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ボクの名は  作者: 深海くじら
長月

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259/305

――笠地蔵六140字小説(九月二十五日~十月一日)「三十日間のペアリング」19

笠地蔵六 @kasajizorock


「△〇学園小学部の指導員助手をしております△〇ちさとと申します。拾得されたカードボックスは私どもの生徒のモノと酷似しております。私どもは低学年遠足でこの先の植物園を見学した後、二時間十八分前にこの場所でバスに乗り次の目的地に向かいました。状況的にも合致の可能性が高いと思われます」

―――――午後6:29 · 2023年9月25日



ちさとは自分のスマホを取り出し、ビデオ通話を始めた。電話の相手は持ち主らしい男の子。カードボックスの中身は彼の言うとおりのものだった。

お礼をしたいと繰返す彼にサトルはこう返した。

「きみがもう少し大きくなったときに誰か困ってる人を助けてあげてくれればいい。僕も昔、助けられたから」

―――――午後6:53 · 2023年9月26日



「よかった。早くに見つかって。もう大騒ぎだったんです。一人で戻って探すって」

「よほど大事なものだったみたいですね」

仲の良かった従兄の形見が入ってたそうで、とちさとは答え、安堵の表情を浮かべた。サトルも頷く。

「それにしても凄いですね。世界中のネットをクロールでもしたんですか?」

―――――午後8:56 · 2023年9月27日



「世界中ではありません。このエリアを中心に半径二十キロにある監視カメラと公開SNSのうち県内中継基地で受発信された画像およびテキスト情報、警察無線等をリアルタイムで」

サトルは舌を巻いた。

「でも今回のは監視カメラの無い場所でしたから、サトルさんが拾って発信してくれなかったら……」

―――――午後6:19 · 2023年9月28日



「え? 僕、自己紹介したっけ?」

さっきまでの毅然とした物腰が急に和らいだちさとにサトルは戸惑った。事務的とはほど遠い優しい笑顔のちさと。

「目を見ればわかります。お久しぶりです。随分と立派になられて」

そう言って、ちさとは路端の樹木を見やった。

「沈丁花。お姉さんの木と同じ種ですね」

―――――午後6:00 - 2023年9月29日



「私たちも気になるからときどきは見てるんです。流石に勝手にお庭に入っては不法侵入になってしまいますので、上の方から」

胸の前に上げた人差し指で空を差したちさとは、悪戯っ子のように笑った。

「素体28の遺志は、いま世界に散らばっている五万体を超えるちさと全員に受け継がれてるんですよ」

―――――午後6:08 - 2023年9月30日



「ちさとはサトルさんを応援しています。そしていつの日かまた、私を(かたわら)に置いてください。今度は三十日なんかじゃなく」


来たときと同様に、ちさとは颯爽と走り去った。高校生のサトルはそれをただ見送る。さっきまでと変わったのは未来への新たな目標を手にしたこと。

顔を上げ、ペダルを踏み込む。

―――――午前10:27 - 2023年10月1日


(了)

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