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ボクの名は  作者: 深海くじら
弥生

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五十五話 瑞稀、春分(四)

 土曜日の夜に父と母から元気をもらった私はお昼もイオンモールのピエトロでご馳走になり、すっかり満腹にされて帰路につきました。


 天拝山(てんぱいざん)から小倉行の鹿児島本線に乗って博多まで。って普通にまっすぐ帰るつもりだったんですが、車窓の空があまりにも蒼くて。

 ちょっと散歩でもしちゃおうかな。昨日も今日も食べすぎたからカロリーの消化は必要だし。ちょっとひと駅手前で降りて、那珂川沿いを歩けば気持ちいいよね。きっと桜もいっぱい咲いてる。



「開花宣言、昨日出たんだって」


 誰かに向かってかけられた男の人の台詞が、私の横をすり抜けます。前を歩く女性の肩のエコバックが揺れ、歩調を緩めた男の人が横に滑り込む。さっきも聞いた、の冷めた返事とは真逆に握り合う左手と右手。いいなあ。

 竹下駅南口を降りて正面の那珂川を渡る遊歩道を、人の流れに乗って歩く私。前を行くカップルのエコバッグから覗く赤い保冷ボトルをマーカーに、私も向こう岸を左に折れます。きっとお薦めのお花見ポイントがあるのでしょう。


 川堤の遊歩道を抜けて車道を一本渡るとすぐ、折り重なるように並ぶ桜の木が見えてきました。(いびつ)な形の小さな公園に三本並んで立つ薄ピンクの大きな花束の下にカップルがシートを広げているので、私も少し離れたベンチに腰を下ろしました。

 私たちの他には小さい子連れ二家族のグループと年配のご夫婦、元気な柴、落ち着いたハスキーのわんちゃんふたりとそれぞれの飼い主さんたちだけ。なるほど、これは穴場ですね。


 背中の方から子どもたちの甲高い、でも本気の声が聞こえてきます。振り返ってみると、隣の敷地はグラウンドでした。丸い時計付きの白っぽい建物が奥に見えるから、そこは学校なのでしょう。

 声の主たちはサッカー少年。二種類のユニフォームに分かれてボールを奪い合っています。小学生の低学年でしょうか。砂埃上げながらわちゃわちゃと走り回る姿がなんか可愛い。

 フィールドの外側には半袖と長袖が入り混じるお母さんたち。名前を叫びながら子どもたちを応援してる。穏やかな春の風景。私もいつか、あそこに仲間入りしたりするのかな。今はまだ想像もできないけれど。

 身体を戻して桜に向き直ったら、視線の先にはすっかりくつろいでるカップルさん。お弁当を広げて仲良く七分咲きを見上げてる。

 そうです。私の場合、まずそこから、なのです。

 うん。四月からは心機一転、頑張るぞ。


          *


 夜十二時にあと少し、私はスマホを武器に物語と格闘しています。


 野盗の襲撃に時間差で遭遇してしまったエミールとリヒラ。助太刀に向かったリヒラが唯一の生存者を連れて戻ってきたシーンなんだけど、新キャラの人物設定が決まりません。どんなのが一番使い勝手いいんだろう? エミールが女の子だから、やっぱり男の子がいいのかな。同年輩くらいなのはいいとして、年上? 年下? 同い年? 年下なら十二歳以下ってことになりますよね。もしかして、ショタ狙い?!


 決められない大事なことは、先延ばしするに限ります。

 このところはやたら仕事の密度が増したので、更新もついつい遅くなりがち。多少なりとも書き溜めしてたストックも数日前に尽きて、もう自転車操業もいいところ。こんなんで私、創作なんか続けられるんでしょうか?

 そして更には、まだ見ぬミッシングピース探しなんて大それたミッションにまで、本当に手が回せたりするのでしょうか?!

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