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ボクの名は  作者: 深海くじら
如月

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――笠地蔵六140字小説(二月二十日~二月二十六日)「少年と彼女(仮題)」2

笠地蔵六 @kasajizorock


「どういうこと?」

問いかける少年に女は答える。

「この世の、私たちの(ことわり)として知性のカテゴリー、ILvが定められています。再生可能性を加味した希少さの基準。その上で、一般化されているその物差にジョーカーを加えるのが90sです。何をも優先し、犠牲にしてでも守るべきもの、それが90s」

―――――午後8:58 · 2023年2月20日



「何かを指定するか否かは自由です。でも私は、90sのどこかにサトルさんご自身の登録をお奨めします。サトルさんであれば方法は簡単です。すでに個体情報は登録済ですから、あとは90から99のお好きな順位にあなた自身を紐づけるよう私に命じるだけ。ちなみに数が大きい程優先度は高くなります」

―――――午後6:35 · 2023年2月21日



「90sってモノでもいいの?」

少年は女を仰ぎ見た。

「モノでもデータでも特定の主義でも、ユニークな定義が可能なものであればほぼ全て」

「じゃあお願い。姉さんの木を99にして。僕は、90でいいから」

頷いた女は小雨の虚空を見上げた。

「サトルさんの90を認証確認。木を特定しましょう」

―――――午後7:35 · 2023年2月22日



小糠雨の中、ふたりは少年の家に向かった。道中、女は少年に尋ねる。

「私はサトルさんのお宅に一緒に住むことはできますか?」

かぶりを振る少年。

「無理。そんなことしたら僕もだけど、ちさとさんも義父さんに非道いめにあわされる」

「私はいいとして、サトルさんが迫害されるのは避けたいですね」

―――――午後7:16 · 2023年2月23日



立ち止まった女はポケットから何か出した。

「携帯端末にこれを登録してもいいですか」

少年が差し出したスマホに手にしたシールのシートをあてて、サインアップを促した。

「これを一枚、首に張り付けてください。サトルさんの声帯が呼ぶ声は携帯端末のネット経由で私に伝わり、最速で駆けつけます」

―――――午後7:42 · 2023年2月24日



家の前で、女は少年の首の襟足に隠れるあたりに「犬笛」と呼んだシールを貼った。一階も二階も雨戸の閉まった昭和の日本家屋。屋根付きガレージには雨粒を纏った車が停まり、雨戸の隙間から光が漏れている。緊張した面持ちの少年が、荒れた庭の外れに女を案内した。

「これが姉さんの木」

一本の沈丁花。

―――――午後6:00 · 2023年2月25日



少年が家の中に消えたあとも、女は庭木の状態を詳細にスキャンしていた。ILvの最高レベルに指定されたものを損なわれるワケにはいかない。差分を確認できるようにするため、現状を可能な限りモニターする必要があるのだ。

作業をしながらも、女はクラウドと繋いで少年の姉の情報を収集し分析した。

―――――午前2:13 · 2023年2月27日

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