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ボクの名は  作者: 深海くじら
弥生

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――月波140字小説(三月二十七日~四月二日)「エミールの旅」7

月波 @tsukiandnami


心細げな面持ちのヤハナの髪を撫でて元気づけてやる。旅についてならボクの方が経験が深いから、独りの夜の不安さだって知っている。それになによりも、ボクの方がお姉さんなんだから。

「大丈夫だよヤハナ。リヒラなら心配はいらない。彼は約束通り、きみを叔父さんのところまで連れてってくれるよ」

―――――午後5:00 · 2023年3月27日



明け方に入口の開く気配で目が覚めた。横のヤハナは安らかな寝息を立てている。鼻の頭まで涙の筋が残っていた。隣りのベッドに腰掛けてブーツを脱ぐ背中に声を掛けた。

「リヒラ、何を探してたの?」

振り向いたリヒラが小声で答えてくれた。

「馴染みの故買屋に、少年の家の紋章をあたって貰ってた」

―――――午後5:11 · 2023年3月27日



「昨日の昼にそれらしい奴が売りに来たんだと。置いていった見本も見せてもらったが、紋章は同じ。おまけに木箱にはまだ新しい焼け焦げの跡もついていた。間違いなく先日の賊の一味だ」

ボクは胸がどきどきしてきた。

「どうするの?」

リヒラはにやりと笑う。

「エミール。お前にも手伝ってもらう」

―――――午後5:29 · 2023年3月27日



「明日は夜まで忙しくなるから、今夜はもう少し寝ておけ」

そう言ってボクをベッドに押しやるリヒラからは果物のような香りがした。

翌朝遅くに起きたボクたちは、リヒラが持ってきた堅いパンを齧りながら計画を練った。もちろん基本はリヒラが立てたけど、細かい部分ではボクらの意見も聞いてくれた。

―――――午後7:10 · 2023年3月29日



「俺たちは隊商じゃない。大人ひとりに子どもふたり、それにヤクーが一頭と橇一台。自分たちの荷物で手一杯だから、とてもよその商品を積める余裕なんてない。そこで、だ」

これから悪いことをやるぞ、という笑い顔のリヒラはボクとヤハナの頭を左右から大きな手で引き寄せると、声を落として囁いた。

―――――午後11:24 · 2023年3月29日



昼食の後、ボクらはリヒラの先導で町に出た。途中ヤナハは、天秤が看板の店の前でたむろしてるお籠りさんに仲間入り。一方ボクはといえば、裏通りの入口が立派な店に連れていかれた。年老いた婆様と中年の女性何人かが、リヒラの来店を待っていた。

「その子ね」

婆様は私を測るように見てそう言った。

―――――午後0:03 · 2023年3月31日



「インゲ、風呂が残ってるから入れてやって。サリ、衣装を二つ三つ見繕いな。化粧はあたしがやる」

婆様の指示で忙しく動き出した女たちを見ながらリヒラがごちた。

「あいつら、夜とはぜんぜん別人だな」

わけもわからず見上げるボクに、リヒラはこう言った。

「今夜の仕掛けはお前が肝だからな」

―――――午後6:02 · 2023年3月31日



ボクの準備が整ったのを見計ったようにリヒラが入ってきた。

「いくぞエミール、本番だ」

外に出ると、汚い格好をしたヤナハが待っていた。

「奴らだ。お父さんたちの荷物を引き車に載せて店に入っていった。早く行かないと!」

焦るヤナハをリヒラがおさめる。

「安心しろ。時を稼ぐよう頼んである」

―――――午前1:20 · 2023年4月2日

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