。妙に頭の冷えたサトルは場違いなことを考えていた。そして、この強襲があの男の単なる思いつきでないことも。
この時間、ちさとは家を空けていたのだ。
―――――午前0:39 · 2023年4月3日
ちさとさん……。
休眠状態のちさとの意識はサトルの声で覚醒した。
データ転送12%、充電残量8%、安定稼働可能時間二時間。整備未然も挙動は安定。
瞬時に状況確認を終えたちさとは、最優先事項の発動とメンテナンス緊急解除通知をサーバに送った。
診察着のちさとは無人の管理車両を飛び出した。
―――――午前9:16 · 2023年4月4日
蹴破られたドアの向こうに黒尽くめの男が三人。後ろのふたりは顔を覆う目出しマスク、真ん中には元義父。土足のまま上がり込んできた元義父は、蹲る母親には目もくれずサトルに近づいてきた。
立ちすくむサトルの首を押さえて、元義父が言った。
「こっち来い。目の前であの木を切り倒して焼いてやる」
―――――午後1:41 · 2023年4月5日
「お前は外を見張ってろ。女が来たら即殴り倒せ。美人だからって手ぇ抜くな。いろいろやりたきゃぶっ倒した後好きにしろ。手加減してるとマジやられるぞ」
片方にそう命じた元義父は、玄関口から庭の沈丁花までサトルを引きずりながら怒鳴った。
「貴様がいなけりゃ、あの娘は今も俺の玩具だったんだ」
―――――午前10:26 · 2023年4月8日
「どうしてあいつが死んだか知ってるか?」
元義父の言葉にサトルが反応した。サトルが知ってるのは二日後に封書で届いた「ごめんね」だけ。
「お前、俺たちがホテルに入るとこ見たことあるだろ」
冬休み明けすぐの午後、社会科見学で街に出た。あのとき見たアベックは、やはりこいつと姉だったのか。
―――――午前10:26 · 2023年4月8日




