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ボクの名は  作者: 深海くじら
如月

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――月波140字小説(二月十三日~二月十九日)「エミールの旅」1

月波 @tsukiandnami


ボクが十三歳になった翌朝、母さんが病気になった。

初めは身体がだるいと訴えるだけだったのが、次第に寝込む時間が増えて、季節が冬に変わる頃にはほとんどの時間を寝床で過ごすようになっていた。

村のお医者さんが診ても原因は不明。発熱とかではないけれど、とにかく身体動かすのがキツイらしい。


午後7:46 · 2023年2月13日

月波 @tsukiandnami


だからボクは母さんの代わりに家のことをたくさんやった。お料理もお洗濯もお掃除も。裏庭の畑仕事だって、ボクがやるようになった。具合がいいときの母さんは、椅子に座ってボクのすることを見ながらいろいろと教えてくれる。雪が積もって畑仕事ができなくなってきたら、お裁縫も教わるようになった。


午後7:30 · 2023年2月14日

月波 @tsukiandnami


我が家の家業は村の雑貨屋。鍋、鎌から作業着や旅装束、簡単な武具なども扱ってる。父さんは鍛冶職人で母さんは仕立て職人。今はもういないけど、爺ちゃんは立派な武器職人だったらしい。

ボク以外みんな大人のこの村はほんの十五家族の集落だから、うちのつくるものだけで村全体の雑貨はまかなえる。


午後11:15 · 2023年2月15日

月波 @tsukiandnami


母さんが寝込むようになって半年の春、村にひとりの旅人が来た。月に一度の郵便配達以外でお客さんが訪れるのは、ボクの知る限りはじめて。当然、ボクも興味津々。旅人は村にしばらく住むというので、冬の間に召されたホグ爺さんの空き家に泊ることになった。暇な時間ができる度、ボクはそこに通った。


午後7:34 · 2023年2月16日

月波 @tsukiandnami


「旅に出たのは十五の春だ」

たまたま暇だったのか、旅人はボクを相手に昔語りを始めた。

「以来、世界中あちこちを旅して廻って、この春で二十五年めになる」

この村は十三年半ぶり、と旅人は言った。そう、彼の名前はリヒラ。今は無い旧い言葉で旅という意味らしい。

「初めから決められてたんだな」


午後7:04 · 2023年2月17日

月波 @tsukiandnami


リヒラはボクに文字と計算を教えてくれた。毎日決まった時間にリヒラの小屋に行って授業を受け、最後に自習課題を与えられる。自習は毎回一時間。その間リヒラはボクの家に行き、母さんの病気の診察をしていた。父さんの話によると、母さんは毎回、体に直接薬を入れる注射というものを打たれるそうだ。


午後8:04 · 2023年2月18日

月波 @tsukiandnami


ボクが訪ねるとリヒラは最初にチコを一粒取り出して飲み込めと言う。チコはなんだか鉄っぽい味のする実で正直好きじゃないけれど、リヒラは飲まないと勉強を教えてくれない。新しいことを教えてほしいから我慢して飲み込む。

父さんも母さんも村の人たちでさえも、リヒラがする事を止めたりはしない。


午後8:53 · 2023年2月19日

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