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ボクの名は  作者: 深海くじら
卯月

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――月波140字小説(四月三日~四月九日)「エミールの旅」8

月波 @tsukiandnami


ボクら三人が物陰に隠れて見張っていると、天秤印の店から三人の男が出てきた。振り向くリヒラにヤナハが頷く。

しばらく行った広場で、先頭の男が他の二人に何か渡した。彼らはぺこぺことお辞儀しながらそれを受け取ると、上機嫌で夕暮れの街に戻っていった。武装した男は、見送りもせず歩を進めた。

―――――午前0:49 · 2023年4月3日



賊の隠れ家は昨日リヒラがつきとめているから、先回りは容易かった。人通りの無い街外れの角で、ボクは男が曲がって来るのを待ち構える。

大丈夫。さっきおばさんたちに教わった通りにやればいい。向かいの陰にはリヒラもヤナハも待機してる。

ボクは着慣れない衣装で強調された胸で、深く息を吸った。

―――――午前9:45 · 2023年4月4日



喋らなくていい。リヒラはそう言っていた。ボクは半身に立って、教えられたばかりの視線を男に向ける。きっちり三秒。重心は後ろの左脚。腰を先に、右脚を流すように回し足を踏み出す。

男の目の前を横断。顔は前を、視線は残したまま。ゆっくりと大股で。

そのまま脇道に入った。ついて来るだろうか?

―――――午後1:26 · 2023年4月5日



大人ひとりがやっとの狭い暗がりを進む。ひらひらした裾とかかとの高い靴で、足下が覚束ない。

「追いかけっこかい?」

背後からの声に振り向くと、逆光の顔ににやついた笑顔が貼り付いている。口の端で笑え。リヒラの言葉を思い出して、ひきつった笑いを浮かべるボク。歩幅が大きくて追いつかれそう。

―――――午前10:22 · 2023年4月8日



男が伸ばしてきた手をすんでのところですり抜けたボクは、そのままの勢いで建物の隙間から外の道に出た。間を置かずに道に躍り出た男は、ボクを視線で捉える。が、その先には一歩も進めず、体をくの字に曲げた。二発、三発。リヒラのフックが男のみぞおちに入る。その度に跳ね上がる男の曲がった背中。

―――――午前10:23 · 2023年4月8日



あばら家の中で男を柱に縛り付けた。後ろ手を縛るリヒラ。抱きついて足を固めるヤナハ。荒縄をぐるぐる巻くのはボクの仕事。

「女、貴様もグルか!」

喚く男にリヒラが言った。

「さっきの店で売った金を残らず出してもらおうか」

「お前ら、なにもんだ?」

「俺たちゃただの盗人さ」

リヒラが笑った。

―――――午前10:23 · 2023年4月8日

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