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ボクの名は  作者: 深海くじら
弥生

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――月波140字小説(三月六日~三月十二日)「エミールの旅」4

月波 @tsukiandnami


天幕を張った村長の家でボクらは歓待された。広いひと間の端に犬が何頭もいて、カリもそこに寄せてもらったから寒くない。水と干し草を食べさせるとカリはじきに眠ってしまった。食事の後も大人たちは丸くなって話をしていたが、ボクはカリの隣りで丸くなってすぐに眠ってしまった。母さんの夢を見た。

―――――午後6:30 · 2023年3月6日



二日間吹雪いた雪も収まった青天の早朝、ボクらは老人たちに見送られ、天幕の村をあとにした。五日ほどの滞在中に彼らの漁の手伝いをして、その礼にと持たされた干物の魚を荷物に加えて。ほどなくボクらは、遥か先まで真っ平らな場所に出た。湖、と教えられた。橇で渡れるこの時期を待っていたらしい。

―――――午後6:16 · 2023年3月7日



凍った湖を渡るのは快適だけど景色が全然変わらないので、さすがに三日目には飽きてきた。夜明けとともに出発し、魚の干物を齧りながら進み続け、夕刻前に天幕を張って粥をつくり、夜は三人固まって眠りに落ちる。ずっとその繰り返し。ボクを飽きさせないように、道中リヒラはいろんな話をしてくれる。

―――――午後8:21 · 2023年3月9日



五日かけて湖を渡り終えたボクらは、沿岸に築かれた白い集落に身を寄せた。リヒラは何度も訪れているらしく、宴席でも村長の隣りで酒を交わしていた。小さなイグルーを貸して貰えたボクらは、その村でひと冬過ごした。イグルーは切り出した湖の氷を積み上げてつくった家で、氷なのに中はとても暖かい。

―――――午前7:30 · 2023年3月10日



冬の間、ボクは村の女の人たちと一緒に服を仕立てた。なめした毛皮でつくる外套やズボンは見よう見真似で手伝い、編み上げた毛糸でのチョッキやセーターでは母さんに教わった柄を取り込んでお手本にされたり。独特の匂いのキャビックは苦手だったけど、楽しく過ごした。時折は母さんを思い出しながら。

―――――午後6:10 · 2023年3月10日



ここにはボクと同年輩はいないけれど、小さい子たちはたくさんいる。縫物や料理の仕事をしてるボクの隙を見つけて、何人かの子どもたちがまとわりついてくる。初めは慣れなかったけど、ひと月も経てば仲良くなって一緒に遊ぶようにもなった。他にはお腹の大きな女の人もいる。賑やかな暮らしは楽しい。

―――――午後8:46 · 2023年3月11日



白い集落に投宿して三か月、ボクは少し焦ってきた。外が寒く厳しいのは閉口するけど、ここでの暮らしは不安が少ない。リヒラは週に二日はアザラシ狩り、他の四日はその解体と保存品作りを繰り返していて、まるで前からの此処の人みたい。憶えてるのかな?いつになったら母さんの薬のある街に向かうの?

―――――午後6:00 · 2023年3月12日

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